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創造的に年を重ねる。110歳までアクティブに! TACT(TAkasaki Community Theater)インタビュー

ストレンジシード静岡のサポートスタッフ、その名も「わたげ隊」。ストレンジシードってどんなフェス? どんなアーティストが出るの? ということを伝えるべく、地元・静岡を中心に活動するわたげ隊が出演アーティストにインタビューする企画。TACT(TAkasaki Community Theater)のみなさんが登場です。

わたげ隊がゆく!
ストレンジシード静岡2023 アーティストインタビュー
ゲスト:藤井咲恵、林田きみゑ、中村皇子、吉井一仁
聞き手:天野、リョウゴ(わたげ隊)

天野 TACTさんの簡単な説明とお一人ずつ順番に自己紹介をお願いします。

藤井 藤井咲恵です。私がファシリテーターという形で、作品を作るときは皆さんからアイデアをもらって、その中から作っていく、いわゆるまとめ役です。TACTは正式名称がTakasaki Community Theater(タカサキコミュニティシアター)という名前で、名前の通り群馬県高崎市で活動しております。NPO法人Ballet Noah(バレエノア)という団体が運営しており、60歳以上のアクティブなシニアのパフォーミングアーツグループです。2018年に公募で結成しました。
最初は20人ぐらいいたんですけど、そこから継続してやっていきたいというメンバーが今の9人です。
「どこでも、どんな場所でも、どんなことでも面白がってやってみよう」ということ、クリエイティブエイジング……創造的に年を取りましょうというのを目標にして「100歳までクリエイティブエイジングでやってやろうぜ!」みたいな気持ちでやっています。

皇子 (100歳と言わず)110歳まで!

天野 その10年、大事ですね。

藤井 今回のストレンジシードは「面白そうなやつあるんですけど行きませんか?」と私が呼びかけて、みんなが「行く!」と言って応募しました。そんな風に提案したり、まとめたりというのをやっております。

皇子 一番若手の60歳、中村アンジェリーナ皇子と申します。私も結成当時から参加して作品作りに携わったり皆と一緒に活動しています。やっと資格の年齢(=60歳)になりました。TACTはアートを表現することについて最適な団体だなと思っていて、創造的な活動が多いのでやりがいを感じています。

カズ 吉井一仁と申します、皆さんからはカズって呼ばれてます。2018年の立ち上げの時から参加していて、最初に作品を指導していただいたのがすごい人なんです。ファビアン・プリオヴィルというピナ・バウシュのカンパニーに在籍していた人で。彼のおかげでピナ・バウシュというアーティストにコンテンポラリーダンスの世界へ案内してもらったような気持ちです。
舞台に上がるまでの練習は厳しいですけど、ワクワクドキドキという気持ちを体験出来るので、それでハマってしまいずっと続けています。
ちなみに、この長いひげは自分のひげなんですが、生態がどうなっているかを調べるために伸ばし続けてもう3年になります。

左から、中村アンジェリーナ皇子さん、林田きみゑさん、藤井咲恵さん、吉井一仁(カズ)さん

林田 TACTの中で最年長の林田きみゑと申します。82歳になりました。
娘と孫がダンスに関わっていて、ダンスはずっと見ていまして。60歳になった時に、はたと思うところがあって自分が(TACTに)来ちゃったんです。体が動く限り皆や娘と孫の真似をしてみたいなぁと思っております。

天野 元々「クリエイティブエイジング」という言葉を存じ上げなかったんですが、皆さんを見ていると楽しそうにやってらっしゃるのが羨ましくなりました。

リョウゴ とても面白い方たちですね。みんな元気すぎます!

藤井 ふふふふ。ありがとうございます。この感じの人たちがあと3倍の人数いて、今日のメンバーは大人しいほうですね。

天野 なるほど。では本番はもっと盛り上がる感じですかね。

藤井 そういうことにしておいてください(笑)。

シニアだからこそ湧き出す魅力

天野 TACTのプロフィールに書かれている「シニアにしか出せない独特のリズムや間」とはどういったものですか?

