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体験企画:パン屋さんは中学生🥐

STORIAでは、子どもたちが生まれ持った可能性が輝く体験プログラムを行っています。

10月には本物のパン屋さんをお借りし、2人の中学生姉弟がパンの製造から販売までを担う『パン屋さんは中学生🥐』を行いました!

実は企画・準備・実行まで約1年をかけた体験企画になりました…!
そのストーリーを皆様にお届けいたします。
(約6,000字の長〜い物語です、お時間のあるときにゆっくりどうぞ💁‍♀️)

Kちゃんのやりたいことはなんだろう?

2022年10月
スタッフのまきちゃんがSTORIAに入ったばかりの時期です。
居場所に来ているKちゃんとHくんは中学生姉弟。
Hくんは居場所でスタッフと一緒に料理を作ることが楽しみのよう。
一方でKちゃんはどうかな…?🤔
居場所では本を読んだり、宿題をしたり。

STORIAでは、子どもたちが自分のやりたいことを「やりたい!」と言え、
そしてやりたいことを実現できる体験を得る体験企画を行なっています。
子どもたち自身の願い、やりたいことをまずは聞いてみよう、と考えました。

Kちゃんは本を読んだり、楽器を演奏したり、推しを応援するのも好きみたいです。
そのほかにも、どんなことができたら楽しいのか、聞いてみることにしました。

☺️「Kちゃんはなにをするのが好き?よかったら聞きたいな」とKちゃんに問いかけます。
😊「お菓子を家でよく作るよ!本当はパンも作りたいんだけど、家でも居場所でもお金と時間がかかるから難しそうで…」と教えてくれました。

お菓子を作るのとパンを作るのと似ているように見えますが、製造工程において「発酵」の時間がかかることが一番大きな違いです。
日々の居場所活動は夕方から夜までの数時間。
パンを作るにはそれ以上の時間が必要ですし、材料を準備するにもお金がかかります。

「パンを作りたいんだね、なるほど…」とやりたいことを聞くことはできましたが、さてどのように実現しようか…と頭を悩ませていたのでした。

居場所にはそもそもオーブンがなかったのですが、オーブンを購入しても居場所活動時間で作り上げるのは難しそうです。

それにせっかくの体験企画、子どもたちも「えーー!」と驚くくらいの体験をどうにか企画できないだろうか…🤔と悩むまきちゃんでした。

パン屋・羽生さんとの出会い

2022年12月
 12月はご寄付月間、クリスマスもあり、STORIAには本当に多くのご支援をいただきました。
 あらためまして、あたたかなお気持ちを寄せてくださり、心から感謝申し上げます🙌

 その中で、STORIAスタッフのお知り合いより、子どもたちに手作りお菓子の寄付をしたいとお申し出をいただきました。
 その方が、羽生さんでした。

オフィスまでいらしてくださった羽生さん

羽生さんは起業家で、ご自身でパンを作りながらパン屋さんを経営されています。

12月の忙しい時期にも関わらず、手作りのお菓子を一つ一つ丁寧にラッピングしたものを、オフィスまで届けてくださいました。

羽生さんは耳が聞こえないため、私たちとは筆談でお話をさせていただきました。
その中で「子どもたちと一緒にできることがあれば、ぜひ!」と羽生さんよりお話をいただき、
「あ、パン屋さんを一緒にさせてもらうことはできないだろうか…?」と頭の中でつながったのでした💡

パンを作るだけじゃなくて、売ってみない?

2023年1月
 羽生さんに「パンを作ってみたい子がいるんです!」とお話をさせていただいたところ、快くご協力のお返事をいただき、本当に心から感謝の気持ちでいっぱいでした…!😭
 お店の定休日の1日をお借りし、本物のパン屋さんでパン作りをさせていただけることとなったのです。

 もともとは3月の春休みにでも実施したいね、と話していたのですが、
 Kちゃんの学生生活の都合もあったりして、実際には8月実施で計画をスタートしたのでした。

2023年5月
 STORIAの体験企画は、子どもたち自身で企画をすることがメインですが、大人から逆提案することもあります。
子どもたちの視点を、ぐっと広げるためです。

「パンを作るだけじゃなくて、実際に販売もしてみるのはどう?」
代表の佐々木が企画書を読んだ後に提案してくれました。
確かに、実際のお店を借りて行うのですし、作ったものを誰かに受け取ってもらうことの喜びも感じてもらいたい。加えて、自分達で作って売る経験は、生きる力にもなるよね、という狙いです。

この頃には、Kちゃんだけでなく、Hくんもお菓子づくりにハマってきていたころ。
2人でパン作りをしてみたい!ということになった時期でした。

はじめは「売ってみるの…?🤔」とそこまで前向きではなかったようですが、準備を進めるうちに売上や費用のこと、お客さんにどうやったら価格にみあった価値が提供できるのか、真剣に考えるようになっていきました🔥

羽生さんとスタッフでも、打ち合わせでは作るだけでなく売ることまで実施したいことをお話しし、さらにはお店のレシピで作らせていただくことまでご快諾いただきました。

しかも、1日目:パン作りにTRY  2日目:パン作りと販売 と2日にわたってお店を貸していただくこととなり、子どもたちの気持ちに寄り添っていただき、本当にありがたい気持ちでいっぱいでした…!😭✨

開店に向けての準備!

