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新聞を読む子は偉い?

 私は小学校低学年という周囲の同級生と比べても早い時期から新聞を読み始め、以来長い期間に渡って新聞には親しんできた。そこには、新聞を毎日朝と夜に読み込む陸上自衛官である父からの強い影響があったが、強制をされたことは一度も無く、事実として私の2歳下の弟は新聞を読んでいない。小学生の頃、担任の先生に毎朝の習慣として新聞を読んでいることを話すと、決まって「新聞なんて読んでて偉いね」と返ってきた。本当に新聞を読んでいる子は偉いのか。当時の私には全く見当がつかなかった。今回この文章を通して、長年抱いてきた疑問を自分なりに解釈してみた。

 私は新聞社・新聞記者の仕事を一般市民に代わって彼らの興味や関心のある事例を取材するもの、気持ちを伝えたいという意思はありながらも伝え方が分からない社会の人々に代わって紙面やネットを通じて読者に対して情報発信するものと捉えている。同じような仕事としてはテレビ(のニュース)や雑多なWebメディアがあり、特に最近Webメディアの台頭は著しく、目を見張るものがある。その一方で近年、新聞離れが叫ばれて久しく、業界を取り巻く状況は必ずしも芳しくない。

 しかし、私は新聞がニュースを伝えるプロとして、テレビやWebメディアを始めとした他媒体の追随を今後も許さないだろうと考えている。その理由は圧倒的な取材能力にある。新聞社(特に全国紙)は全国津々浦々に取材拠点がある一方で、テレビ局は系列局に頼ったり、あるいは系列局がない空白地域がある(NHKを除く)。Webメディアにそこまでの取材能力があるかは言うまでもない。またブロック紙や県紙もその地域で最も取材に人員を割くことが出来るため、信頼できるメディアであろう。ニュースを正確に詳細に知るには、これまでもこれからも新聞が最適なのだ。

 またこのようなデータもある。新聞を読んでいる子はそうでない子と比べて、読解力が高いというものだ(小学生を対象にした調査で新聞を読んでいる子のグループの方が、国語のテストの平均点が高かった)。恐らく、これは国語に限った話ではない。例えば、今年度いずれの教科も平均点が低く、非難囂々だった共通テストでは、数学や理科といった理系科目でも短い時間の中で正しく問題文を読み解く読解力が求められていて、これはセンター試験と呼ばれていた時代よりも、その傾向は顕著だ。

 その点、文章だけでなく地図やグラフ、図や写真も掲載される新聞は、他メディアと比べて一覧性と解説性に優れており、読解力を伸ばす教材として適していると言える。確かに、私の体感としても新聞をしっかり読み込んでいれば、小中高の公民分野は一般常識であり朝飯前だと思う。ただ、受験期から読み始めるのでは、その波及効果はあまり見込めず、やはり小さな頃から文章に補足資料がある新聞を読み慣れている子のアドバンテージは大きそうだ。

 以上のような理由があるからこそ、私は多くの子に小さな頃から新聞に目を通す習慣を身につけてほしいと願う。ただ私の父と同様に、私もやはりそれを強制したくはない。もし将来、その一言で自分から進んで、好き好んで、新聞を継続的に読む意欲が向上するのであれば、私の子やその友人が新聞を読んでいる時、つい私はこう口走ってしまうかもしれない。「新聞なんて読んでて偉いね」と。

ざき

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