刺繍に関する研究・論文まとめ(随時更新)

自分の勉強用に、直近5年くらいの刺繍に関する主要な研究・刊行物をまとめていっています。新たに見つけしだい、追記していきます。

『月刊みんぱく』連載 - 「手芸考」

国立民俗学博物館(大阪)の広報誌『月刊みんぱく』で、2016年4月から2018年3月まで毎月掲載された、24回の連載。
2014年10月から2018年3月まで、同博物館によって行われた研究プロジェクト『現代「手芸」文化に関する研究』の一般市民向け成果物として展開された。

研究プロジェクトの目的のうち、太字にした「美的に評価された美術や利潤を生みだす工芸に比べて二重に周辺化」「従来の手芸概念ではとらえきられない新たな領域を「手芸」として捉え返し」このあたりが今のわたしの興味関心にぴったり。

▼研究プロジェクトの目的

本研究は、日本の手芸に相当する余暇的・趣味的仕事とその造形物の現代的展開を明らかにする。手芸とは、主に女性を担い手とする家庭内での商業化されていない趣味的な制作を意味する概念として明治期に形成された。そのため手芸の領域は、美的に評価された美術や利潤を生みだす工芸に比べて二重に周辺化されてきたといえる。しかし、現在、世界各地で、従来の日本の手芸概念ではとらえられない余暇的・趣味的仕事が多様な展開をみせている。それらは、男性も担い手に含み、アート、フェアトレード商品、エスニック雑貨などとして美術や市場の領域にも進出している。また、趣味を通じた人的ネットワークの形成や、それらの災害後におけるケアとしての機能などが注目を集めている。こうした従来の手芸概念ではとらえきられない新たな領域を「手芸」として捉え返し、その現代的展開を民族誌的に分析し、新たな「手芸」概念の創出を目指すものである。


そして嬉しいことに、すべての連載はPDF化され、オールカラーでウェブでも読めるようになっている!
以下にタイトルとリンクをまとめてみました(★は、歴史的に特に面白かったもの)。

【2016年4月号】余剰からうみだされる造形物―手芸について考える(上羽陽子さん)
・★【2016年5月号】ニッポンの「手芸」―近代から現代まで(山崎明子さん)
【2016年6月号】ビジネスとしての手芸―女性による女性のための手芸専門店「キルトショップ」(坂田博美さん)
【2016年7月号】主婦と職人のあいだ――手工芸は手芸か、工芸か?(中谷文美さん)
【2016年8月号】「アイヌ刺しゅう」の担い手たち(齋藤玲子さん)
【2016年9月号】物語る服、服の物語――行司千絵の手しごと(村松美賀子さん)
・★【2016年10月号】糸と女――紡がれる物語(平芳裕子さん)
【2016年11月号】次なる「手芸」へ(ひろいのぶこさん)
【2016年12月号】インドの「ハンディクラフト」(金谷美和さん)
【2017年1月号】「刺し子」によるモダンからの脱却(蘆田裕史さん)
【2017年2月号】「おのくん」とパンセ・ソバージュ(杉本星子さん)
・★【2017年3月号】頑張りすぎない手芸(野田凉美さん)
・★【2017年4月号】工芸館所蔵の「手芸的」なもの(木田拓也さん)
【2017年5月号】中国雲南省モンの刺繍から手芸を考える(宮脇千絵さん)
【2017年6月号】編み込まれた記憶――パプアニューギニアの網袋製作から(新本万里子さん)
【2017年7月号】針仕事を引き継ぐ(笠井みぎわさん)
【2017年8月号】震災と手芸とコミュニティと(塩本美紀さん)
【2017年9月号】残余にあらわれるネパールの手芸的なるもの(南真木人さん)
【2017年10月号】ネパールの異なるふたつのダカ織(高道由子さん)
・★【2017年11月号】手芸で社会とつながる――大阪万博の「童心曼陀羅」
(山崎明子さん)

【2017年12月号】手仕事だから安い世界――インド北東部アッサムの野蚕糸から(上羽陽子さん)
・★【2018年1月号】服のパターン、手芸のパターン(平芳裕子さん)
【2018年2月号】「手芸」誕生――バングラデシュの刺繍布カンタから(五十嵐理奈さん)
【2018年3月号】被災地で手芸を「仕事」にする(金谷美和さん)


学術論文

『近現代における日本刺繍の研究』(大﨑 綾子さん, 筑波大学, 2016)


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