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美容院は髪を切るだけの場所じゃない

美容院に行ってきました。僕は1.5ヶ月に1度くらいの頻度で通っております。1回あたりの費用はカットのみで4000円。美容院としては平均あたりか、やや安いくらいでしょうか。マッサージなんかもそうですけど、1人のスタッフとマンツーマンでサービスを受けるお店ってそれなりの金額がします。それもそのはず。他のお客さんの相手をせず、自分一人のために時間と労力を注いでくれるわけですから。お店の経営のことを考えると、僕1人のために1時間付きっきりでサービスを施してくれるなら、その料金は少なくともスタッフ1人の1時間あたりの給料を下回るわけにいかない。その他、消耗品やお店の維持にかかるお金、利益など色々考える必要がある。結果、美容院で1人のスタッフを1時間独り占めして4000円という金額は破格なのかもしれない。
ところで、僕は美容院を散髪するだけの場所とは思っていません。少し話は逸れるのですが、ネットでこんな体験談をたびたび目にします。パパ活や水商売をしている女性、仮に大学生だったとしましょうか。彼女たちは学校の異性とデートなどする際に、「どうしてお金が貰えるわけでもないのに、この人のために時間を使っているんだろう」と考えてしまうそう。異性と一緒に過ごす=金銭のやり取りが発生する、という方程式が脳にこびり付いてしまい、純粋に打算抜きで楽しむことができなくなっているのでしょう。
僕はこの感覚が少し理解できる。や、別にママ活とかをしているわけではありませんよ。むしろ逆です。大学生の頃、友達がほぼ居なかった僕はお金を払って"女性と喋るお店"に行っていました。そうしているうちに、女性と喋る=お金がかかる、という歪んだ方程式が生じました。そのため、そういうお店とは関係のない場所で女性と喋る機会があったとしても、どうも物怖じしてしまう。無償でこの人の時間を頂いていいのだろうか、と。実はこれは僕の傲慢さゆえでもある。お店でお金を払って女性と喋る際は、こちらは客である。つまり、お金を払っているのだから、仮に僕の話がつまらなくても文句は言えないでしょう。相手の女性もお仕事なのだから、間違っても僕の機嫌をそこねることがないよう振る舞う。僕は自分がつまらない人間であることを自覚しなくて済むよう、お金で仮初の対等関係を築いていたに過ぎない。ところが、客とキャストという関係を取っ払われたらどうだ。相手は僕をヨイショしたりしないし、僕との会話がつまらなければ2度と会う事はないだろう。本当は自分の不甲斐無さを突き付けられるのが嫌なだけなのに、「タダでお喋りしてもらっていいのですか」なんて小狡い言い方をする。
話を美容院に戻します。美容院は、僕にとって貴重な他者とのお喋りタイムでもあるのです。髪を切るのが1番の目的ですが、人と他愛のない会話をすることで社会的欲求も満たされるような気がします。そう考えると、1時間で髪を切ってもらえて1:1でお喋りもできて4000円というのは、やはりリーズナブルです。不純でしょうか。少なくとも、夜のお店に行くよりかは健全な気もしているのですが。相変わらずお金を盾に会話していることを考えると、五十歩百歩なんでしょうね。

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