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『東京絶景』/ 吉澤嘉代子【旧盤レビュー】


吉澤嘉代子に出会ったのは、多くの人がそうだったであろう、'17年に発表されたシングル『残ってる』であった。
重要なトピックスをどこかあっけらかんとして歌う『残ってる』は私の心に新しい風をもたらした。センチメンタルを軸に冷ややかな目線で本心を見つめる。事実を淡々と。
彼女の旧譜は私の吉澤嘉代子のそういったイメージを一蹴した。
バラエティに富み、歌詞はユーモアを混じえ、人の機微に触れる。彼女はすべてを許容する。悲しみ、怒り、諸所の感情はきらめく語彙ですべて魔法めく。言ってしまえば天性の人間性の成せる詩作であろう。卓越したソングライティングと暗澹たる部分も明るく染め上げる彼女の声の合作である。

タイトルトラック「東京絶景」は私にとって一つの指標となった。
地方から上京し美しい思い出ばかりではない日々に、それでも東京は''うつくしい''のだと胸を張れる。東京をこれほどまっすぐに称賛した作品も珍しいかもしれない。

''星なんて一つも見えないけど 夢を見ているのよ''

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