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『Maphie Season』/ Maphie【'22所感】


インターネット音楽が持ち合わせる特製の一つとしてセルフプロデュースが引き起こす、''DIY感''とでも言うべきものがある。個人的にはdodoに端を発する、オールセルフプロデュースによるどこかこじんまりとした、外ではなく内にそして内から広がる、それ故に身近な、ポケットで弄びたい宝物。そういった感覚を今作も覚える。
BPMとオートチューン、勢い任せの作品では決してない、詩性と譜割に代表される稀代の音楽性が後押しする、アートワークから想起される''青''のイメージ。

一貫して透明感のあるエレクトロなビートに、低音を効かせた流麗なフロウ。かと思えば世界観の急落が際立つビートチェンジ。低音・意味重視のリリックで心に留めることもできれば、高音・音重視のリリックで頭を振らせること(またはその両方)もできる力量。それを1つのアルバムにまとめ上げたどこか冷ややかな客観性も持ち合わせる。特にシングルとして先行配信されていた''Living on Mars''の完成度たるや。高いBPM、無駄のない尺と爽やかさと抒情的な疾走感。''Mars''と''夜中走らすこのbroken car''といったリリックから、ゆるふわギャング『Mars Ice House(2017)』を髣髴とさせる。同時にカナダのメタルコアバンド Arlo Wellsの20年作『Ghost』とも通じる一回性とそれ故の美しい青さを感じる名曲だ。

あとMarph Type Beatのアウトロの会話はinterlude界でも屈指の可愛さ。



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