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事業戦略と知財

前回の話の中で、特許などの法的手段の支援を受けないと模倣耐性が保てない戦略を、「弱い戦略」と呼んだ。また、特許などの法的手段の助けを借りなくても他社による模倣が困難で、模倣耐性が高い戦略を、「強い戦略」と呼んだ。

スマイルカーブとの関係

一般に、「商品戦略」と呼ばれるものは、「弱い戦略」であることが多い。「商品戦略」とは、商品の仕様を調整することによって特長を出そうとする戦略である。それは、家電製品のような、スマイルカーブの底にある、部品の選定と組合せ方を主な競争軸としたものだ。

一方、「事業戦略」と呼ばれるものは、「強い戦略」になりやすい。「事業戦略」とは、経営資源の運用方法で特長を出そうとする戦略である。それは、スマイルカーブを構成するバリューチェーン(事業プロセス)そのものを変容させることを主な競争軸としている。

出典:「スマイルカーブ」マーケティングWiki

ビジネス・モデル特許について

この、「バリューチェーンそのものの特殊な形」を特許権で守る方法は限られている。例えば、前回紹介した「アクティビティ・システム」を特許で守ろうとしたらどうなるのか?
この「アクティビティ・システム」を事業収益構造という視点で組みなおしたものを、「ビジネス・モデル」と呼んでいる。「ビジネス・モデル特許」というものがあるが、結局この「ビジネス・モデル特許」によって守ろうとしているのは、アクティビティ・システムである、とも言える。

ただし、アクティビティ・システム自体は、特許が対象とする「技術思想」にとどまらない、様々な要件の集合体であるため、アクティビティ・システム全体を特許で守り固めることなどできないだろう。
また、システム構成のどこが特許の対象かどうか、というだけでなく、特許の対象となっている箇所(例えば、使われているコンピュータ・システムの特長的な動作構造)に絞ってみたとしても、アクティビティ・システムは、多くの技術やナレッジの集合体として成り立っている(しかも、それらの技術やナレッジの大半は、既存の、または他社の技術やナレッジの流用だったりする)ため、ほとんどの場合、これを自社の特許だけで固めるようなことは、誰にもできないことになる。

アクティビティ・システムは、ひとたび構築されると模倣は困難である一方、これに関係する特許があったとして、それはきっと、自社と他社の混成にならざるを得ない、ということである。この状態で一体何が起きるのかを考えてみよう。

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