見出し画像

おうちフジロック2022の感想

フジロックが終わった。皆様、お疲れ様でした。現地に行かれた方も、配信で参戦した方も。

僕は財力不足&仕事がちょうど忙しいなどなどの理由で現地参戦はできず、自宅でYouTubeを通じてのフジロック参戦となった。果たして苗場の地を踏めるのはいつの日になることか…
給料上げてくれ!!!


2018年から始まったフジロックのyoutube配信、初年度こそ民度がスラム街のコメント欄など問題はあったものの、以来その恩恵を享受しっぱなしのワタクシ。もちろん今年も享受させていただきました。

仕事のせいで金曜日組はほとんど見ることができなかったのだけど(再配信も見たかったけど眠気に負けてしまった)、視聴させていただいたアーティストたちを簡単に振り返っていこうと思う。よろしければお付き合いください。

7/29

No Buses

職場の昼休みにチラ見、再配信を眠気に耐えながら視聴というファンの風上にもおけぬ感じで観させていただいた。

まず、こんなにラウドなバンドだったか!?最近配信された『Home』『Rubbish:)』などの楽曲がどれも歪んだギターが鳴りまくっていたので、バンドは今おそらくそっちのモードなのだろう。ギターが1人増えたのも要因かな?

初っ端の『Girl』からボーカルの近藤氏が荒ぶりまくる。飛び跳ね、頭を振り、かきむしりまくる。その横でギタリストとベーシストは黙々と弾く、そのギャップがアンバランスで良い。Catfish And The Bottlemenとかもそうだよね。
このバンドは楽器隊がとにかく手練れで、特に1番文系大学生みが強いドラマーはものすごい安定感ある、タイトなドラムを叩く。メンバーのナードさは海外のインディーバンド然としているけど、演奏力はそれらの何段も上を行っている(失礼)ので、安心してライブを見ていられるし、踊れる。

キレッキレの演奏から一転して挙動不審&ちょっと何言ってるかわからないMCも凄くいい。ここまでMCが上手くないフロントマンは初めて見たけど、むしろずっとこのままでいてほしいとも思うのは僕だけでしょうか。

1曲が短いのもあるのだろうけど、なんと14曲をフェスのステージで披露してくれた彼ら、なんという大盤振る舞い!素晴らしかった。『Yellow Card』『Imagine Siblings』などの新譜の曲もとてもよかったし、1stの中でも個人的お気に入りの『Untouchable You』をやってくれたのも嬉しかったな。


DAWES

Vampire Weekend始まるまでの繋ぎでみるか…ぐらいのノリで、予習も全くせず臨んだのだけど、とっってもよかった。いぶし銀のアメリカンロックを鳴らすバンドだ。

どの曲にもブルージーなギターソロがあって、時にはギターボーカルの方もジミヘンやジョンフルシアンテばりのいい顔をして弾き倒す。というかバンドメンバーみんな顔で弾くタイプ。ベーシストの方も常にニコニコで、ドラムセットに近づきアイコンタクトを取りながら弾いたり、ギタリストやボーカリストと向かい合って楽しそうに弾く姿は『バンドをやる楽しさ』をこれ以上ないほど体現していた。

観客もとても元気で、初来日のバンドを大歓迎ムードで迎えていたのが印象的。「See you very very very soon!!」と言ってくれていたので、期待しましょう!

Vampire Weekend

なんで彼らはこんなに飄々としているのに、我々はここまで心動かされてしまうのか。

1曲目のイントロをミスしたときの仕草や、機材トラブルで長い中断があった後の「Thank you AC/DC」というチャーミングなMC(サウンド復旧中、BGMで流れていた)のみならず、楽曲自体も言ってしまえばスカスカで、おちゃらけていて、とぼけた雰囲気を漂わせている。
なのになぜこんなに泣けて、楽しくて、幸せな気持ちにさせてくれるんだろう。本当にマジックとしか言いようがない。
例えばオアシスのあの美しいメロディで感動するのは理解が容易だと思う。同じく、シガーロスのあの静謐な音世界に涙するのもきっと理解してもらえるだろう。それらと同レベルの感動の涙を、Vampire Weekendの飄々とした立ち振る舞いと演奏で流してしまう。あのスカスカなサウンドが広大なグリーンステージを覆い尽くさんほどの感動をもたらしてしまう。本当に、不思議で、すごいバンドだ。やっぱり大好きだ。

7/30

ORANGE RANGE

大勝利。完全勝利。そうとしか言いようがないほど『フェスのセトリでの喜ばせ方』をわかっている人たちだ。
だって初手『花』ですよ。そこから畳み掛けるように『以心電信』『ロコローション』ですよ!!大してオレンジレンジを通ってこなかった僕でも、DNAにメロディが染み付いてしまっているので(世代なもので…)、体は勝手に踊り出すし、歌い出してしまう。

