異世界転生の類型


昨今の異世界転生漫画が好き過ぎてたくさん読んだので類型としてまとめてみました。

1. 異世界転生

我々が住むこの地球(以下、「基底世界」)が明確に描かれており、なんらかの要因で異世界に転生や転移を行うもの。
「我々」である「第一者」が、「我々ではない人々」である「第二者」の住む世界(異世界)に転生や転移を行うものであり、後述の「ハイ・ファンタジー」とは異なる分類とする。

1.1. 異世界に転生する

もっともオーソドックスに見えるパターンで、基底世界で死亡し、異世界で新生児として生まれるか、あるいは一定の年齢で出現するもの。
また「異世界薬局」のように異世界の人物に憑依する(異世界の人物の人格は上書きされるか共存する)場合も、基底世界で死亡している描写があることから、ここでは「転生」とする。
異世界で生まれる前に超自然的な存在(おおむね神の形をとる)からいわゆるチート能力を与えられる場合がある。
作品の例として以下がある。
・賢者の孫
・無職転生
・二度目の人生を異世界で
・八男って、それはないでしょう!
・異世界薬局
・私、能力は平均値でって言ったよね!
・ポーション頼みで生き延びます!
・軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!?
・魔拳のデイドリーマー
・村人転生 最強のスローライフ
・ワールド・ティーチャー 異世界式教育エージェント
・スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました
・聖者無双
・転生しちゃったよ〈いや、ごめん〉
・駆除人
・神達に拾われた男
・最強呪族転生
・塔の管理をしてみよう
・異世界建国記
・異世界ゆるり紀行~子育てしながら冒険者します~
・異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。
・神童セフィリアの下剋上プログラム
特筆すべき点として、ほとんどの異世界転生において基底世界での死亡は不慮の事故の形(いわゆるトラック転生や過労死など)をとって行われるが、「二度目の人生を異世界で」では大往生の後に転生する。
また「ポーション頼みで生き延びます!」では、「神」のはからいによって、基底世界の家族および親族に、明晰夢の形をとってお別れを伝えてからの転生を行った。

1.2. 異世界に転移する

「異世界に転生する」と並んでオーソドックスだと思われるパターンで、基底世界や異世界の「神」によるものや、異世界人による召喚など、なんらかの要因で異世界に転移するもの。
一般的には「異世界召喚」と呼称されることが多いと思われる(2019/2/9執筆時にはGoogle検索の件数に10倍近い開きがある)。
転移の際に容姿や年齢は変わることがあるが、基底世界で死亡した描写がないか、「物理さんで無双してたらモテモテになりました」のようにぼやかされている場合には「転移」とする。
1人での転移、複数人単位での転移、大人数(クラス単位)での転移、また「異世界に転生/転移するが基底世界の物資を利用出来る」に記載する日本国そのものの転移などがある。
この分類では「異世界」が、ファンタジー世界である場合とゲーム世界である場合がある。
前者(ファンタジー世界)の例として以下がある。
・盾の勇者の成り上がり
・超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!
・異世界魔法は遅れてる!
・異世界チート魔術師
・異世界支配のスキルテイカー ゼロから始める奴隷ハーレム
・最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?!
・ありふれた職業で世界最強
・マギクラフト・マイスター
・地方騎士ハンスの受難
・ダンジョンシーカー
・ワールド・カスタマイズ・クリエーター
・転生賢者の異世界ライフ ~第二の職業を得て、世界最強になりました~
・成長チートでなんでもできるようになったが、無職だけは辞められないようです
・物理さんで無双してたらモテモテになりました
・異世界で『黒の癒し手』って呼ばれています
・金色の文字使い
・聖女の魔力は万能です
・百錬の覇王と聖約の戦乙女
・レベル1だけどユニークスキルで最強です
・即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。
・進化の実~知らないうちに勝ち組人生~
・最強の種族が人間だった件
・科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌
特筆すべき点として、「異世界魔法は遅れてる!」では基底世界がそもそも異世界より進んだ魔法の存在する世界であり、第一者性が希薄であることがあげられる。
またゲーム世界のような、いわゆるステータスウィンドウがファンタジー世界で利用できるものも多く、「ワールド・カスタマイズ・クリエーター」では世界こそファンタジー世界であるものの、ゲーム世界の一部システム(装備品や地形のカスタマイズ)が可能である。
またこの分類に限ったことではないが、「異世界でカフェを開店しました。」「異世界のんびり農家」「獣医さんのお仕事in異世界」のように、バトルがテーマではないものもある。
後者(ゲーム世界)の例として以下がある。
・ソードアート・オンライン
・ログ・ホライズン
・オーバーロード
・デスマーチからはじまる異世界狂想曲
・異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術
・THE NEW GATE
・賢者の弟子を名乗る賢者
・フリーライフ
・マヌケなFPSプレイヤーが異世界へ落ちた場合
・異世界迷宮でハーレムを
・くま クマ 熊 ベアー
・この世界がゲームだと俺だけが知っている
「ソードアート・オンライン」に代表される、いわゆる「デスゲーム」もここに含まれる。
「THE NEW GATE」の作中では「デスゲームと化した THE NEW GATE をクリアした後」という説明があり「ソード・アート・オンライン」が「デスゲーム」という概念をどれだけ広めたかをうかがえる。また「THE NEW GATE」はデスゲームをクリアしたものの基底世界に帰還出来なかった主人公を描いたものである。

