昨日生まれた
昨日私はここに生まれた。昨日、地球の人になった。わからないことばかりだけれど、どうかこれからお願いします。
見上げると白い空、霞のかかった白い空は四角形。飲みこむものはなんだかとっても軽くて、冷たい。ここは随分寒いのね。私を支えているのは真っ白なやわらかい地面、私はどんどん下の方に吸いつけられている。ここはなんだか重いところね。あたりは随分といろいろな音がしている。カチャカチャ、よかったねー、シャー、ぞわぞわ、元気な女のこ、、。どうやら騒がしいところみたい。
少しつかれて、私は小さなあくびをした。それを隣で、大きな顔が見ていた。なんだか笑ってたまに話しかけてきた。それはどこかで一緒に生きてた遠い昔の私のだった。
あらあなた私ね、あなた元気にしてたのね。笑い返してあげたいけれど、どうにもここは寒くて身体が重いのよ。
少し時間が欲しいわ。心のなかでそう思った。
私はここに生まれた。地球の人になった。わからないことばかりだけれど、「私」と一緒ならどうにかなりそう。どうかこれからお願いします。
でもきっと、明日にはそれも忘れるでしょうね。よしんば明日まで覚えていても、きっとその次の日に忘れるでしょう。そうして私は子供になって、これから地球の一部になるのね。
end.
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