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2023年1月26日 マルチーズロック、南青山激情。

昨年5月にリリースしたアルバム「人類館」を携えてのマルチーズロックの東京公演。コロナ前のピッタリ4年半前、2018年7月26日以来の、月見ル君想フ。あの時は、遠藤ミチロウさん最後のバンドTHE ENDとの胸熱な対バンだった。

THE END (2018年7月26日@月見ル君想フ)

今夜はゲストに、多田葉子さん(Sax,Clarinet)、渡辺隆雄さん(Trumpet)、向島ゆり子さん(Violin)という豪華版。多田さんはすでに東京での準メンバーという感じだが、渡辺さんと向島さんは、栄町の"生活の柄"で、もりと(Vo & G)に口説かれたクチだ。ホーン2本とヴァイオリンが加わって、サウンド的には迫力ある”マルチーズロック・ロッケストラ"バージョンといった感じ。バンド自体の状態もよく、腕利き3人が加わったことで、すでにリハーサルから凄かった。

本編13曲中10曲が、新作「人類観」からという構成。リリースツアーということを加味しても、かなり強気のセットリストだ。しかし、もりとのコンディションもバンドの状態も非常に良く、一つひとつの楽曲がとても鮮やかな印象とともに響いてきた。
アルバムのリリースに先立って話をした時、もりとはこのアルバムのことを”POP"だと強調していた。その意味は、いわゆるPOPSとは違って、時代を反映した大衆的なものという意味だと解釈した。さまざまな想いや感情、メッセージが日常と交わるような演奏を聴いていると、改めてマルチーズロック流の”POP"を実感できた。

https://youtu.be/Gto-E21lMnM


以下のテキストは、「人類観」リリースの際にフライヤー用に書いた楽曲の解説文。

オープニングを飾る「123」(M1)は、3分足らずの小品にも関わらず、かなり激辛な沖縄の現実をマルチーズロック風に表現した。
「オモテ・ナ・シ」(M2)は、サウンド的にマルチーズ節が炸裂した1曲。“オモテ・ナ・シ”というのは、いわゆるホスピタリティのことではなく、“表がなく、裏ばかり”と深読みしたくなるが、果たして正解は? 
オルタナ・インディーロックの真骨頂とでもいった「野性のサウンドウェーヴ」(M3)には、ボブ・ディランへのリスペクトがとても自然に織り込まれている。個人的には“見張り塔からずっと”をイメージした。
「ヒーローズ」(M4)は、世界からなくなることのない、さまざまな誤解や行き違い、そこから生じる争いが何も生みださないことを教えてくれる。
命のお祝いを歌った「サビラーサビラー」(M5)は、途中に数え歌を挟んだ複雑な構成でどこかファンタジーのようにも響いてくる。
「おばぁの子守唄」(M6)は、世代を越えた平和への祈りだ。未来へのビジョンを描くためには、まずは過去の歴史からの学びがなくてはならない。アナウンサーの多喜ひろみさんの短いナレーションが、曲のもつメッセージに深みを与えている。
「同じ月」(M7)は、アルバム前半のクライマックスとも言える曲。あまりに壮大すぎる美しいラブソングの背景には、誰にも避けて通れない死が透けて見える。そして、遠藤ミチロウへのオマージュ。
夢と現実の狭間の浮遊感を風船に見立て抑制の効いたフォークロック・サウンドで聴かせてくれる「バルーン」(M8)は、確実にライブ映えする作品。
8本足の蜘蛛と蛸をモチーフにした「スパイダーとオクトパス」(M9)では、世の中の矛盾や不条理が歌われる。
「ラブコール」(M10)は「バルーン」と曲調はまるで異なるものの、“風船”が象徴的なメタファーとして登場する。
「人類観」(M11)で歌われるのは人々の多様性。人類が目指すべきビジョンを歌う背景には、”人類館事件”のレイヤーも当然のように織り込まれている。
本編を締めくくる「ダンランラン」(M12)のヴォーカルは、糸満あかねが担当。アルバム全編に漂う緊張感を一気に解きほぐすような優しさで包み込む。


2023年1月26日のセットリスト


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