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Chicago XXXVIII: Born For This Moment を聴いていろいろと感じたこと

聴き始めてまだ2週間足らずなので、十分聴き込めてないのですが。
近年のシカゴは推しメンのジェイソンシェフや、実力派ビルチャンプリンの脱退と言いつつ、解雇があったり、しかもこの新作が出る直前にもメンバー交代劇が相次ぎ、正直期待薄な状況でした。
今回はそんな状況のせいもあるのか、日本盤が出ない事態になってます。
まぁでも一応聴いてみるか、ぐらいの軽い気持ちで、聴き始めたのですが、意外にもなかなかの好盤だったのです。
困ったことに(笑)

シカゴは元々3人の実力派ヴォーカルがアルバムの中でいろんな組み合わせで歌うのが醍醐味のひとつでした。
「素直になれなくて」など甘いバラードを歌わせたら天下一品の印象的なクリアハイトーンヴォイスのピーターセテラ、「サタデイインザパーク」の甘いバリトンヴォイスのロバートラム、「メイクミースマイル」のソウルフルな味わいのテリーキャスがオリジナルシンガー3人でした。

これはメンバーチェンジしても各ヴォーカルのキャラは引き継がれ、ピーターの後を引き継いだのがジェイソンシェフ、テリーキャスの後はビルチャンプリンというわけです。
ところが今回の新作、リリースの直前にもビルチャンプリンの後を引き継いでいたルー・パルディーニまで抜けてしまい、今回はピーターセテラ枠のニールドネルとロバートラムの二人ヴォーカル体制になってました。

そのため、本来ならルーがヴォーカルを取ってた楽曲もニールが歌ってるというおかしなことになってます。
なので、そもそも成り立ってないだろうと思ってたのですが…

ニールのヴォーカル、初めてちゃんと聴いたのですが、なかなか器用なヴォーカリストでした。セテラ枠楽曲にそれほど違和感ないのは、予想通りといえばそうなのですが、ルーが歌ってたであろう楽曲もそれらしく歌ってるのです。
曲によって歌い方や声質まで変えてるようで、またファルセットもフェイクヴォーカルも器用に使い分けており、かなりの実力派でした。
その分、個性は弱い気はしますが。
というわけで、全14曲中9曲でリードヴォーカルをとっております。

唯一のオリジナルボーカリスト、というよりバンドリーダーであるロバートラムが残りの曲を歌ってるのですが、こんな事態でも自身が全面に出過ぎることは避けるのがロバートラムらしいのでしょうね。
どうせなら全面に出て欲しいのですが…

ロバートの歌う曲はボサノバやジャズの香りも漂う彼のソロアルバムにも出てきそうなクオリティ高い楽曲が並んでいて、今作の聴きやすさに繋がっています。

また、ニールが歌う4曲目は「君こそすべて」を彷彿とさせるシカゴ王道バラードになっていて、やっぱり僕もこういうのが好きなので、いいなぁと思ってしまうのでした💦

そういうわけで結局はヘビロテで聴いてしまっております。
最近のメンバーチェンジの多さに碧碧としてきてて、割とメンバーチェンジに寛容な僕でも、本当にもうついていくのはやめようかと思ってたくらいでした。

メンバーチェンジといえば僕のシカゴ以上に好きなイエスも非常に多いですし、キングクリムゾンなども多いですね。
でも他のバンドとシカゴでは決定的にその本質が異なっているのです。

それは、出戻りがあるか否か。
イエスはリックウェイクマンみたいに回数がわからなくなるほど出戻りを繰り返してる人もいるし、他の主要メンバーも出戻り経験者は結構います。クリムゾンでも、確か二人くらいいたと思います。

でもシカゴは出戻り者はただの一人も居ないのです。
リーダーであるロバートラムは人事権、運営は一手に握ってて、実際はすべて彼の一存で決まっているのでしょう。
その温厚そうに見える表面の顔からは想像も出来ないクールな面があるのかも知れません。
実はかなりのイケメンで80が近づいてきた今でもカッコイイです。でも彼個人にスポットが集まることはなかったですよね。
最も彼自身も個人的に注目されることは望んでないように思われます。
それよりはシカゴ自体の注目度や存続が大事なのでしょう。
この辺り、すべて想像です。

シカゴはこれほどバンドとしてはビッグネームなのに、「顔のないバンド」と言われてたくらい、個人のキャラが見えてこないバンドなのです。
まぁ一時のピーターセテラは飛び抜けた存在になっており、結局はそれが脱退の原因だったのでしょう。
シカゴの場合、日本語訳が出てないだけかもしれませんが、バイオ本のたぐいもこれまで一冊も出ておりません。

これも「顔のないバンド」ゆえなのか…
なのでバンドの裏側は今でもよくわからないです。
一応「ヒストリーオブシカゴ」というバンドのアンソロジーを綴った映画はあるのですが、映像だけでは深いところはわからないですし。

ロバートラムは実際には、クリムゾンのロバートフリップよりも冷酷な一面があるのか、と最近悲観的に思うようになりました。
偶然にも同じロバートですね。

イエスだと、かつてジョンアンダーソンは「役目を果たさないものは去れ」と語ってたことがあります。
でも出戻りが許されてるということは「役目を果たせるようになったら戻ってもいいよ」ということだったのかなと思います。
なので、イエスの方は今でも馴染みのメンバーが残っており、新メンバーになる人も充分イエス周辺で名を売ってからなる場合も多く、これからも応援しようという気になれるのです。

シカゴの場合はどうか。
近年は毎年ツアーをやっており、メンバーも長年やってると家庭の事情や病気、ケガなどで離脱せざるを得ない場合が出てきます。
メンバー交代劇の多くは発表されてる理由ではそうした事情によるものが多いようですが、それにしても長年貢献してきたメンバーがそのようになった場合、少しは考慮しても良いのに、と側から見てそう思ってました。

まさかジェイソンシェフがそういう理由だけで解雇され、二度と戻れなくなるというのはちょっとひどいのではないかと思って、以降シカゴに対する熱が冷めてきたのでした。

しかし、今回の新作良いです。
まさかこんなにスムーズに受け入れてしまうなんて自分でもビックリでした。
でも、割り切れない気持ちも依然残ってるので、これから先どうなるかは自分でもよくわかりません。

いずれにしてもロバートラムが体調等の理由で活動出来なくなったら、シカゴは終わるのだと思います。
それとも代わりを立てて、院政を敷くのか、さすがにイエスじゃないし💦それは無いと思いますが…

この新作が気に入ったこともあり、結局は距離を取りつつもウォッチングは続けていくことになりそうです。

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