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『無色透明/2020』/illequal【旧譜レビュー】

日本のアーティストillequalの'21年作

傾向として、元来私はボーカルのない音楽を聴く方ではない。

「目の前の景色にすら勝てない程度の音じゃなんもならない」とは「sugAA」/Tohjiでのリリックだが、それを地でいってるのがこの作品だ。これほどまでに感覚を占領されるような、視界に映る風景より雄弁な音があっただろうか。

特筆すべきは一曲単位の構成の素晴らしさだ。構築された秩序を壊す(造る?)ビットクラッシュの塩梅もさることながら、独立したようなアウトロの素晴らしさには舌を巻く。完成されたアウトロには、まるで曲が額装されたような印象を受ける。

完成されたものを破壊することで、それへの郷愁とでも呼ぶべきものが想い起こされる。
その記憶を思い出すのはそれに酷似した状況や景色ではなく、香りや、皮膚の感触であったりする。不在がより存在を色濃くするように、示唆的でないものが示唆する記憶の断片を呼び起こす。
''昨日まで''という完成された日々の上に生きている我々にとって、思い出すという行為が破壊された物への郷愁でなくてなんであろう。

4曲約10分の作品ながら十分な質量をもつ今作。必聴です。

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illequalインタビュー 壊れた音像が描くダウンサンプルされた感情――HexD/Surgeを再解釈する新鋭トラックメイカー – Soundmain



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