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メタルにおける打ち込みドラムの音作り(バスドラム編)

メタルミュージックでのドラムの音色は、他のロック系音楽とはだいぶ聞こえ方が違いますよね。やたらアタックが強調されたキックであったり、バスドラムやタムと音色の変わらないようなスネアだったり。
色々あると思いますが、打ち込みのドラムでの音作りおすすめ設定の一例を紹介していきたいと思います!

バスドラムの処理

バスドラムは何を選ぶか?

メタルにおいてよく使われるのはPearlやTAMAですかね。キットについては音色の好みありますし、基本的に口径の大きめのバスドラムを選んでおけば良い気がします。
ドラムライブラリ内の内臓エフェクトでも良いかもしれませんが、音質向上を狙うなら各キットパラアウトする方が良いでしょう。

バスドラムの音作りでは何をする?

基本的にはEQ、コンプレッサー、サチュレーションの3種類です。ただ処理の順番はこれと言って決まっていないと思います。EQの後にコンプでも良いですし、逆でも問題ありません。どうするかがポイントになります。今回はEQ→コンプ→サチュレーションの順番にしています。

バスドラムのEQ

KICK-EQ

ポイントを低い周波数から順に書きますと

  • 25Hz付近LPF: 余分な低域を削っておきます。12dB/octのカーブで良いかと思います。

  • 100Hz付近:ベースの肝になる周波数帯域なので-5dB~-10dB程度のゲイン設定であまり音量が大きくならないようにします。

  • 350Hz付近:曲全体としてこもりがちになる帯域なので-10dB程度のゲインにします。ドンシャリなキックの響きのポイントでもあります。

  • 1.5kHz付近:上物やボーカルの目立つ帯域になるので-3dB〜-6dB程度のゲイン設定で音量を下げておきます。

  • 7kHz付近:6k-8kHzあたりはいろんな楽器の高音成分がかなり重なってきますので-2dB~-5dB程度をゆるく下げておきます。

  • 15kHz付近:ローパスフィルタで高域を削ります。

曲やドラムキット自体の音質にもよりますが、上記を参考に適宜周波数をずらしたり、減衰量を変えたりすれば良いかと思います。あとはどのポイントもあまりQを細くしない方が良いかなと思います。
キックの音の周波数波形的なポイントとしては50〜150Hzあたりが均等なレベルになり、高域もそこそこ出ているようなイメージです。

バスドラムのコンプ

KICK-COMP

コンプレッサーは種類がたくさんあるので好みで選択すれば良いと思いますが、しっかり低音を拾いたいので1176などFET系の反応の早いものより、やや遅めの動作で色付けの少なめなコンプレッサーが良いです。SSLバスコンプ系やヴァーサタイルに使えるデジタル系コンプレッサーがおすすめです。
設定のポイントは

  • Ratio = 4:1〜6:1程度

  • Attack = 20msec〜30msec

  • Release = 100msec〜150msec程度

  • ゲインリダクション値が最大7dB~8dB程度、平均で5dBくらいになるスレッショルド設定(コンプに入ってくる音量によります)

  • Makeup = 5dB〜6dB程度

キックにかけるのでサイドチェーン等はなくて良いかと思います。

サチュレーション

KICK-Saturation

メタルらしいアタックの音色作りの重要なポイントがサチュレーションです。歪みの種類はなんでも良いと思いますが、ナチュラルな歪みの方がおすすめです。テープサチュレーション系を深く歪ませたりがおすすめです。ここでのポイントは

  • 180Hz ~ 200Hz以下の周波数帯域は歪ませない。

  • 中〜高域のみ歪ませる。

  • テープシミュ系などのナチュラルな歪みを深くかける。

上記の画像のFabfilter Satrun2などのマルチバンドディストーションがプラグインとしてはおすすめです。歪ませた音へのEQのかけ方でかなりアタックの高音部分の音色が変わってくるとおもいます。低域を歪ませないことでボワつかずタイトな低域になります。

最後のちょい足しリミッター

JST CLIP

JST CLIP

モダンメタル系プロデューサーとして有名なJoey Sturgisのブランド”JST"の一番人気のプラグインです。分類としてはハードなリミッターになりますが、これを入れると若干アタックが派手めになり、低音もリッチになります。サチュレーションなしでこれ一発でも結構いいです。

Waves L1

Waves L1

結構音が変わるので、もはやバストラックに使っている人はいないかもしれないWaves L1ですが、キックのリミッターとしてこのちょっと派手な音色がなかなか良いです。簡単に使えますし結構おすすめです。

まとめ

メタルミュージックはギターが目立ちますが、音源のクオリティははっきり言ってドラムの音で決まります。そしてキックは低音の最重要な要素なので丁寧に音を決める必要があると思います。基本の音を作った後で、曲に合うように全体ミックスの段階で再度音を見直してみることも必要でしょう。
今回キックの音作りについて書きましたが、その他ドラムキットの処理も続けたいとおもいます。

余談:トリガーサウンド

Snare Trigger

メタル系のドラムキットだとトリガーサウンドをキックやスネアとリンクして鳴らす設定が結構ありますね。ただ個人的にはDTM打ち込みにおいてはあまり必要ないとおもいます。
そもそもは複雑な処理系統を作れないライブでメタル系アタックを作ったり、生ドラム演奏ながらバリバリ打ち込みドラムサウンドにするためのツールになります。DTMにおいては音声処理ルーティングの制限はほぼないので、トリガーはなくてもなんの問題ありません。人工的な音にしたいならありですが、それならばそもそもダンス系や808系などのドラムキットを使う方が良いでしょう。

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