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5/9 『若者たちへ』/ 羊文学【個人的名盤】

2017年10月4日1stEP「トンネルを抜けたら」がリリースされ、
敬愛するライター峰岸利恵さんのツイートで知った彼女等。
バンド名に惹かれた私は一も二もなく、天神福岡ビルにあったTSUTAYAに駆けた。期待に反して、彼女らは私の感受性をもってしてスルリと入ってきたわけでは無かった。シューゲイズという言葉も知らなかった当時、轟音の成す甘さと気怠さ。その重量にむしろ辟易したのを覚えている。しかしいつしか私の学生人生の大半を占めるJR本線先頭車両後部座席での思い出を確実に侵食し始めた。そのわけは翌年リリースされた『若者たちへ』。羊文学の1stフルにして歴史名盤とあいなった今作。
徹底的に鋭利で劈くような冷気を纏い、時に陽光のような手解きで懐柔される、どちらも羊文学なのだ。『トンネルを抜けたら』『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』二作の明暗を詰め込んだのが『若者たちへ』だとしたら、私はどこまでも人間な羊文学に一直線であった。感嘆は上京しても続き、星は見えずとも新宿は夜だった。
'20リリースの『powers』でも同様だが#1に「エンディング」のような曲を持ってくることがずるい。出だしで引きずり込まれ彼女らの明暗を各所に配し、抉られる随所随所。陰鬱な激情と青き苦悩の美しさ。そこは雪国であった。彼女らの楽曲は身体を覆い刺し''独りだ''と否が応でも知らしめる冬の冷気に似ている。


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