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焼き鳥屋 十兵衛

飲み屋街は、駅から歩いて
5分程度のところにある。
お店の数は、しっかり数えたことはないが
50~70ほどかと思う。
古くから頑張っているお店もあれば
若くて勢いのあるお店もある
しかし、コロナの影響というのは
計り知れない。
通りを歩いていると空き家となっているところが
何軒か見受けられ、
オレの馴染みのお店も一軒、
先日、お店を閉めたところだ。
知っているお店は、何軒かあるが
ホントの馴染みのお店は
数えで3軒のみであり
そのうち、一軒は先述の通りなので
いまは、二軒のみである
また、残りの二軒のうちの

一軒については、常連客の中に、
どうしてもオレとは反りの合わないグループがいて
足が遠のいている。
だから、いまは、現実的に、
馴染みのお店は一軒のみである。

オレはいま、その一軒に
足が向いていた。
「焼き鳥屋 十兵衛」である。
名前の由来は、まだ聞いたことはないが
看板に、眼帯をした侍が
笑いながら、刀を持っているイラストを
使用していることから
柳生十兵衛が好きであり、
名前の由来も、そこから
来ているのだろうと推測している。

お店の構えは、主にカウンター方式で
奥にテーブルがひとつ
カウンターには、椅子が
10席ほど、設けられている
通りからは、丸見えで
誰が来ているか分かるので
安心感がある。

メニューは、おでんと、どて、
そして、炭焼きで直焼きされた
焼き鳥が、一番の名物である
大将が身体で憶えた
焼き具合を計っている体内時計を
基準に焼かれた焼き鳥は
焦げ具合と、温度が絶妙で
絶品と言うしかない。
ここに来る常連の多くは
それを求めて来るのだが
やはり、土日、祝日は
無茶苦茶、混んできて
大将も手一杯になってくるので
そんな時は、簡単に出すことができる
おでんを注文することにしている。

実は、今日も例外ではないのだが
どれだけ混んできても
22時ころになると、
お客も、ある程度、はけてくる
その代わり、売り切れ品も
増えてくるので
注文できる品も限られてくるのである。

それでも、俺は、生中を
飲み干して、おでんの中の
ちくわを口にしていた。

離婚したからか
誰かに気を使って呑むより
ひとりで呑む酒は美味しい。

「大将、そろそろ、焼き物いいかな?」
「いいよー。何、注文されます?」
「そうだねー、つくねに、肝に・・・・。」
「あ、ごめん、肝は売り切れちゃった。」
「じゃあ、ねぎまと、しそ巻きはある?」
「おっけー、ありますよー。」
「つくねは、塩?たれ?」
「たれで、お願いします」
「はーい。」

ってな感じである。

「平和だね。」
心の中で呟いたオレは、
二杯目のビールを口にする。

すでに、良い気分にはなっていた。

明日は休みだから、何時まででもオッケーだ。




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