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世界、諦め

 あまりにも若い時に世界が見えてしまったので、その後は騙し騙し余生を送ることになったようなのが稀にいる。
 こういうのは、いろいろなことをやって、割とどれも上手くこなすのだが、どれも本格的にならない。そして歳を取って、どれも諦める。だが、それは仕方のないことでもある。余生なのだから、何にしても、暇つぶしなのだ。親や世間への手前、何事かはやっているぞと見せているのでもある。
 しかし、実の所、諦める時が来るのを待っていたとさえ言えるのだ。彼は、あの若い時に既に夭折していて、肉体的な衰えがそれに追い付くのを待ち続けていたのだから。

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