2023年5月
8月オープンに向けて、あと3ヶ月。
決めることはたくさんあります。
・どんなパンを作りたいのか?
・売上と費用のバランスをどうしたいか?
・残った利益はなにに使いたいのか?

もともとパンを作りたい!と教えてくれたKちゃん、作りたいパンは本当にたくさんあるようです。
ですが、はじめは実現可能性を気にして、遠慮がちに教えてくれていたようだったので、
「できるかできないかは別にして、Kちゃんが作ってみたい!というパンをたくさん教えてほしいな」と伝えると、全部で12種類ものパンをあげてくれました。
(そしてどれも食感や味にこだわりがあり、本当にパンが好きなんだな、と感じられました✨)

Hくんの作りたいレシピともあわせ、さらにお店の販売時間も考慮して、
以下3種類のパンを作ってみることにしました。
・ベーコンアスパラエピ
・メロンパン
・スコーン

関わる人みんながあたたかい

今回はパンを作るだけではなく、売ることもセットで行います。
作るパンを決めたところで、実際にかかる食材費や、お店をお借りする場所代、そのほかかかる費用などを計算してみます。
「…羽生さんの人件費はどうするの?」とHくんからの質問。
実はスタッフもそこまで考えてはいなく、この質問に驚きました。

後日、羽生さんに「Hくんが、売り上げから羽生さんに人件費をお支払いしたいと話しています」と伝えると、笑顔で「いらないよ☺️」とジェスチャーで答えてくださいました…!
「今回はご厚意で協力していただけるため、人件費はいらないとのことだったよ」と伝えると、Hくんは、「人件費をお支払いできない代わりに、何か羽生さんにできることはないかな…」と真剣に考えていました。
人を思いやる気持ちにあふれているHくんを見て、スタッフはとてもあたたかい気持ちになりました。

どうやったらお客さんに喜んでもらえるかな?

さらに、パン屋さんオープンにかかる費用を計算していたときのこと。
パン1つ当たりの価格を上げなければ、黒字にすることが難しいと判明しました。
HくんもKちゃんも、お客さんのことを考えると価格は抑えたいが、赤字にはしたくない…と葛藤があり。

作ることのできるパンの数には限りがあり、どうしてもパンの価格は高めになってしまいます。
そこで、予算内でお客さんに喜んでもらえる方法はないかと検討を始めました。
「パンをご購入いただいたお客様全員に、手作りの何かをプレゼントするのはどうだろう?」の案が!

その後、なにをお渡ししたら喜んでいただけるのかを考える≪会議≫が開かれました。
ホワイトボードにたくさんの案を出し、話し合った結果、
・期間限定ボイスメッセージを届ける
・メッセージカードを渡す
・レシピ本を作りお渡しする
などのアイデアがあがりました。

たくさんの案を出すHくん!

検討した結果、こちらを実施することに!
・レシピ本のプレゼント
・メッセージカードをお渡し

レシピ本は、今まで居場所活動でHくんが作ってきたメニューのレシピで制作し、表紙から、内容、レイアウトまでHくんが考えたものです!
今までのHくんの居場所での頑張りや、奮闘した背景がつまったものとなり、完成したレシピ本を見て、とても満足げに微笑むHくんが印象的でした。

どれも美味しそうなレシピに、素敵なメッセージつき!

苦手だけど、丁寧にこだわりぬく

文字を書くことを苦手としているHくんですが、一生懸命気持ちを込めてアイテムを丁寧に制作していました。

メッセージカードは、メッセージ内容もHくんが考え、一つ一つ手書きで丁寧に書いたものです。
【ご来店ありがとうございます】
【いつもお疲れ様です】
【たまには頑張らない日をつくってみては】
と3種類のカードを用意しました。

パンを入れる紙袋も、1枚1枚丁寧に店名を記入し、
【いい日になりますように】とのメッセージも添えて…。

パンを売る際に使用するPOPの作成では、3種類丁寧に商品名を書いていました。

またパン屋さんオリジナルTシャツづくりでは、スタッフと一緒にパソコンでデザインを考え、【PannYasann Ha ChugaKusei】とロゴの入った、シンプルで素敵なTシャツが完成!
※ローマ字のどこを大文字にするかはHくんがこだわりぬいたポイント。

Hくんと羽生さん、はじめましてのクッキー

本番の日に向けて、Hくんとスタッフで羽生さんのお店にご挨拶に伺いました。
(この頃、Kちゃんは部活動などで多忙を極めており、なかなか居場所にも参加できずでした…)

その際、Hくんが前日に焼いたクッキーを持参し、羽生さんにお渡ししていました。
クッキーの入った袋には、
【こんにちは。今度パンを作らせていただくHです。
自分で作ったクッキーを羽生さんに食べてほしくて作りました。
お時間のない中すみませんが、クッキーの味と感想と改善点を教えていただけると嬉しいです】
と書いてあり、レシピも書かれていました。
初めは緊張していた様子のHくんでしたが、羽生さんにクッキーを受け取っていただけて、とても嬉しそうにしていました。