1.3. 異世界に人間以外の生物として転生する

モンスターや人間以外の生物として転生するもの。
作品の例として以下がある。
・転生したらスライムだった件
・蜘蛛ですが、なにか?
・骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中
・Re:Monster
・邪竜転生
・ワンワン物語 ~金持ちの犬にしてとは言ったが、フェンリルにしろとは言ってねえ!~
特筆すべき点として、「Re:Monster」も前述の「異世界魔法は遅れてる!」のように基底世界がスキルやモンスターが存在する世界であり、これらにおいては第一者性が希薄に感じられる。

1.4. 異世界に無機物として転生する

そもそも生物以外として転生するもの、ただし意思疎通は肉声やいわゆる念話など、何らかの手段で可能である。
作品の例として以下がある。
・転生したら剣でした
・異世界温泉に転生した俺の効能がとんでもすぎる
・異世界で最強の杖に転生した俺が嫌がる少女をムリヤリ魔法少女にPする!

1.5. 異世界に転生/転移してタイムリープする

「異世界に転生する」あるいは「異世界に転移する」が、異世界にて一回あるいは複数回のタイムリープを行いなんらかの目的を達成しようとするもの。
作品の例として以下がある。
・村人ですが何か?
・槍の勇者のやり直し
・二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む

1.6. 異世界に転生/転移するが基底世界の物資を利用出来る

基底世界の物資をなんらかの形で利用できるもの。
作品の例として以下がある。
・理想のヒモ生活
・異世界はスマートフォンとともに。
・神さまSHOPでチートの香り
・とんでもスキルで異世界放浪メシ
・マヌケなFPSプレイヤーが異世界へ落ちた場合
・おっさんのリメイク冒険日記 ~オートキャンプから始まる異世界満喫ライフ~
・俺の家が魔力スポットだった件
・日本国召喚
「異世界はスマートフォンとともに。」ではスマホによるカメラや地図が魔法と組み合わせて利用されており、また「とんでもスキルで異世界放浪メシ」では異世界の金銭で基底世界の物資(ガスコンロ、生鮮食品など)を購入できる。
「俺の家が魔力スポットだった件」では基底世界の住居である家屋ごと転移する。
「日本国召喚」では領土ごとの転移となるため、超自然的な力によって物資が接続されるのではなく、在庫として保持していた護衛艦を異世界の戦闘で利用している。

1.7. 異世界に転移するが基底世界と行き来出来る

基底世界と異世界をなんらかの形で行き来できるもの。
作品の例として以下がある。
・宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する
・老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます
一般的な異世界転生ものでは、主人公にいわゆるチート能力が与えられることが多く、チート能力は異世界において非常に優れた肉体能力や魔法、また中世程度の文明レベルで描かれることが多い異世界においてはそれそのものがチート能力となる基底世界の知識(ライター、水車、物理学など)などがある。
ただしこの「異世界に転生/転移するが基底世界と行き来出来る」においては、行き来出来ること自体がチート能力として与えられ、魔法などの能力は与えられないことが多い。

