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「必須特許」について

ChatGPTに聞いてみた

「必須特許」をWebで調べると、AIに尋ねようがGoogle検索しようが、いずれにしても「標準必須特許」についての解説が挙がってくる。端的に言うと「必須特許とは標準必須特許のことである」と言うのが答えになる。

標準必須特許とは

「標準必須特許(Standard Essential Patent)」とは、標準規格と照らしあわせてその必須性が担保されており、なおかつ、その標準規格の契約に掲げられている不争条項によって有効性を確保することで、非侵害や無効の抗弁から守られている特許である。つまり、「標準必須特許」は標準規格なしには必須特許として成り立たず、標準規格団体に加盟せず、標準規格を採用・実施しないものにとっては、無力な特許ともなり得る。

「必須特許」の正しい定義

私は「必須特許」をもっと広義に捉えている数少ない者の一人なので、「必須特許とは標準必須特許のことである」という答えには全く同意できない。標準規格とは関係ない、しかし、「ある製品を生産する際に、不可避的に実施しなくてはならない特許」(=非侵害や無効の抗弁が通用しない特許)というものがある、と考えているからである。そういう特許ならば、FRAND条件での許諾を求められることもなく、差止め請求権もある。この「ある製品を生産する際に、不可避的に実施しなくてはならない特許」と言う定義は鮫島先生の定義だが、同様の論説を述べたものは他に見当たらず、今のところ、鮫島先生の一連の論文しか知らない。「必須特許」という言葉を明らかに「標準必須特許」以外の意味で使っている人は他にもいるが、明確に定義している人はほとんどいないのだ。

間違った定義が招く悲劇

逆に問いたい。「標準必須特許」以外に「必須特許」というものがないというのならば、標準規格化されたもの以外には、「不可避的に実施しなくてはならない特許」は存在しないのか?
この問いにYesと答えるのは、特許の持つ効力を全面否定することに等しい。なぜならば、その場合、第三者が「必須特許」を実施する際には、必ずFRAND条件で実施許諾を受けられる(最近そうでもなくなってきて、全く混乱状態だが、スキームとしてはFRANDで誰でも実施許諾を受けられることになっている)からである。したがって、非侵害や無効の抗弁を許さずに、第三者を差し止めることができる特許は存在しないことになる。
また、「必須特許」以外の「普通の特許」は、設計回避できるので非侵害であるか、または何らかの瑕疵があって権利無効であるか、の何れかになる。
こんな定義で知財活動をすれば、「標準必須特許」をたくさん取ってライセンス収入を稼ぐような戦略しか思いつかないだろう(それはそれで大変な戦略ではあるが)。そして、技術はことごとく低額で実施許諾されていくから、他社の参入を防ぐことはできず、「特許料収入はあっても事業は負ける」と言う無様な結果になるのだ。
私は、標準必須特許以外の必須特許があり、その必須特許には「自社だけが発明を実施できる独占状態を実現する独占力」と「第三者の実施を止めることができる排他力」があり、基本的に権利者はこれを自由に行使できると考えている。そして、「独占力」または「排他力」が発現されるには、実は単独の特許権が持つ効力以外にある条件が必要だと考えている。

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