チャラい見た目の人たちだけど、とにかく真摯に音楽に向き合っている方々なんだな、と思った。MCも『やっとフジに出演できました!』と腰低め。好感度上がっちゃうよ。この見た目で誰も不倫もドラッグもやってないんだよ!
ラストの『キリキリマイ』ではメンバー全員前方に躍り出てパフォーマンス。J-POPの最前線で生きてきた男たちが、ミュージックオタク、ミュージックジャンキーが集うフジロックを大いに沸かし、荒らしてくれた。最高だった。


折坂悠太(重奏)

今年のアラバキ以来。

やっぱり、とんでもない。本当に圧倒されてしまう。"人智を超えた"という大仰な表現を用いたくなるほど物凄い演奏なのだ。アラバキで見た時も圧倒されたけど、今回も同レベルの衝撃だった。

"芍薬"という楽曲がとても良い。アガる曲というのは世の中に数あれど、自分の中にある民族性というか、奥底に眠る"和"の心を呼び起こして奮い立たせてくれる楽曲、他に思いつかない。超絶おしゃれにアップデートした地元のお祭りのお囃子というか。お祭りの会場に行った時の高揚感と少し似ているのだ。
何言ってるかわかるかな…ごめんなさい、文章下手で…
本当に大好きなんです。

昨年も出演予定だったが辞退という決断をした同氏。MCでもそこに触れ、「去年と今年、何が違うのか、その答えはまだ出ていません」と真摯に、正直に話すその姿はとても好感を持てた。そういうまっすぐな人柄も、彼を好きな理由の一つだ。


しかしサポートギターの人、相変わらずの変態サウンドだったなぁ…


GRAPEVINE

ここでまさかのアラバキ出演者連チャン。

いや、神セトリに神演奏。Twitterが大騒ぎでしたね。

まず1曲目が"CORE"の時点でとんでもない。フジにぶつけてやろう、という気概が本人たちにもあったのかもしれない。
時が経てば経つほど熟れて魅力的になっていくバンドの演奏と、田中氏の歌声。どこまで良くなっちゃうんだ、このバンドは!!

『光について』『風待ち』などのアンセムはもちろん、『ねずみ浄土』も最高によかった。あのコーラスワーク、絶品すぎる。

アラバキと同じく『FLY』でみんなをFLYさせておわり、かと思いきやラストソングは『エレウテリア』!!マジかよ、田中!!!!シングル曲でもリード曲でもないぞ!?カップリング曲よこれ!それをフジロックのラストソングに…!?!?

GRAPEVINE、ずっとついてく!!そう確信したライブでした。

GLIM SPANKY

まさかのアラバキ2022出演者3連チャン。あの時はLOVE PSYCHEDELICOとのコラボだったけど。


このバンドの魅力はレミさんのあの歌声も勿論なのだけど、亀ちゃんの老成したブルージーなギターがこれまた最高なのだ。あんな長尺の、渋いギターソロを弾きこなす若いギタリストはなかなかレアだと思う。

新曲の『シグナルはいらない』がラウドでとてもよかった。こういう方向で新譜作ってくれたらうれしいなぁ。

「大人になったら」を演奏し始めたあたりでFOALSに移動。


FOALS

FOALS、コロナが流行り始めた2020年頃、続々と来日キャンセルが相次ぐ中、本当にギリギリまで日本公演を実現させようと頑張ってくれたバンドだ。

新譜はとにかくポップでエネルギッシュ。これはライブがさらに最高になるぞと予感していたけど、予感の数十倍はよかった。

ジャック・ビーヴァンのドラムが最高に良い。凄まじく上手く、野生味溢れるドラムだ。彼は時折ドラムセットを離れステージ前方に飛び出し観客をあおる。盛り上げ役としてのスキルも素晴らしい。

ギターのジミーはどちらかというとジョニーマータイプ。センス溢れるバッキングで演奏を支える。リード的な役割はどちらかというとボーカルのヤニス(またちょっと体格が良くなっていた)。複雑なアルペジオを弾きながら熱唱する様は最高にクール。

『My Number』あたりで最初の沸点を迎え、名曲『Spanish Sahara』が夜のグリーンに沁みる。そこからは起爆剤を次々投下するような展開で、気づけばあっという間に『Two Steps,Twice』で大団円を迎えていた。バンド側の気合と客席の歓迎ムードが合わさって素晴らしい祝祭的ライブになった。ありがとうFOALS!!