藤井 みなさん「スタート!」と言ってすぐパーって動けるわけではなく、間があって動き出すとか、止まるときもすぐパっと止まるというよりはフェードアウトみたいな感じでひと呼吸ありながら止まるとか。そのちょっとしたリズムが若い人たちとは違うのが面白いなと思っています。
そこを大事にしながらパフォーマンスを作っていきたいですし、出来るだけ素に近い状態でいかにパフォーマンス出来るか?ということを考えています。それが「独特のリズムや間」になるといいなという願いを込めて「シニアにしか出せない独特のリズムや間」と書きました。

皇子 (思い通りにいかないことを藤井さんが)だいぶ我慢してるんですけどね。

林田 私は一番年長で皆さんのようには動けないので、野球で言えばストレートでなく変化球ですね。

藤井 それがいい場合もあるので違う時は違うともちろん言うんですけど、予期せぬ面白いことになったりするのが魅力ですね。

皇子 子どもさん達はレッスンや訓練して舞台に上がりますよね。けれどそういう事をしてこなかった(私たちのような)人たちでも舞台に上がれる場を作りたい。それがバレエノアがTACTを結成した意義の一つとして考えています。もちろん上手に見えるように藤井さんが調整してくれるんですけど、シニアがまだ舞台に上がれるぞという場を提供するのもバレエノアの意義なので、誰でも舞台で感動を感じられるんです。

天野  いくつになってもできる、やりたいという気持ちを叶えてくれる場所なんですね。

自ら発信する振り付けの“素材”

天野 「素に近い動き」というと、みなさんの普段の動きを振り付けに取り入れているいうことですか?

藤井 皆でキーワードを出し合って、そのキーワードに対して体で答えたり喋ったりしています。
今回の『スパイダーの糸の件』も物語でやろう!という私の提案に対して、皆が「この話いいよ」と色々な物語を提案してくれて、どれにしよう?じゃあ(芥川龍之介の)『蜘蛛の糸』から物語を拾おう!ということになったんです。
皆さんのアイデアを私がいただいて、そのエッセンスを使いながらこういうやり方でやってみましょう、という作り方が「素に近い」状態になっているのかなと。与えられた振り付けをやるシーンもゼロではないんですけど、基本的に全体を通してメンバー1人1人が自分から出したアイデアを繋げているような形です。

天野 私もダンスの振り付けってどうやって考えられているのか全然わからなくて。『スパイダーの糸の件』だと「蜘蛛っぽい動きは?」みたいなことですかね。

藤井 「これやってみたいんだけどどうかな?」「じゃあとりあえずやってみましょうか」なんて言ってとりあえず1回やってみる。「ここをこうしたらもっと面白くなるね」と私もメンバーも言うからカオスな状態になって「じゃあどうするんだ!」と困惑する時もあるんですけど、そこも含めて楽しみながら作っています。

カズ いわゆる演劇というのは台本があって演出家がいて、演出家のイメージで「こういう風にしていこう」とキャストに色んな要求をすると思うんですよ。それに対してコンテンポラリーダンスの振り付けは、それぞれが持っている個性を生かすんですよね。私が自然に思いついた動きを取り上げてくれて、振り付けにアレンジして使ったりする。ファシリテーター(藤井さん)が、メンバーそれぞれが持っている味を上手く取り入れて、1つの物語として構成する。だから我々は素材で、藤井さんが料理人という感じです。

天野 藤井さんは結構お厳しい方ですか?

皇子 このメンバーらしさをすごく大事にしてくれてます。ただ、作品が出来てくると(藤井さんにとって)「ここは譲れない!」というところはちゃんと注意されます。私達は訓練はしてないと言いましたけど、バレエのレッスンから始まるんですよ。

カズ まさか70歳を過ぎてバレエシューズを履くとは思いませんでした。

藤井 トレーニングは動いていく上で必要だと思うので、ピラティスやバレエをやってます。

皇子 こういうパフォーマンスに関わることで、シニアも健康を保てる部分もあると思うんですよ。それがデータ化出来ると「ダンスが健康にいいですよ」と言えるんで、そういうところも証明していけたらいいな。

林田 私が一番感じるのは、年を取るということは足も悪くなり、動けなくなるということが解っている。私はたまたま良い環境にいたのでバレエの真似事をして体を動かしましたが、皆さんも60歳になったら体を動かしたり歩いたり色々チャレンジして欲しいです。高齢者になって若い人たちのお世話になる時間を少しでも短くしようと思って体を鍛えてます。そうでなくても必ずお世話になるんです。

天野 5月、静岡に来て何をしたいですか?

