邦邦武者修行1
邦楽の拡張する音楽性を見極めるべく無作為に名盤を聴いていく
1.betcover!!-「時間(2021)」
初聴。
ヤナセジロウのバンドプロジェクト3rdアルバム。
いわゆるインディーロックの極地的な作品。
点在して、主題の輪郭をなぞる歌詞の言語感覚。メジャーシーンに相反する、身体に浸漬し馴染むメロディー。言葉で言い表されるのを嫌うようにしっぽをつかませない作品。
2.きのこ帝国-「渦になる(2012)」
きのこ帝国の1st。私とシューゲイズの出会いは本作か、羊文学「トンネルを抜けたら(2017)」であろう。
キラキラと砂糖菓子のような甘さで広がる楽器隊の音。憂いと気怠さを孕むボーカル。俯きがちな暗さが心地いい。狂気を感じるほど幻想的な作品。
聴くのは恐らく2回目だが、これほどまでにいいとは。
3.椎名林檎-「無罪モラトリアム(1999)」
椎名林檎の伝説的な1st。彼女の名盤をあげるとなれば本作か「勝訴ストリップ(2000)」であろう。
こちらも何度聞いたかわからないほどに傾倒していた過去を持つ。眼前に肉薄する描写力と表現力。人間的な二面性を跨ぎながら歌唱するボーカリゼーション。福岡から上京してきた私にとって特別な作品だ。
4.Base Ball Bear-「十七歳(2007)」
2ndアルバム。
SCHOOL OF LOCKや銀魂で度々お世話になったベボベ。
ベスト以外きちんと聞くのは初めてである。
若かりし、鮮明と翳りを懐古させる音像。いくつになっても寄り添う楽曲。無感情で落ち着いたボーカルは内なる熱さを秘める。差し出がましいものは無く、吹く風の自然さで心が開かれる。
5.Perfume-「GAME(2008)」
過去友人が、「無性にPerfumeを聴きたくなる日がときたまある」と言っていたのが忘れられない。ポリリズム、チョコレイト・ディスコ等キラーty-ンが多数が収録された1stアルバム。
磨かれしれテクノポップの名盤。流る水の光る面、硬質でいて陽光の暖かさを持つ。プリズムのようにキラキラ絶えず色を変える、中田ヤスタカの放つポップネスの濁流に飲まれる。
6.syrup16g-「COPY(2001)」
メジャー1st。
初聴。体温の温もり、内省的な狂気と切なさを携える。ガス灯でぼんやりとした視界、煙草でけぶるワンルーム、そういったものを彷彿とさせる。
気怠げなループや浮遊感が心地いい。
7.KIRINJI-
「ペイパードライヴァーズミュージック(1998)」
初聴。
緻密で計算されたポップサウンド、軽妙で巧みな詩作。余裕のある大人の軽やかさで歌い上げる。雨上がり、一日の最後の緩やかさ。早朝の凛とした空気や午後の陽光の柔らかさを思わせる。
8.NOT WONK-「dimen(2021)」
骨太な低音が渦巻き、空間いっぱいに広がる音。メロウに、感情的に揺れ動くVo。出自に裏打ちされたパンクな態度を遺憾なく発揮した攻撃性。多彩で実験性を感じる作品。
9.宇多田ヒカル-「First Love(1999)」
R&Bの萌芽、常時日本人離れしたグルーヴで走り抜ける名盤。
大人への憧憬を感じれられる歌詞は華やかな光に付きまとう濃い影を思わせる。濾過された無垢な声は今だからこそだせる唯一性を感じる。
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