開催の延期と、大切にしたいこと

いよいよ8月の本番!という時期でしたが、ちょうど新型コロナウイルスが再度流行しはじめた時期。
本番の直前に体調不良などもあり、残念ながら8月の実施は見送りとなってしまいました。

延期後のオープン日をどうしようか?とKちゃん・Hくんと相談します。
実施するのならば秋休みや冬休み。
早めに開催したいけれど、秋休みだと平日だから集客が難しくなるのでは?
そうすると見込んだ利益で買おうとしていた調理器具も買えなくなっちゃうかな…
でも、冬休みまでこのモチベーションがもつかな…?
とたくさん悩んだ2人。

「2人は、このパン作りでなにを大切にしたいかな?
 たくさん売り上げること?それともなにか違うこと?」
スタッフは2人が【なにを大切にしたいか?】を問いかけます。

この体験企画は、子どもたち自身のやりたい!を形にすることを大切にしています。
すると2人は「挑戦する気持ち」を大切にしたいと教えてくれました。

秋休みの10月にオープンできないか、羽生さんに相談させていただき、またしてもご快諾いただけたのでした。
(羽生さんご自身もとてもお忙しい中、柔軟にご対応くださいましてありがとうございます!)

秋休みで時間がとれるのは、たった1日のみ。
計画では1日目:パン作りにTRY  2日目:パン作りと販売 でしたが、
今回はぶっつけ本番でパン作りと販売をすることに。

そのため、オープン前の居場所活動では、実際に販売するパンを試作し、準備をしていたのでした。

オープン当日

10月の火曜日。いよいよ本番の日です!
当日は8時集合だったのですが、楽しみすぎたHくんは30分も早く集合していたみたいです。

今回お借りしたお店(このお写真もお借りしました)
今回お借りしたお店(このお写真もお借りしました)

8時半からパン作り開始です!
初めは緊張しながらの作業で、羽生さんの真似をしながら生地をこねてみるものの、なかなか上手くいかず…。

大変だけど、とっても楽しそうな、いい笑顔のKちゃん!

羽生さんに丁寧にご指導いただき、徐々にコツをつかみ、素早く丁寧に生地をこねることができるようになりました!
スコーンの形成は、Hくんは四角に、Kちゃんは三角に。
それぞれの個性が表れている素敵なスコーンが完成しました。

Kちゃんが初めから「作りたい!」と言っていたエピの形成は、生地でベーコンとアスパラを包み、ハサミで切って形を整えるというやり方。
普段何気なく食べていたエピの形成の仕方に「まさか、パンの形成でハサミを使うとは思ってなかった」と、とても驚きつつも、スムーズに作業をしていたKちゃんでした。


メロンパンの形成では、菓子パン生地とクッキー生地を合わせる工程で苦戦をしていたようで…。
(ちなみに新人スタッフも苦戦するくらい、難しいのだと伺いました!)
羽生さんに丁寧に教えていただき、2人とも徐々に上達!
途中からは、とても上手に形成をしていました。

3種類のパンを30個づつ作ったため、全部で90個ものパンを作った2人!
朝8:30−12:00までずっとパンを作り続けたのでした。

そしていよいよ13時からは販売開始!
(Kちゃんは学校の用事もあり、Hくんが担当しました。)
もちろんHくんにとっては初めての接客です!
戸惑いながらも、丁寧にパンを包み、両手で渡していました。

その時にはレシピ本・アンケート・メッセージカードも一緒にお渡しし、
「私が作ったレシピ本になります。よろしければ、作ってみてください」とお客様に優しく伝えていました。

当日はSTORIAのサポーターさん、ボランティアさん、スタッフとたくさんの方にご来店いただき、
無事に30名分のパンは完売したのでした!

スタッフまきちゃんは、最初にKちゃんの「パンを作りたい!」の願いを聞きつつ、その後は居場所スタッフのみなさんにバトンタッチをしていたため、無事にオープンできたことが本当に嬉しく、実際にパンを食べて、その美味しさと優しさに本当に心があたたかくなりました…!
一緒に作り上げてくれて、本当にありがとう😊

みなさまに書いていただいたアンケートを翌日2人にお届けしました。
Hくんはしみじみと「お店をやるって大変だね」と話していましたが、
今回の体験はKちゃん・Hくんの自信につながったように感じた居場所スタッフでした。

快くお店を貸してくださり、検討から当日の制作販売まで親身に寄り添ってくださった羽生さん。
2人の願いに丁寧に寄り添い、一緒に歩んでくれた居場所スタッフのみなさん。
当日お忙しい中、時間を作ってお店に来てくださったサポーターさん、ボランティアさん、スタッフのみなさん。
みなさまのおかげで、子どもたちの「やりたい!」を実現することができました。
あらためて、心より感謝申し上げます!!✨

みんなでニコニコ!やりたい!をやりきった2人でした。

よろしければサポートお願いします!いただいたサポート費は子どもたちの支援に大切に使わせていただきます!