Jack White

前日のVampire Weekendは飄々とゆるやかに感動を描いたライブだったが、Jack Whiteは全く真反対の、素晴らしいライブを見せてくれた。終始ビリビリとした緊張感が流れるものの、決して雰囲気が悪かったとかそういうわけではない。あまりの気迫と、鬼気迫る演奏による武者震い的な緊張感だ。

ジャックホワイトはのっけからハイテンションでノイジーなギターを鳴らしまくる。そのうしろで奮闘するサポートメンバーも皆凄まじいテクの持ち主だ。特にドラマー。ニコニコしながらとんでもない音圧のビートを叩きまくる。

ノンストップで一気に駆け抜け、中弛みなど一切感じさせないショーだったが、これで「セットリストは決めておらず、ジャックの気分次第で変わる」というのだから驚きだ。テンションを落とさず観客を引き込むジャックのオーラも、それに負けじとついていくサポートメンバーも。

ソロ曲のみならずホワイトストライプスやラカンターズのセルフカバーも多数披露されたが、苗場のみんなも配信組のみんなも待ち望んでいたのは、やはり最後に演奏したアレだろう。そう、『Seven Nation Army』!!!
あのリフが鳴らされた瞬間の、歓喜が爆発する感じといったらない。しかもその爆発がラストまで持続するかのような、すごい盛り上がりであった。ジャックも最後の最後まで全力でパフォーマンスを続け、特大のノイズを放出して終了。最後はメンバーみんなでステージ前方に並び丁寧にお辞儀。全力の「アリガトウゴザイマス!!!」も聞けた。

いや、すごかった。完璧なヘッドライナーだった!!!


7/31(日)

Japanese Breakfast

胸の部分にワンちゃんの顔をあしらった可愛い服で登場したJapanese Breakfast。本人も最初から大変ご機嫌そうで、1曲目から銅鑼を打ち鳴らす。

白いジャズマスターがよく似合う彼女は「インディーロックはこう鳴らせ」と教科書に書いていてもおかしくない、安心して身を任せられるライブをしてくれた。あまりにもお昼のグリーンステージにマッチしすぎていて、観客も皆楽しそう。それが演奏している側にも伝わっているのだろう、終始笑顔で幸せそうに演奏していた。かわいい。

ちなみに本人のインスタにて、ビール片手にイカ焼きを頬張る姿が投稿されてるので是非見てみてほしい。往年のフジロッカー感がある。

Elephant Gym

ベストアクト、今年は君たちだ!!
うますぎる演奏と可愛すぎるMCで、天井知らずに上がり続ける多幸感。完全に恋に落ちた。

1曲目からバカテクを披露しまくる。真ん中の女の子ベーシストKT Changはタッピングで魅せる。途中で髪をほどき、振り乱しながら演奏する様は最高にクールだ。

最高にクールなのに、MCはとってもほんわか。「フジロック、でれてうれしいだから…毎日飲みすぎだから…でんわ、スマホ、失くした」というMCには爆笑&拍手喝采。その反応に対し「悲しいことだから拍手ダメ!」とちょっと怒ってたのも最高に可愛い。演奏の合間にはビールをごくごく飲む。かわいい。
ギタリストのTell ChangはKTの実のお兄ちゃん。セトリの紙の裏をカンペがわりに、一生懸命日本語MC。

「フェスティバルは平和の象徴。戦争、パンデミックなど色々悲しいことがあるけど、どうか希望を捨てないで。信じることをやめないで。僕たちはこうして音楽で喜びを分かち合える。フェスティバルはそれを可能にする場所。フジロックにこんなヘンテコな台湾のバンドを呼んでくれてありがとう」

要約するとこんな感じのことを喋っていたのだけど、まぁ〜ものすごく感動した。本当に。観客も拍手喝采で、Tellもドヤ顔&ガッツポーズ。まあ、KTに「ほんにんはなに言ってるかわかってない」って言われてたけど…

そこからも相変わらずバカテク披露大会なのに、テクニックをひけらかしてる感じが全くしないのが不思議だ。メンバー全員、心から楽しそうに演奏しているのがとてもいい。ドラムのTuもバカテク兄妹に負けじと、スポーツマンのような爽やかな笑顔で変拍子を叩きこなす。Tuも途中立ち上がって「アリガトー!」とMCをしていたけど、シャツの前のボタンが外れていてちょっとセクシーな感じになっていた。それを兄妹が「セクシーだね!」(兄)「いや、セクシーじゃないよ!ダラシナイ!」(妹)と言ってたのも最高に微笑ましい。

中盤では日本の新進気鋭バンド、childspotの比喩根も登場。なんと二十歳だそう!Elephant Gymの曲に日本語詞をつけたコラボ楽曲を披露。比喩根を大層可愛がるKTがまたかわいい。ワンちゃんをヨシヨシする感じが出ていた。

