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積乱雲直下でも平常心

どす黒い雲の真下に行くのは正直怖いです。でも、それを恐れていたらストームチェイサーは務まりません。普通なら逃げるような状況に自ら飛び込んでいくのですから、できる限り平常心を保ち、冷静に現状を判断することが事故なく無事に帰ることに繋がります。

平成27年、関東・東北豪雨の線状降水帯(翌日に鬼怒川氾濫)

最も怖いのはなんですか?そんな質問を受けたことがあります。落雷、雹、突風、どれも怖いですが、最も怖いのは道路の冠水です。まだまだ駆け出しの頃、雨の中で車中から撮影していた時のこと、夢中になるあまり周囲が冠水したことに気付かなかったことがあります。一瞬焦りましたが、まずはこの場を離れないといけないと思い、辺りを見回すと道路沿いに電柱が立っていることを思い出しました。路肩に脱輪しないように、歩くくらいの速度で道の真ん中をそろそろと走り、何とか脱出できました。

令和元年台風19号、冠水した遊水地内に取り残された車(乗っていた人は無事)

普段から車を運転される方なら、5cm程度の冠水は気にせず突破してしまうと思います。実際、私もそうです。これが10cmを超えると制動にも影響が出はじめ、更に水かさが増えて底に水が掛かるようになると真っ直ぐ走ることすら難しくなります。更に、泥水は車の寿命を縮めるよなトラブルも発生します。電装品、特にセンサー類の故障、ブレーキキャリパーピストンの固着、足回りのブッシュ類やブーツ類の破損も発生します。冠水した道路は迂回するのが賢明です。

私の場合は基本的に単独行動ですので、被写体に集中してしまうと視野が狭くなり、周りの状況がわからなくなります。上記のようなことがあって以来、安全面には特に気を使うようになりました。それ以前は、積乱雲など恐れるに足らん!とばかりに、雲の真下に突撃していたものです。やはり積乱雲は怖いものだという前提で接しなければいけない被写体です。どんなに頑張っても、自然には勝てないのです。

ガストフロント通過中、雷雨が迫る(栃木県栃木市)

そんな怖い被写体とうまく付き合うには、相手の出方を知り、現状を正確に判断することが必要です。積乱雲直下でも平常心を保つ、一朝一夕に身に付くことはありません。アマチュア時代も含め、10数年積乱雲を追い続ける中で自然に身に付いたスキルです。状況を正しく判断できれば、引き際もわかるようになります。積乱雲が最も力を放出するのは、ピークから衰退期に入るタイミングです。それまで溜め込んだ力を一気に放出するので、突風や雹もそのタイミングで発生することが多くなります。

そのタイミングを知る方法は、ズバリ風向きの急変です。積乱雲の発達時には雲に向かって風が吹き込みますが、ピークを過ぎると積乱雲が冷気を吹き始めるため、それまで背後から吹いていた生暖かい風が正面からの冷たい風に変わり、やがて大粒の雨や雹を伴って突風が吹いてきます。ここが引き際、風向きが変わって直後に移動すれば、ギリギリ雨に濡れることなく、突風の直撃も避けられます。

こうして現場で身につけたスキルは、屋外活動をする方々にも役に立つと思いますので、参考にしていただけると嬉しいです。

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