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15 訴因変更の要否

1 裁判所は、訴因変更手続を経ることなく建造物侵入・窃盗の各幇助の事実を認定することができるか。 
(1)まず、訴因とは、罪となるべき事実の記載であると解される。そして、訴因の趣旨は、審判対象を画定し、裁判所が他の事実から識別して審理を開始・進行できるようにした点にあり、その裏返しとしてその限度で防御範囲を明示し、被告人の不意打ちを防止する点にある。
ア.そうだとすれば、訴因の審判対象画定機能から、①審判対象の画定に不可欠な事実の変動があれば、訴因変更が必要であると解する。
 さらに、訴因の告知機能から、②一般的に被告人の防御にとって重要な事項につき、検察官が訴因で明示した場合に、これと異なる事実を認定するときも、原則として訴因変更が必要であると解する。もっとも、具体的な訴訟経過に照らして、被告人に不意打ちとならず、かつ、被告人に不利益でないのであれば、例外的に訴因変更を要しないと解する。
イ.本件では、甲との共謀は認められず、各犯罪事実の幇助事実が認められるに過ぎないとしているという点で、審判対象画定の見地から必要とされる事実に変化があり(①)、訴因変更が必要のように思える。
(2)ア.しかし、訴因事実と包摂関係にある縮小事実を認定する場合には、縮小認定として訴因変更手続を要しないと解する。なぜならば、検察官により縮小事実が潜在的に主張されていると見られ、またそれゆえに、定型的に被告人の防御に不利益を与えることがないと考えられるからである。
イ.たしかに、正犯と従犯との区別があり訴因の特定にとって不可欠な事項である。しかし、共同正犯と幇助については共謀の存在の有無に違いがあり、各人が行う犯行それ自体には何らの違いもないため、共同正犯が共謀が存在しないことにより否定された場合に幇助犯が成立するという包摂・被包摂関係にあると言える。そのため、縮小認定として訴因変更を要しない。
2 よって、裁判所は、訴因変更手続を経ることなく建造物侵入・窃盗の各幇助の事実を認定することができる。
以上

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