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4/9『千年幸福論』/ amazarashi【個人的名盤】

私の感受性の一端を担うアーティスト、"amazarashi"。彼らのベストは2011年にリリースされた『千年幸福論』であろうと思う。
中学生の時分出会った2010年リリースの諸作も勿論名作だが、今作は私の人生において一つの指針を確立させた。
秋田さんのすべてが反映しフィクションとリアルを綯交ぜに、絶望に管巻き、希望に恐れ戦き、徹頭徹尾人間なのだ。彼が虚構と現代詩然とした詩作に本音を隠すことに彼の人間性が痛いほど表出し、染み入る。amazarashiの楽曲全てに言えることだが、彼の生き様という主題の輪郭を縁取り飛び交う固有名詞と韻文。不在がことさらその存在を色濃くするように奥ゆかしく進むかと思いきや、直情的なフレーズが辺りを引き裂く。つまるところ都市の苦悩と望郷に尽きるのだが。彼がどういった心持ちで地べたを這いずり回りながら顔を上げ続けたか、そういったことが声に詩作にそれこそ血が滲むように、滲む。此処では叶わない夢を見る、それがどれほど悲しく勇敢なことか今ならわかる。
地元で聴き始めた当初から10年が経ち東京で聴く『千年幸福論』は、変わらずに変わり続けている。渋谷の果てには地平線があるし、常磐線下りのホームにも立ったし、中野駅前ピアスを照らした月明りも今では私を照らしている。


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