見出し画像

その商品が強いのは商品戦略のせいか?

ここまで、アクティビティ・システムを題材に独創的な事業構造を備えた企業が持つ強固な模倣耐性と、その結果起きるかもしれない知財上のリスクについて考えてきた。

強い「商品戦略」は本当にない?

アクティビティ・システムに限らず、組織の持つ特性が強さの基盤となっているビジネスは大抵、模倣困難である。組織能力が強さを持つほどに差別化されるためには、その構成員のスキルはもとより、組織文化や慣習に至るまで、その差別化要因に最適化されなければならないからだ。
「先端素材の技術領域では、後発企業はなかなか先行者に追いつけない」という話もした。先端素材は「商品」のひとつかもしれないが、その模倣耐性は、商材であるそれら素材の持つ仕様ではなく、それを製造する企業の組織能力が持つ模倣耐性によって、競争優位が保たれている。先端素材の競争力は、商品の強みというよりも、組織能力の強み、すなわち、事業戦略上の強みが発揮された「結果」にほかならない。したがって、純粋に商品の仕様=商品戦略が競争の的になっているもの(家電製品のような)で、模倣耐性を持つものはないのではないか、というのが私の持つ仮説である。

逆スマイルカーブ

家電製品のような、部品の選定と組合せ方を主な競争軸としているようなものは、スマイルカーブの底にある、最も儲からないビジネスだ、と言われている。しかし、2000年前後までの日本の家電製品は強かった。競争力もあり、他国にはなかなかマネのできない商材だったと言える。当時の日本企業の認識では、バリューチェーンの中で最も付加価値を生み出しているのは、中間工程の「製造・組立」だと思われていたのである。そこでは「すり合わせ」という匠の技が効いており、組織能力が持つ模倣耐性が働いていたと思われる。付加価値のカーブはスマイル型ではなく、逆スマイル型だった。
模倣耐性が強いのはどこかといえば、ここでも、組織能力が持つ特性に依存しているところ、すなわち、事業戦略によるものだということが裏付けられている。

特許による模倣対策が必要なところ

したがって、特許による模倣対策が必要なところは、やはり「商品戦略」のような弱い戦略で競争している箇所だと言えるだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?