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「明日私でもできるわ」垣根の低さ、軽やかさを持つストリートシアターを目指して お寿司インタビュー

ストレンジシード静岡のサポートスタッフ、その名も「わたげ隊」。ストレンジシードってどんなフェス? どんなアーティストが出るの? ということを伝えるべく、地元・静岡を中心に活動するわたげ隊が出演アーティストにインタビューする企画。お寿司より南野詩恵さんが登場です。

わたげ隊がゆく!
ストレンジシード静岡2023 アーティストインタビュー
ゲスト:南野詩恵
聞き手:ハボ、リョウゴ(わたげ隊)

ハボ まずは団体名の由来と、簡単な団体紹介をお願いします。

南野 舞台芸術団体・お寿司の南野詩恵と申します。作・演出・衣装を担当しています。キャリアのスタートは衣装作家で、色々な団体に衣装として参加していたのですが、クレジットがつかなかった事などを経て「これは私、そしてこの座組が作った(作品だ)」と発表するには自分でゼロから作らねば、と一念発起して2016年に作・演出を始めました。『病気』と言うタイトルが処女作です。

今食べるぞ!今やるぞ!

南野 お寿司は私が産後に立ち上げた団体なんです。妊娠中に食べたくて食べたくて食べられなかったものがお寿司です。ナマモノだからです。やりたくてもやりたくてもできなかったことと、食べたくても食べたくても食べられなかったものを、じゃあ今まさに食べるぞ!今まさにやるぞ!ってことと、お寿司ってすごくおめでたい言葉で〈言祝ぐ〉言葉で祝う、という寿の入ったお寿司、という団体名になりました。

ハボ なるほど。やっぱりお寿司がお好きなんですね。ちなみに、好きな寿司ネタは何ですか?

南野 お寿司はどれも好きなんですが、中でも白身が好きで、特に味付け済みのものが好きです。板前さんが目の前で握って、お塩とかこだわりの味付けをしてくださって、「はいもうこのまま食べてください」って出してくださる白身が好きです。

ハボ 食べる側が余計なことしない完成品が良いと。

南野 これで、このまま味わえばいい!っていうのが好きです

ハボ すごいピンポイント(笑)

南野 お、す、しという語感も好きで。思いついたときはこれだ!と思ったんですけど、郵便局とかで領収書の宛名に「お寿司」と書いてもらう時に「お寿司屋さんされてるんですか?」みたいなことを言われちゃって。説明が困難で、もうこの人にはきっと会わないだろうなって思ったときは「はいっ!」て言っちゃいます(笑)

南野詩恵さん

「生地を媒介とした外からのアプローチ」とは?

ハボ プロフィールを拝見すると「生地と文字を媒体として、演者の内外からアプローチを試みる」と書いていらっしゃいますが、どんなアプローチでしょうか?

南野 (私が作る衣装は)“動きにくさ”みたいなものが生まれたりする衣装もあって。身体が動きやすい状態ではいつもの身体なんですけど、衣装が身体の動きに制約を加えると、新たな身体になる可能性があるんです。紙で作った衣装やお面とかで、衣装が特殊な状況に 「連れて行く」 ことがありまして。
身体的な状態も、精神的な状態も普通の服を着ている時からは少しずれた場所にいて、そこでパフォーマンスをするっていう…そういった外から足されるアプローチみたいなものもクリエーションの中で生まれる、という視点があります。

リョウゴ ひとつ聞いてもいいですか?衣装を作るのにはどのくらい時間がかかるんでしょうか。今回のものは、もうざっくりでも出来ているんでしょうか。

南野 型紙のパターンと、これぐらいのボリューム感にするっていうのは決まってます。

リョウゴ ラフ画みたいなものはあるんですか?

南野 ラフ画はあるんですけど、今回の衣装は自分で着るので、作ってるうちにザクザクって(ハサミで切るジェスチャー)いっちゃっても大丈夫なんですよね。なので、最後どうなるかっていうのはまだ見えない状態です。
ただ、ストレンジシードのテーマカラーは黄色なので、黄色い怪獣にしようと思って。それと硬い生地を使って作ろうと思ってたんですけど、(5月の静岡の気候は)ちょっと暑いですよって事務局の方から伺ったので、暑さ対策をどうしよう、って思ってます。

リョウゴ そのラフ画みたいなものは見れますか?

南野 オープンコールプログラムに応募する時にこんなイラストを提出したんですが、それになるかはわからない(笑)そんなめちゃめちゃに怪獣怪獣っぽくはないです。

オープンコールプログラム応募時に提出されたラフ画

リョウゴ 例えばお寿司のホームページに載ってる人っぽい感じの…?