ラストにかけては台湾から連れてきたサポートメンバーが登場し、ブラスバンド編成で最後の楽曲まで駆け抜けた。3人のジャキっとしたサウンドに管楽器の暖かい音色がよくマッチしていて素晴らしかった。

とにかく最後まで上がり続けた多幸感は『Galaxy』で大団円。音楽を聴く楽しさ、演奏する楽しさがあのレッドマーキーの天井を吹き飛ばさんレベルで爆発していた。最高!!
次はフィールドオブヘブンのトリだな。

Mogwai

爆音は正義。それしか言いようがない。配信の画面ごしでも『Mogwai Fear Satan』の例の爆発はぶっ飛ばされてしまった。

1曲目から爆音の海で酩酊。凶悪な音量だけど、不快感は少しもない。ずっとこの音が流れていてほしい、と思うほどだ。

1曲ごとににこやかに「アリガトウ!」と挨拶を挟み、そこでわれわれは夢から醒めたような心地になる。このアリガトウがいい緩衝材になって、最後まで心地よく爆音の海で泳ぐことができた。

しかしMogwaiのPAはすごいと思う。ものすごい爆音で、みんな思い思い勝手に音を出しているように見えて、一つ一つの音がたがいに邪魔せずとても良いバランスで調和している。ギター、ベース、ドラム、キーボードが全てちゃんといいバランスで聴こえるのだ。やっぱりこれは生で見てみたいな…

みんなが待っていた『Mogwai Fear Satan』、その例の超絶轟音の瞬間は今でも覚えている。来る、とわかっていたのに体がビクッと震えてしまった。苗場を通り越して新潟中に響き渡ってしまったのではないか、という音。あんなの生で聴いたらほんとに聴覚を失ってしまうのでは、と思うけど、やっぱり死ぬまでに一度は見てみたいなぁ…


Mura Masa

ナードな宅録青年、と言った風貌の彼が、ホワイトステージ三日間のフィナーレという大役を完璧にこなしてくれた。『祝祭』という言葉がふさわしい、終始歓喜に溢れたライブだった。

Mura Masaはステージ後方のブースに控え、時にはシンセを弾き、時にはギターも弾く。そしてドラムを叩きまくる。このドラムを叩くパフォーマンスによって、視覚的にも音的にもテンションが奮い立つライブになっていた。最高にかっこよかった。

ゲストシンガーは2人。曲ごとに入れ替わって登場し、ステージを駆け回りながら「Fuji Rock!!」と煽りまくる。

『Nuggets』『1 Nights』といった名曲を序盤でさっそく披露する大盤振る舞いで、歓声がものすごかった。パーティーピープルにも、音楽オタクにもアクセスできるサウンドで、誰1人取り残さず歓喜の彼方に連れて行く気概を感じた。

ラストの『Love$ick』『Firefly』の二連打は今年のフジロックのハイライトと言っても過言ではないだろう。入れ替わり登場していたシンガーがここではついに同時にステージで歌う。

シンガーふたりとMura Masaの3人で、ステージ中央でハグし合って終了。完璧なフィナーレだ。この采配をしたフジロック運営、天才だよ。


総括

3年ぶりの海外勢参戦となったフジロック。最高だった。本当に幸せな三日間だった。配信見てるだけでこんな幸せなのだから、現地に実際に行ってしまったら僕はどうなってしまうのだろう…。

ベストアクトはElephant Gym。ここまで笑顔が止まらないライブは久々だった。ひょっとしたら人によってはとっつきづらい超絶テクのマスロックに、あの誰もが好きになってしまう愛嬌溢れるメンバーのキャラクターが合わさったときの化学反応。素晴らしかった!

次点でJack White、Mogwai、折坂悠太あたりかな。

配信はElephant Gymと被っていて残念ながら見れなかったのだけど、鈴木雅之がMCでこんなことを言っていたらしい。「音楽は心のワクチン」。
色々と不安を抱える機会に恵まれすぎてしまっている今の日本。ニュースを見て落ち込むことも残念ながらすごく増えた。それでもなんとか生きてこうと思えるのは、やはり音楽を聴いて、他では得られない幸せを感じる瞬間があるからだ。

音楽は悩みや問題を解決はしてくれない。音楽で幸せになっている時間というのは、山積みになった問題から目を逸らしている時間と同義なのかもしれない。でもそれでもいいじゃないかと思うのだ。ピートタウンゼントも言っていた。音楽は悩んだまま、俺たちを躍らせる。ただただ悩み続けて心を病んでしまうより、ずっといい。
これからも悩み続けながら、踊り続けられたらいいな。
そんなことを思っていたんだ〜(フジファブリック)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?