見出し画像

オタク、シングルツインの上段ベッドに怯える。【サンライズ瀬戸・出雲】

2023年6月某日。なぜかわたしはJR三ノ宮駅にいた。まあその日は1日大阪で遊んでいたのだが、それなのになぜ寝台特急サンライズ号の切符を大阪駅からでなく、三ノ宮駅からにしたのかはよく覚えていない。少しでもサンライズに長く乗りたいけど、姫路まで戻るのは面倒くさいとか、そういった理由だったかもしれないが定かではない。

終電間際の「特急サンライズ出雲・瀬戸 東京行」という表示を見るだけでわくわくしてしまう人間です。

終電近くの混沌とする三ノ宮駅のホームの雰囲気に圧倒されつつも、面倒事に巻き込まれぬよう堂々と歩く。大阪行きの最終電車を見送った直後の0時11分、いよいよお待ちかねのサンライズエクスプレスが到着する。

三ノ宮駅ではサンライズの到着に合わせてホームドア(ロープ?)が開くところが印象的…


今回わたしが一晩を過ごす個室のタイプはB寝台・シングルツイン。仕事の休憩時間中、勢いに任せてe5489でサンライズの切符を取ったら、シングルではなくシングルツインの切符が取れていた。せっかくの機会だし、シングルツインに乗るのははじめてだから楽しもうと思い、特に払い戻し等はしなかった。
サンライズのシングルツインは、ひとりでもふたりでも利用できる個室となっている。車両のすみっこに位置している平屋状の1室に通常の寝台(ベッド)と補助ベッドがあり、2段ベッドのような構造となっている。
今回はわたしひとりで利用した。ひとりでシングルツインを利用するとき、まず浮かんでくる疑問点は、だいたい「下段のベッドに寝るか、上段の補助ベッドに寝るか」だろう。知らんけど。
どちらのベッドに寝るかは、わたしもとても迷った。物は試しで、まずは上段のベッドに登ってみることにした。

シングルツインの中はこんな感じ

手荷物を下段のベッドの下の空きスペースに置き、検札を済ませ、寝巻きに着替える。そして、まるではしごのような階段を登る。登った先には、秘密基地と言っても過言ではない空間が広がっていた。天井ギリギリまで広がる大きな窓に、自動でカーテンを開閉できるスイッチ、そして申し訳程度の荷物置きスペース。まあ大きい窓はサンライズの上段の個室を予約しておけば同じように楽しめるのだが、カーテンを開閉するスイッチや荷物置きは単なるシングルの部屋には無いものなので、とても感動した。さらに驚くことに、このカーテン開閉のスイッチは下段のベッドにもついているのだ。はじめは「下段にスイッチは要らなくね?」って思っていたが、この後わたしは下段ベッドのスイッチに感謝することになる(予告)。

シングルツインの下段。左端にちょっと写っている段差が階段です。


照明を消して、上段のベッドに寝っ転がってみた。するとあらびっくり。寝転びながら外の景色が楽しめるのだ。終電が過ぎた近畿地方の景色から、ちょっとの静寂と1日が終わった余韻を感じた。
京都駅を通過するところを見届けてから、いよいよひと眠りしようと目を閉じた。ここで、あることにわたしは気づいてしまった。

これ、寝返りを打ってうっかりベッドから落ちてしまうのではないか???

シングルツインの上段ベッドは、写真を見てもらえればわかるのだが、転落防止の柵はない。申し訳程度のベルトが2本分吊り下がっているだけである。別にわたしは寝相がひどい人間ではないのだが、寝ている間に寝返りをよく打つこともあり、急に心配になってきた。……いや、今まで自宅やホテルのベッドで寝ていて落ちたことはないんだけど、サンライズのシングルツインのベッドは当然自宅やホテルのベッドよりも狭いベッドなので、やはり心配ではある。今までシングルツインの上段ベッドから転落した話なんて聞いたことがないからめったにないとは思うが、心配は消えない。
もし「サンライズエクスプレスの寝台から乗客が転落してケガ」っていうニュースが出ることになったら嫌である。それで電車が遅れたら申し訳ないし、自分のせいでサンライズが廃s……なんてことになるのは勘弁してほしい。
……というわけで、わたしはおとなしく下段のベッドで寝ることにした。うっかり転落する心配がないからか、京都駅を通過したあたりですっかり眠りについてしまった。

翌朝、熱海駅に到着したところで目が覚めた。なんか前回乗ったときも熱海駅で目が覚めたな……。別に目覚まし時計も設定していないんだけど。
上りのサンライズ号の醍醐味といえば、早朝に眺める東海道本線の景色だと思っている人間なので、乗り物酔い防止も兼ねて軽食を食べながら、車窓からの景色を眺めることにした。せっかくなので、上段のベッドに登って大きな窓から景色を眺めた。夏なのでもう日の出の時間はとうに過ぎてしまったけれど、熱海から小田原を過ぎるあたりの海沿いの景色は、いつ見ても素敵だなと思う。通勤電車の車両からの景色とはまた違うように見えるのは、サンライズエクスプレスの魔法にかかっているからだろうか。

サンライズの大きな窓から眺める景色がすきです。(窓の脇に並べてある缶の中身はビールではなくウーロン茶です。笑)


前回、上りのサンライズに乗ったときは電車が遅延していたが、今回は定刻どおりに東海道本線を縦断していた。神奈川県の都市部に入る頃に、都心へ向かう電車を待つサラリーマンが並ぶホームを横目に飛ばしていく特急列車はやはり良い。なぜならわたしは今日、有給休暇を取っているからだ。

サンライズ瀬戸・出雲号は、定刻どおり東京駅に到着した。東京駅で降車したあと、車両の行先表示幕が「回送」に切り替わっているところを見ると、いつも旅が終わってしまったと感じてしまう。

埼玉までの帰路に着く前に駅を出て、わたしは駅周辺にあるカフェまでモーニングを嗜みに向かった。朝ごはんを食べて東京駅まで戻るときに、それぞれの職場に向かうサラリーマンたちの雑踏に巻き込まれそうになった。都心で働く人は毎日満員電車に乗って、あんな人混みの中を歩いていくのか……と思った田舎者であった。

(※プライバシー保護の観点から写真の一部を加工しています)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?