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KE Holdingsの決算分析 NYSE:BEKE

■本記事のYou Tube動画リンク


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今回は、KE Holdings(NYSE:BEKE)の決算分析です。


KE Holdingsはソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先で数少ない、黒字決算の上場企業

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今回、KE Holdingsを取り上げたのは、

この企業が、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先で、

数少ない、

黒字決算の上場企業だからです。


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もともとの投資額が大きいのもありますが、

21年6月末時点で、

KE HoldingsはSVF2で最大の利益をもたらしています。


KE Holdingsの概要

KE Holdingsのサイトに会社紹介の情報がありました。

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・設立は2001年

・上場が2020年8月

・メイン事業は不動産取引プラットフォーム

・特色は、中国最大のオンライン&オフライン、不動産取引プラットフォーム

という感じです。


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事業展開を時系列的に纏めますと、

・01~09年:北京で実店舗の不動産ブローカー事業(Lianjia)を開始

・10~14年:オンラインブローカに移行

・15~18年:中国29都市に展開

・18年春~:Beikeプラットフォームを始動

となります。


KE Holdingsの企業分析

■1 プラットフォーム型のビジネスモデルよる、ネットワークエフェクト

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売上や利益の前に、

最も気になったことですが、

決算説明資料で、ネットワークエフェクトを重視していることを、

強調してたことです。


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「ネットワークエフェクト」とは、

製品やサービスの利用者が増える程、利便性が増す効果のことを、

指します。

※詳しくは以下を参考下さい。


実際にKE Holdingsが提供している、

「オープンプラットフォーム」というサービスを見てみましょう。

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プラットフォームを通じて、

・市場に出てる住宅情報

・ブローカーの取引情報

が集まります。


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この集まったデータを加工し、サービスを提供しています。

具体的サービスは、

・住宅の価値分析

・不動産業界データ

・住宅データ技術

などの様です。


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特に住宅データ技術サービスが特徴的でして、

3Dの仮想空間で、住宅を内覧できる様になっています。


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また、KEの実際のサービスサイトでは、

ブローカーの一人ひとりに、

ユーザーからの評価が5点満点で、記載されています。

Amazonや食べログと似たシステムです。

ユーザーが増える程に、評価の正確性が担保されます。

そのブローカーが扱っている、

在庫も紐付けてリスト化されており、

信頼できる人を指名で、取引できる様になっています。


■2 ネットワークエフェクトを強化する為に

ネットワークエフェクトは、ユーザーが増える程に効果が増します。

その為に今後、注力すべきだと思ったことを整理します。


①現サービスで、市場シェアを拡大すべき

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中達証券という中国の証券会社に、

KE Holdingsの市場シェアが記載されていました。

少しデータが古いですが、

・中古住宅市場で19.4%(2019年末)

・新築住宅市場で8.8%(2020年1~3四半期)