カズ 私はずっとヒゲと髪の毛を伸ばしてるので、自分の地毛で一度江戸時代のちょんまげを結ってみたい。出来ればこの機会に静岡の家康が歩いたところを着物を着てちょんまげ結って、闊歩したいという夢があります。

天野 それでもう一つの作品ですもんね。地毛でちょんまげをやってみたいですか?

カズ 結ってみたいなと。

草野 髪結いは探せばある気がします。せっかくなんでね。浅間神社のあたりで、東照宮とかね。

天野 それでパフォーマンスはしないんですか?

藤井 パフォーマンスとはちょっと趣旨が違う感じなので、すみません。

天野 じゃあ次回のストレンジシードはぜひ。

藤井 そうですね。来年はちょっと和風で考えてみたいと思います。

見所満載!大階段から見下ろすステージ

天野 改めて『スパイダーの糸の件』は静岡の地でやるとどんな作品になりそうですか?

藤井 この作品は色んな場所で上演させてもらってるんですけど、今まではお客さんと同じ目線の高さで見てもらうことしかなかったんです。
今回の市役所のステージはお客さんが階段に座って見下ろす形になるので、それを意識すると若干変わってくるところがあって、やる側としてはそこがポイントです。

天野 作品の進捗はどうですか?

藤井 この作品は何回かやっているから、皆さん結構(振り付けを)覚えているので新しいものを作って……ということではないんですけど「静岡行きたいぜ!」という気持ちが溢れているからなのかすごく先に進みたがるんですよ。
内容がどうという話ではないですけど、出演者の気持ちはすごく上がっています。
あとは小道具をいくつか使うので、それも面白い感じに見えたらいいなぁなんて思ってます。

天野 あの市役所前の大階段のステージは大通りに面しているのもあって、お客さんが沢山来るんですよ。歩いてる途中で「何やってんの?」ってそのまま階段に座って見ていただけるステージなので、皆さんの演技をそこで見れるのが楽しみです!

TACT(TAkasaki Community Theater)
TACTは群馬県高崎市を拠点にNPO法人バレエノアが運営する、60歳以上のアクティブなシニアのパフォーミングアーツグループ。2018年に公募により結成。超高齢社会の日本で、“クリエイティブエイジング”(創造的に歳をとること)として活動することを目標に、「どんなことでも、どんな場所でも面白がってやってみよう!」というスタイルでメンバーの個性を生かしてアートに取り組んでいる。また、多世代や他の地域の方々とアートを通して交流したいと思っている。
これまで中之条ビエンナーレ2021、から研ダンスフェスvol.5(仙台)などに参加。劇場に限らず、屋外やオープンスペースでパフォーマンスを行っている。
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ストレンジシード静岡2023
『スパイダーの糸の件』
TACT (TAkasaki Community Theater)

日程:2023年
5月4日(木・祝)15:00
5月5日(金・祝)15:00
5月6日(土)13:00
会場:市役所エリア[大階段]

ファシリテーター:藤井咲恵
出演:上和田ひろ子/林田きみゑ/串田江津子/酒井文江/箱田みどり/白井千早/中村皇子/瀬山勇三/吉井一仁/深澤成香
アシスタント:中村恵莉
芸術監督:瀬山紀子

詳細はこちら
https://strangeseed.info/

インタビュー・編集:天野(わたげ隊)、小野あすか
記録・テキスト:くみちゃん(わたげ隊)
ストレンジシード静岡 事務局:山口良太、草野冴月

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