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おんがくこうろんのレイハラカミ

NHKで星野源の「おんがくこうろん」という番組があるんだけど、今回はレイハラカミの特集だった。地上波でレイハラカミなんて嬉しすぎる。しかし、ふだんテレビのチャンネルは妻に一括管理されているので、「ちょっとごめん」とか言いながらチャンネルを変えさせてもらう。

番組の構成はとてもオーソドックスで、彼の人となり、使用機材、楽曲解説、関連人物といった内容。よく30分でこれだけまとめたなあという感じ。ゾンビかいせついんによるリズムについての解説はへーっとなった。
番組を見ている間、テレビから「レイハラカミ」という言葉が聞こえてくるだけで、嬉しいというか照れくさいというか切ないというか、いろんな感情が表出してきて混乱した。そのせいで、どんな表情をしていいのかわからなくなり、内心挙動不審になってしまっていた。
長女は「あー、これか」とか言っている。幼い頃からさんざん車の中で聴かされていたからだ。

関連人物ということで岸田繁と矢野顕子のインタビューがある。なんだよなにそんなに神妙な顔して喋ってんだよ、と思いながら岸田繁の話を聞く。彼はレイハラカミがリミックスしたばらの花について「表情が全然違う曲になった」みたいなことを言っていて、ほんとその通りだなあと思う。
原曲のばらの花に漂うさわやかでどこか切ない空気の流れのようなものが、一気に憂いをまとってしまい、その表情をがらりと変えてしまう。そもそもなぜ電子音楽がこんなに切なく響いてしまうのか、僕は今でもよく理解できない。

そして、このタイミングでやっぱり「ばらの花」が流れてくる。僕は一瞬で胸がいっぱいになってしまう。


思えばレイハラカミを初めて聴いたのはこの曲だった。長女が生まれた頃にくるりの「ワールズエンド・スーパーノヴァ」のEPが発売され、僕はさっそく購入した。レイハラカミによるばらの花のリミックスはこの2曲目に入っている。
そのころ妻は実家に里帰りしていて、僕はたまたま妻の実家に泊まりに行っていた。就寝前、妻と二人で生まれて間もない長女と遊びながら、このアルバムを聴いていた。おー、くるりもついにエレクトロニカか、しっかりクールで内省的で良いかも、と変に感慨深くなっていると、次の曲の雰囲気がちょっと変わっている。電子音なのにやけに音は柔らかい。でもなんかしっとりしている。なんだこれ、と思いCDのジャケットを取り出して見てみると、この曲はレイハラカミという人がリミックスをしていることがわかる。レイハラカミという名前を初めて知ったのもこの時になる。

この番組を見ながら、ふとその時のことを思い出していた。もう20年も前のことになるんだなあ。
実は、番組でレイハラカミが紹介されてる間、僕はなんだかとても恥ずかしかった。普段は人の目に触れることのない、自分の中のかなり奥深くにあるものが、なんの遠慮もなく世間にさらされているようだったから。それくらい彼の音楽は僕の内奥に侵蝕している。だからレイハラカミについて僕が話そうとすると、結局は僕自身について語ることになってしまうのかも…
それにしても人形かわいかったな。ターンテーブルの「よいしょ」のところとか。

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