ジョージとバーバラ

ジョージとバーバラ 
 私は62歳、すでに会社も定年退職し、悠々自適の生活を送っている。妻も歳の割には若く見え、息子や娘はすでに結婚、独立し、孫にも恵まれた。体に衰えは感じているが、精神はまだ衰えてはいない。
 おじいさん、おばあさん、おじいちゃん、おばあちゃん、じいじ、ばあば、とんでもない。孫達にはそんな呼び方はさせない。私はジョージ、妻はバーバラだ。帰国子女である妻もまんざらでもなさそうである。
「じいじ」
「じいじじゃないよ、ジョージだよ」
「ばあば」
「ばあばじゃないよ、ばあば、ラだよ」
 子供達は嫌がっているが、何構うものか。60年も人生、重ねてくれば、恥も恥と思わなくなる。サンタクロースがこの世にいないことを孫が理解する年頃まで、孫にはジョージ、バーバラと呼ばせよう。そして私や妻がこの世から消え去る時、「ありがとう、ジョージ」「さようなら、バーバラ」と孫達に言わせられたら、私は自分自身に親指を立て、「グッジョブ」とつぶやくのだ。

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