1.8. 異世界と繋がる

基底世界と異世界が接続されるもの。
接続の規模に大小があり、また接続を任意で解除できるものとできないものがある。
作品の例として以下がある。
・異世界居酒屋「のぶ」
・異世界食堂
・ゲート ―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり

1.9. 異世界に自分だけ転生/転移しない

複数人が超自然的な存在になんらかの能力を与えられ異世界に転移するが、主人公のみ能力を与えられた上で異世界に転移しなかったもの。
現時点では「クラスが異世界召喚されたなか俺だけ残ったんですが」のみを確認している。

1.10. 異世界転生/転移を複数回行う

複数回の異世界転生をテーマとしたもの。作品の例として以下がある。
・異世界召喚は二度目です
・四度目は嫌な死属性魔術師

1.11. 異世界から転移してくる

異世界から転移してくるもの。
作品の例として以下がある。
・俺んちに来た女騎士と田舎暮らしすることになった件
・四畳半異世界交流記
・エルフ嫁と始める異世界領主生活

2. VRMMO


高度に発達したVRMMOを題材としたもの。
特筆すべきはその「第二者性」である。本来であれば自我のないNPCでは「第二者性」が確保されずただの「集団での異世界転移」となるが、たとえば「オーバーロード」では「…か、会話をしている…」とNPCと会話していることに驚く描写があるし、「ログ・ホライズン」ではNPCを「大地人」と描写しており明確に第二者性を確保している。

2.1. 現実に帰還できる

一見すると異世界ものであるが、「自由に基底世界と異世界を行き来出来る」「命の危険がない」ことが異なる。
NPCとの会話が行われる場合には非常に高度なAIで行われ「第二者性」も確保されており、言ってしまえば異世界ものからいわゆるデスゲーム要素を抜いたものである。
作品の例として以下がある。
・とあるおっさんのVRMMO活動期
・オンリーセンスオンライン
・痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います
・クソゲー・オンライン(仮)
・インフィニット・デンドログラム
・通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?

2.2. 現実に帰還できない

「自由に基底世界と異世界を行き来出来る」「命の危険がない」を満たさないことから、「VRMMO」よりは「異世界転移」に属するべきだと考えるため、「異世界に転移する」のゲーム世界に関する記述を参照。

3. ハイ・ファンタジー


基底世界は描かれておらず、異世界のみを舞台とするもの。
いわゆる「ハイ・ファンタジー」であり、「指輪物語」のような古典や「ダイの大冒険」「我が驍勇にふるえよ天地」のような、異世界のみを舞台とし「第二者性」が中核をなすものをここに分類する。
ここでは、そのなかでも特に異世界転生からの影響を大いに受けていると考えられるものを分類する。

3.1. 異世界でタイムリープする

異世界のみを舞台とするものの、「異世界に転生/転移してタイムリープする」のエッセンスを取り入れているもの。
作品の例としては以下がある。
・強くてニューサーガ
・平兵士は過去を夢見る
・回復術士のやり直し

3.2. 異世界から異世界に転生する

異世界のみを舞台とするものの、「異世界に転生する」あるいは「異世界に転移する」のエッセンスを取り入れているもの。
人から人への転生、人からモンスターへの転生、モンスターから人への転生などさまざまなパターンがある。
作品の例としては以下がある。
・最強の黒騎士、戦闘メイドに転職しました
・Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます
・さようなら竜生、こんにちは人生
また例外ではあるものの、として200年間眠り続けた錬金術師の200年後の世界での冒険を描いた「生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい」などがある。

参考文献


異世界 (ジャンル), https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%95%B0%E4%B8%96%E7%95%8C_(%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%AB)
「異世界転生」「異世界転移」のキーワード設定に関して, https://syosetu.com/site/isekaikeyword/
「小説家になろう」のWeb小説における異世界ファンタジー類型まとめ, http://kazenotori.hatenablog.com/entry/2016/02/07/145236

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