南野 あれはシュモクザメです(笑)あの時はシュモクザメ、イカ、イソギンチャク、3つか4つくらいを並走して作りました。パターンパターン、裁断裁断、縫製縫製って一気にバーって作業しちゃったので、1個につきどれくらいかかったかは定かではないんですが、ボツが何個かあって、1ヶ月くらいヒイヒイいってやってました。

お寿司のウェブサイトに載っているシュモクザメ

ストリートシアターと言う「ひらかれ」

ハボ 今回の「怪獣回しし」への意気込みを伺えますか?

南野 そうですね。劇場はお客様の集中や熱が逃げないような仕組みになってて、舞台をやる側の人間にとって楽な仕組みになってる分、お客様には結構ストレスがかかって、自由を奪われている。今回はそういった制約のない広がりのある野外で作品に会っていただけるので、お客様とどういったパワーのやり取りがあるのかに興味が湧いています。
日常の景色の中に作品がポーンと現れるという事が一つの大きなポイントだと思います。「普通に道を歩いていて、歩みを止めて演劇や作品を見ることの豊かさ」みたいなことにどっぷりつかって、「今日見たやつくらいだったら明日私でもできるわ」って思えるような、そんな垣根の低さ、軽やかさが、お寿司のストリートシアターの魅力だと思っています。
お寿司は、選ばれし者のみの世界ではなくて、誰だって舞台に立とうと思えば立てばいいと、そうあって欲しいと思っています。野っ原でなにかを起こしてみるというアクションを、(舞台と客席の境目がない)フラットな場所で初めて見て、私にもできそう、じゃあやってみるからみんな1回見てて、という行為に流れていく、ストレンジシードはそんな嬉しい出会いの場になるのではないかと思っております。

ハボ 作品を受け取ったお客様の、次のアクションにまで繋がったら素敵ですね。

南野 これぐらいだったら自分にもできるわっていうところにいけるとすごく嬉しいなと思っています。お寿司は「作品を必要としている人」と作っていきたいので。この人はほんとに舞台を必要としている、舞台を必要として鑑賞したり表現したりしてバランスをとっている、と言う人と一緒に作品を作っています。

ハボ 事前アンケートでお聞きした「ストリートシアターってなんだ?」という質問へのお答えが「ひらかれ」という4文字でしたが、その意味合いを伺ってもよろしいですか?

南野 チェロ奏者の中川裕貴さんがKIPPU※の挨拶文に「今後もこのようなひらかれが行われることに期待します」と書いていらっしゃって、コロナ禍の色々な制約の中で開催されたKIPPUで「ひらかれ」という言葉が印象に残っていて。

※KIPPU…若手アーティストの発掘と育成を目的に、ロームシアター京都と京都芸術センターが協働して行っているU35創造支援プログラム

ストレンジシードからは、景色が目の前に広がっていくさまと、催しが開かれること、道が開かれる、一歩そこに入っていける、明るい場所、次の場所への動きが始まる、そういったいくつもの「扉が開く」イメージを受け取ったので「ひらかれ」だと感じています。
私自身も初めての野外で「劇場の扉を開いて外に出ていくぞ!」という決意、気合いでもあります。

ともだち何人、出来るかな

ハボ 今回、初めての野外、初めての静岡だからこそやりたいことって、何かおありでしょうか?

南野 お寿司は食べたいと思ってるんですよ。

ハボ それは外せないですね(笑)

南野 あと、調べたら登呂遺跡があると。登呂遺跡ってあの教科書で見てた登呂遺跡だよなと。あと怪しい少年少女博物館と、まぼろし博覧会と…。

草野 少年少女博物館と、まぼろし博覧会は伊豆なので遠いですね。車で3時間とか。

南野 そうなんだ、そしたら湖上の駅も遠いんですか?湖の上にある駅。

草野 大井川鐵道ですね。そこは車で1時間ほどでたどり着けるかと思います!

南野 あと、静岡にお友達できたらいいなと。

草野 是非(手を挙げる)

南野 ありがとうございます。会って、喋って、お茶して。

草野 お茶しましょう。私、実は演劇団体を運営している個人事業主なので。

南野 そうなんですね、お願いします。

ハボ お友達1号、できました!

草野 できました!(笑)

ハボ では、お時間的にそろそろ良い感じなので、インタビューはここで終了とさせていただきます。どうもありがとうございました

ストレンジシード静岡2023
『怪獣回しし』
お寿司


日程:2023年
5月4日(木・祝)10:30
5月5日(金・祝)10:30
5月6日(土)10:30

会場:駿府城公園エリア[芝生]

作・演出・衣装:南野詩恵
出演:南野詩恵/瀧口翔
共同研究・音響:瀧口翔

詳細はこちら
https://strangeseed.info/

インタビュー:ハボ、リョウゴ(わたげ隊)
記録:くみちゃん(わたげ隊)
テキスト:ハボ(わたげ隊)
編集:天野(わたげ隊)、小野あすか
ストレンジシード静岡 事務局:山口良太、草野冴月

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