【MTG】《タッサの神託者》が映し出す精神と信仰と幸福

『テーロス還魂記』のプレビューを見ていたら突然最高のカードが飛び出してきて興奮のあまり同僚に絡み出してしまったので感情を鎮めるためにこの文章を書いています。

プレビュー記事はこれ:単語強盗『テーロス還魂記』の章」
https://mtg-jp.com/reading/translated/0033616/

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カードはこれ

強さはまあ使えるかな?程度、特別にストーリーがあるわけでもないんですがとにかくカードデザインが最高に美しい。まさかMTGのカード1枚にここまで人生を織り込むことができるとは…
→《真実を覆すもの/Inverter of Truth》とのコンボがめちゃくちゃパイオニアで流行ってるみたいですね。強くてデザインが美しいなんて完璧!
ここ最近だと《残骸の漂着/Settle the Wreckage》《最後の別れ/Final Parting》なども非常に美しいデザインだったのですがそれを超えるレベルです。すごい。人生を考え始めるレベル。

・で、なにがすごいの
最初の「青の信心の数だけライブラリーを見て、そのうち1枚を上に・残りを無作為で下に置く」効果について。

まず青は「知識・情報・変化」などを司る色なので、青への信心はそういったものへの信仰心だと考えられます。
また《海の神、タッサ/Thassa, God of the Sea》は公式記事(https://mtg-jp.com/reading/translated/0004062/)によると「口を開く時は、しばしば未来形を用いて、常に「明日何がもたらされるか」に言及し、今日の現実には決して興味を示さない」そうなので、未来を見つめる姿勢を表しているとも考えられます。

次にライブラリーを見る効果ですが、MTGにおけるライブラリーはプレイヤーの精神・記憶・正気などを表していると考えられます。
ライブラリー破壊カードは《正気の削り落し/Sanity Grinding》《心の傷跡/Traumatize》《記憶殺し/Memoricide》など精神攻撃っぽいカード名が多いですね。
選んだ1枚をライブラリーの一番上に置くのは「知りえた情報や記憶の中から自身の未来を選択せよ」ということでしょう。

つまりこの効果は「知識への信仰心や未来への渇望(青への信心)を元に自身の精神(ライブラリーのカード)を見つめ、その中にある未来を1つ選び取って(一番上に置く)他を記憶の底に押し込める(下に送る)」わけです。ずいぶん壮大だな。
それだけなら他のカードにもあるんですが、ここからがこのカードのすごいところ。

上記の能力の後の「信心がライブラリーの枚数以上になるとゲームに勝利する」効果について。
信心が高まれば高まるほど、プレイヤーはより自分の精神を深くまで見つめることができます。
しかしライブラリーの枚数が多い=情報や記憶を多く持っているほど、それらをすべて見通すことは難しくなります。
知識があるほど自分の本心が見えなくなる、よくある話です。
一方でゲームが長く続いて枚数が少なくなってくると、プレイヤーは精神的に衰弱しているはずです(ライブラリーが0枚になると負けなので)。
※厳密にはまだ負けないんですが細かくなるので省略
ですがそんな追い詰められた状態であるほど、少ない信心でも勝利条件を達成しやすくなります。現実でも苦行によって精神を極限に近づけ、悟りを目指すみたいなのありますからね。

そのように様々な精神のありようが存在する中で、信仰心によって己の精神の全てを見通すことができればその中から「勝利」という幸福を選び取ることができる!
相手を打ち倒しての勝利ではなく自身の内から幸福を見出すことが大切なのだという主張を感じさせるこのカード、まさに神への信仰が満ちたテーロスという次元に相応しい1枚だと思います。

カード1枚で長々と書いたな~って感じですが、「MTGのカードデザインっていろいろ考えられる要素があるんだな」ってことがちょっとでも伝わったら嬉しいです。
ストーリーとはまた違った、そのカードに込められた意思や物語を想像してみるのは楽しいですよ!

おしまい。

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