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関東大雷雨を追う

2022年6月2日から3日にかけて、東北から関東の広い範囲で雷雨になりました。2日には埼玉県北部や群馬県南部でピンポン玉大の雹が降り、大規模な雹害が発生しました。3日には上空の寒気が南下して、南関東でも雹が降るなど大荒れの天気になりました。

6月3日14時半のレーダー画像、出典気象庁HP

基本情報として、積乱雲から降る氷粒の直径5mm以下のものを霰(あられ)、5mm以上のものを雹(ひょう)と呼びます。日本で降る雹のサイズは1~2cmのものが多いですが、今回は5cm以上のものも確認されていて、落下時にはかなりの衝撃だと思われます。一方アメリカ中西部では5cm程度の雹は珍しくなく、夏みかん大の雹が降って住宅の屋根を破壊することも珍しくないそうです。以前、アメリカ取材をした時に同行したチェイサーは雹のスペシャリストでした。あちらでは雹のサイズまで予報されるため、実際に降った雹を計測して、予報との誤差を報告する活動をしていました。車には各種サイズのボールが積んであり、スケールに当てて雹と一緒に並べて撮影していました。当然ながら車のボディは凹凹です。

直径5mm以上のものを雹、5mm以下のものを霰と呼ぶ
雹で凹んだボンネット、モンタナ州で撮影

では2日の追跡からお話します。当日は午前中から東北地方で雷雨が発生していて、北関東でも夕方頃から積乱雲の発生が見られました。18時前に西の空に大きなかなとこ雲を確認、レーダーを確認すると雲の中心は群馬県の高崎から藤岡のあたりにあります。急ぎ西側が開けた場所に移動すると、かなとこの雲頂部分が自分の頭上を越えて東に広がっています。かなとこの下には乳房雲も見られ、これから来る大荒れの天気を予感させます。雲が近づいてくると前面にはロール雲、下部にはアーチ雲、後方には流入バンドが可視化した雲(ビーバーズテール)が見えます。雲の中心に向かって周囲の空気が集まっている様子が目に見えて分かります。

群馬、埼玉方面の積乱雲

そこから少し南下して雲の進行方向南東側に回り込みます。ここで雷の発生を確認、しばらくすると突然雲が南下して埼玉県南部方面に進んでしまいます。これは追っても間に合わないと判断して仕切り直します。すでに日没が迫り薄暗くなっていたため、群馬県の桐生から栃木県の足利付近で発達中の積乱雲にターゲットを変更します。ここからは雷狙いです。こちらの雲は20時30分頃をピークに衰退していきました。この日はここで撮影終了、急激な気温の低下と空腹で集中力が切れました。

桐生、足利方面の落雷

3日は前日よりも寒気が南下して、関東全域で雷雨が発生しました。この日は午前中から栃木県で雷雲が発達します。まずは栃木県の鹿沼から宇都宮付近にある雲を目指します。前日と違い、全体的に雲が多めで目当ての雲がなかなか見えません。見えた頃にはすでに衰退していて、いきなり仕切り直しです。風向きを考慮していちど活動の拠点である筑西市に戻ります。北西方向が見渡せる農道に駐車して雲の発達をひたすら待ちます。

栃木県南部で雷雲を捉えるもすでに衰退

いくつかの雄大雲がひとつになって、少しずつ大きな雲に成長していきます。待つこと80分、雷鳴が聞こえました。予感的中です。ここからの発達は早く、あっという間にアーチ雲を形成、頭上を通過すると大粒の雨が落ちてきます。数分後には雹が交じるようになり、雨が勢いを増しました。下降気流が強まるのは衰退している証拠です。積乱雲が衰退するときにはイタチの最後っ屁的に下降気流を吹き出し、ダウンバーストを発生させます。盛大に冷気を吹き始めると終わりの合図でもあるわけです。

待つこと80分、雄大雲から積乱雲に成長
アーチ雲直下で通過を見る

その後、新手の積乱雲が発生しましたが、南に進んでしまったため追跡は見送り、この日の撮影を終了しました。ここ数年はコロナの影響もあり自由に撮影して回れない状況でしたが、数年ぶりに制限なく撮影することが出来ました。今年のテーマである「ボリュームのある雲」を撮影することに成功したので、自分的には満足の行く2日間でした。追跡のシーズンはまだまだ序盤、始まったばかりです。

*今回の撮影機材は、スチルカメラ×2、アクションカム×1、スマホ×1、ドライブレコーダー×1でした。久々のフル装備です。




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