の様です。

IR資料上では、中国最大の不動産取引プラットフォームと記載されているものの、

実際の所は、激しいシェア争いに巻き込まれていそうです。


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クープマン目標値的には、

現在は「並列的競争」状態なので、「市場影響」の26.1%から、

更に上まで到達できるかが楽しみです。


②サービスの信頼性を上げるべき

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サービスの信頼性を上げて行って、

「KE Holdingsは安心・安全」という印象を得られるかも、

勝負の分かれ目になると思います。


この点を疎かにしてしまうと、

少しの不正行為やセキュリティの不備で、

悪評が目立つ様になってしまい、

サービス自体は良いのに、

「使用したい」と思うユーザーが、

減ってしまうリスクがあります。

ユーザーを継続的に増やして行くには、

そのプラットフォームに登録し続けることに、

リスクを感じさせないことが重要です。


そのためには、

◎守りとして、

・ブローカー評価の不正防止

・ブローカーの賄賂防止

・セキュリティ対策の徹底


◎攻めとして、

・富裕層に特化したサービス

・大規模な広告宣伝

が重要になってくると思います。


富裕層に特化することで、ブランド価値向上を狙えます。

また、大規模な広告宣伝をすることで、

「不動産取引といえば、KE Holdings」

という第一想起を効果的に得られるでしょう。

これは例えば、

日本でプラットフォームを運営している、

楽天やソフトバンクが野球チームを所有していることも、

同じ原理だと考えられます。


また、不正や賄賂防止に関しては、

KE Holdinsの決算説明資料にも、

重点施策であると、記載がありました。


③周辺サービスに進出すべき

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定番のパターンとして、

楽天経済圏の様な囲い込み戦略も考えられます。


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既に、

・金融サービス

・リノベーション

には進出しているようですが、


他にも例えば、

・家具家電レンタル

・住宅IoT

・資産管理サービス

の様な分野も展開できそうです。


■3 海外展開

他にも、今後の成長性の重要な要素として、

中国国内に留まらず、

海外でも事業展開できるか?

という点があります。


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◎各国の主要企業との提携を深耕

日本では、GA technologiesやLIFULL、丸紅と協業関係にあります。

・LIFULLとの提携

不動産情報データベースの連携

これにより、Homelink社の顧客(中国人不動産投資家)にとっては、日本国内でより豊富な選択肢の中から不動産投資を行うことが可能になります。「LIFULL HOME'S」の顧客(デベロッパー、仲介事業者、管理会社等)にとっては、より多くの中国人不動産投資家とのマッチングの可能性が広がり、言語の不安なく中国人不動産投資家との売買取引や物件管理を行うことが可能となります。

この様な提携のお陰で、KEのサービスページから、

直接、海外の不動産を取引できる様になっています。


・GA technologiesと丸紅との提携

VR技術の日本市場への導入


きっと、日本以外の国においても、

同様の提携を結んで、

自社プラットフォームの展開を推進していると思われます。


IR資料上で海外セグメントについて、

特に触れてない事から、収益貢献度は低いと推測します。


不動産取引プラットフォームは、

既に各国でリーダー的な企業が存在しているので、

この様な、既存企業と強みと弱みを補い合う提携が、

勝率的にも資金的にも妥当な選択肢となるでしょう。



■4 財務数値

◎プラットフォーム上での総取引額

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KE Holdingsの総取引額は市場平均を超えています。

市場シェアを順調に拡大しているでしょう。


◎売上構成

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新築と中古不動産の取引がバランス良く、成長しています。

また、収益貢献は、まだ小さいですが、

新規サービスの利益率の高さも注目です。

新規サービスは主に、リノベーションと金融サービスの様です。


◎コスト構造

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粗利率は大きな変動なし。

売上高販管費率が低下傾向で、

今後の収益改善が見込まれます。


◎営業レバレッジによる収益改善

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先程のページでも触れた、

収益改善ですが、

偶然ではなく、

経営戦略としての方針みたいです。

IR資料にもしっかり記載されています。

営業レバレッジを高める為に、

変動費の固定費を進めて、

一旦、粗利が固定費を上回ると、

利益が増えやすい体質にしています。


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図も作ったので、ご参考下さい。

左が営業レバレッジが効いてる例。

右が効いてない例です。

一般的に固定費が上がるのは、

収益化が遅れるので、嫌われます。

しかし、同時に変動費を低く抑えられると、

一度、損益分岐点を超えると、

最終的に得られる利益が大きくなります。



■ まとめ

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プラットフォームビジネスによる、

ネットワークエフェクトの効いたサービスが、

競争力高いです。

継続して、サービスの利用者数を伸ばし、

業界における、デファクト・スタンダード化に成功させられると、

非常に強力な競争優位性になることが期待されます。


各国の主要企業との提携も、売上成長を後押しする。

①のプラットフォームサービスで鍛えた、

ネットワークエフェクトを、

海外需要開拓の後ろ盾にすることができると、

これも、今後の業績を強く牽引するかも知れません。

現状では、小さな割合の収益貢献度と想定されますが、

期待することができます。


現在でも、順調に売上が拡大している事に加えて、

営業レバレッジが効いた収益構造になっています。

今後、売上増の大部分が、

利益率増に繋がりやすいです。



以上が、KE Holdingsの企業分析まとめでした。

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