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株価バブルの真実?!

波乱の日経平均は 「実体からかけ離れたバブル」なのか?
 最近、日銀のETF購入の方針が変わったことで日経平均は少し波乱含みの展開となっている。何しろ昨年のコロナ禍による価格の下落から見ると日米共にこの1年で安値から倍ぐらいになっているわけだから、「米国債の金利上昇」や今回の日銀の政策のちょっとした変化などへ敏感に反応してもおかしくはない。

 一方で、今の株価を「実体からかけ離れたバブルだ」という人も多い。評論家やマーケットエコノミストはある意味、相場の予測をするのが商売だから、色んな意見があるのは当然だ。しかし、そういう商売ではない一般の個人投資家でも「株価はバブルだ」とか「きっと大きな暴落が来るに違いない」という人は比較的いる。

 もちろん今がバブルかどうかは誰もわからないし、そもそもバブルというものは弾けた後に初めてわかるものだから、事前にバブルかそうでないかを見極めるのはなかなか難しいことだ。

 かつて著名なアメリカの投資家であったジョン・テンプルトン氏の有名な格言に「強気相場は、絶望の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、熱狂の中で消えていく」というのがある。これはいつの時代でもおそらく真実だと思うが、バブルのピークの時というのはまさに“熱狂の中”であり、誰もが弱気を口にせず、強気一辺倒になっている。ところが現在は必ずしもそういう状況ではなく、「暴落が近い」という意見の人も多い。この辺りの心理を投資家の感情の面から考えてみたい。

株価が上昇を続ける 本当の理由
 多くの人が勘違いしていることがある。それは「株価が上がるのは買う人が多いから」と思っていることだ。でもこれは正しくない。なぜなら、市場においては買う人と売る人の数量が一致しないと値段がつかないからだ。もちろんある時点において買い注文の方が売り注文よりもはるかに多ければ、値段はせり上がっていくから気配は上がり、高値がつくことはある。ただし、これは単にその時点での現象にすぎず、株価が上昇を続ける時の理由は単純に買う人の方が多いからというわけではないのだ。

 では上昇相場において、なぜ株価が上がるのかと言えば、その理由は「買う人が多いから」ではなく、「株を買いたいけれどまだ買えていない人」が多いからである。

 つまり、市場に「買いたいパワー」が充満している時に株は上がり続けるのだ。では今がそういう状態かどうかをどうすれば知ることができるだろう?実はこれはとても簡単で、前述したように一般個人投資家が「今は上がり過ぎているから、そのうち下がるだろう」とか「今は明らかにバブルだよ」と言う人が比較的目立つ時は「買いたいパワー」が充満しているのである。

わかりやすい例えとして、イソップ物語の「キツネと酸っぱいブドウ」の話がある。ある時、キツネがたわわに実るブドウを見つけた。食べたい、取りたいのだが、キツネは背が小さいのでジャンプしても何をしてもブドウには届かない。つまりキツネの心の中には「食べたいけどブドウが手に入らない」という葛藤が生じる。それでも自分の力ではどうにもならない。そこでキツネはこう考えることにする。「あのブドウはきっと酸っぱくておいしくないに違いない」。つまり、そう考えることで心の不協和を無くそうとするのだ。

相場のピークにつながる “熱狂”が生まれる心理的な背景
 面白いことに、そういう人は実際に相場が下がると「もっと下がるかもしれない」と思って買えないことが多い。そうこうしているうちにまた上がり始める。「もう辛抱できなくなって買う」という人が増えてくる。そうやって買いたくても買えなかった人が辛抱できずに買うようになり、最後に誰も買いたい人がいなくなった時、そこが相場の天井なのである。

 興味深いことに、人間は自分の持っているものは高く評価するクセがある(保有効果)。したがって弱気なことを言っていた同じ人が、株を買った途端に今度は自分が株を持っているから強気になるのだ。だからテンプルトン氏の言うような“熱狂”が生まれるのだが、残念なことにそこがピークになる可能性は極めて高い。なぜなら、買いたいと思っている人がみんな買ってしまうと、潜在的な「買いたいパワー」はなくなってしまうので、もう下がるしかないからだ。

 実は、世の中の投資家がどういう状況になっているか、つまり潜在的な「買いたいパワー」がどれぐらいあるかは、昔に比べるとわかりやすくなってきている。この理由はSNSで個人的な相場観や見通しを語る人が増えてきているからだ。プロの投資家がメディアやSNSで語ると、ややもすればポジショントーク的な場合もあるので、少し注意した方がよいだろう。一方で、個人投資家の場合は「買いたい弱気」、逆に「売りたい強気」に基づいた非常にわかりやすい言動になることが多いので、市場の位置や見通しを見る時には参考にできるのではないかという気がする。

 でも、そうした声の多くは相場にとってはノイズにすぎない。必要以上にそういう声に耳を傾ける必要はなく、マーケットの状況を判断する時の一つのヒントとして活用すれば良いだろう。もちろん、そうした他人の発言に惑わされることなく、自分自身で考え、判断することが何よりも大切であることは言うまでもない。

by強め女子会

HP:http://tsuyomejyoshi.com


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