現代のサイドバック

マンチェスターシティがチャンピオンズリーグを優勝しました。
そして、シーズンを通して試行錯誤した結果、最終ラインにセンターバックを4枚並べるシステムに辿り着きました。
このシティの優勝。さらに、ベンホワイトや冨安をサイドバック起用するアーセナルの躍進からサイドバックに求められる役割が変化したことが読み取れます。

まず、皆さんはサイドバックと言えば誰を思い浮かべますか?
私はロベルト・カルロスやダニエウ・アウベスを思い浮かべます。
彼らにはある共通点があります。それは、ワイドレーンを1人でカバーできるほどの運動量とウイングと比較しても劣らない攻撃力です。
彼らの躍進により、マルセロやジョルディ・アルバのような多少守備に不安があるものの、高い攻撃力のある選手が重宝されてきました。
しかし、この傾向は変わりつつあります。
それは、ウォーカーがベンチに降格し、カンセロが放出されたシティからも見て取れます。
では、なぜ攻撃的なサイドバックが使われなくなってきているのでしょうか?
その理由はサイドバックに求めらる役割の変化とそれによる求めらる能力の変化です。
まず、現代のサイドバックはウイング化をするよりも、ボランチ化をすることが増えています。
これは、ペップ・グアルディオラの偽サイドバックを起源として、今は多くのチームが採用しています。
狙いとしてはボールポゼッションの安定化と中盤を厚くすることによるカウンターリスクの軽減です。
サイドバックがオーバーラップをすることもありますが、押し込んだ相手を崩すためのポジションチェンジとして行うことが多く、空いたポジションは味方がしっかりカバーしています。
そして、ボランチ化が増えている1番の理由がウイング化のリスクが大きいこと、そして、リスクの割に得られるリターンが大きくないことです。
まず、ウイング化とボランチ化の1番違いは、ポジションチェンジの移動距離です。
サイドバックからボランチへの移動は1列ですが、ウイングへは2列もポジションを上げなければなりません。
この移動距離の差はリスクの差にもなっていて、カウンターを受ける時に守備に戻る時間が長くなったり、走行距離が増えることにより、選手の疲労も溜まりやすくなります。
そして、サイドバックの役割の変化とともに求められる能力も変化しました。
中盤に入ることにより360度から掛かるプレスへの耐性、カウンター時のフィルター能力、守備に重きをおくことによって求められるサイドバックとしての守備力。具体的には、サイドでの1対1やクロスへの対応、センターバックのカバーなどです。
このように、重視される能力が攻撃力ではなく守備力になりました。
しかし、これらをハイレベルでこなせるサイドバックは多くはいませんでした。
それは、世界最高のサイドバックの1人でもあるウォーカーですら例外ではありませんでした。
そのため、純粋なサイドバックよりもサイドバックをこなせる走力のあるセンターバックのコンバートが起きました。
チアゴ・シウバのようにユース時代はボランチでプレーしていたセンターバックも多くいますし、サイドバックをボランチ化するよりもセンターバックをボランチ化する方が自然です。
その結果シティではアケやストーンズ、アーセナルではベンホワイトや冨安が重宝されました。
おそらく、この傾向はこの先も続くでしょう。
シティやアーセナル程でなくてもサイドバックは後ろからゲームを作る存在になり、マルセロのような攻撃力が高いが守備に不安があるサイドバックは生き残るのは難しくなるかもしれません。

補足として。
ウォーカーはプレータイムが増えてきています。
理由としてはマフレズの移籍とギュンドアンの移籍によるベルナルドに求められるプレーの変化(中でのプレーを求められる)によりウイング化できるサイドバックが必要になったからでしょう。
そして、それを完璧にこなす様を見ると、ウォーカーのように守備に穴を開けず、ウイング並みの攻撃力を発揮できる選手ならばウイング化するメリットは大きいのかもしれません。
ただ、ウォーカー程の攻撃力、守備力、走力を持った選手はそうそういないので、再現性は高くはないかもしれません。




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