解放と神学の微風その3 〜ブラジル フォルダレーザ〜


フォルタレーザでホームステイ先の街角や、海洋民族の先住民トレメンべ族の家や、子どもの絵を描いたりして数日過ごしていたが、日本から来た友人も帰国するので、そこから離れてさらに北上することにした。ブラジルの南はむしろヨーロッパ風で、北の方が多くの人がイメージするブラジル的なイメージに近い。なのでさらにブラジル的な所、ブラジルの中枢に向かっていくことになる。あくまでイメージの問題だが。
彼女の紹介でさらにフォルタレーザの奥に位置する山岳地域の先住民族のプロジェクトを訪ねることにした。山岳地帯に向かうバスに揺られながらようやく目的地に着いた。目的地に着いてバスを降りると迎えに来ているはずの人が来ていなかった。途方に暮れていると、二人の天使のような美しい可愛らしい先住民っぽい女の子が(あくまでイメージでそう思っただけであるが)、話しかけてきて、どこに行きたいか聞いてくれた。場所を告げると、そこは知っているところだから一緒に行こうと言う話になった。山道を三人で花を積んだり、木の実や果物を積んで食べたりしながら歩いて向かった。目的地は意外に遠かった。彼女達に申し訳ないと思いながら、その気持ちを伝えると、彼女達も楽しくしていたようで、ちょっと安心してこちらも楽しむことにした。彼女達は「フェリシダージ ヴォーセ コンミーゴ」という歌を繰り返し歌っていた。「幸せだわ、あなたが私と一緒にいるなんて」と言う意味の歌詞だ。そして「インテジー?」と尋ねてきた。「わかる?」と言う意味だ。「シン」「わかる」と答えると「ノッサ セニョーラ インテンデウ」と言った。「あらやだ!わかったんだ」と言う意味だ。
そうこうしているうちに目的地に辿り着いた。そこは山岳地帯の先住民の子どもの識字教育と手仕事をしているところで、昼間は子ども達が集まっていた。腕が片方ない、そこの全体的な運営を担っている高齢の男がで迎えてくれた。彼はどうやら一つ前のバス停で待っていたようで、心配していたとのことだった。その日はもう遅かったので簡単に食事を済ませて眠りに着いた。次の日、案内してくれた女の子達二人が訪ねて来てくれた。彼女達は普段違う学校で勉強しているとのことだった。
そこのプロジェクトを運営している夫婦二人に日本人の友人からのメッセージを伝えた。そしてしばらくそこに居て絵を描きながら、湧き水をどうやって引いてきたら良いか悩んでいたようなので、湧き水を引いてくる設計図のようなものも描いたりしていた。しばらくして、その半ば設計図のような絵が完成すると、アマゾンの中心マナウスに川を船で向かうために、一旦船の発着地があるベレンにまたバスで向かった。
ベレンは夕陽で街中がオレンジに染まる美しい漁港の街だった。マンゴーの街路樹が有名で、ゴムでも栄えた商業都市である。そして日本人の入植者も多く、元々の先住民も日本人に近い様相で、地球の裏側にある日本のパラレルワールドに来たのかと錯覚するほどであった。
ベレンでは、これから一週間7泊8日のジャングルの中心マナウスまでの船旅の準備をした。特に船上でハンモックを吊るして寝るので、そのハンモックを念入りに選んだ。


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