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寂しさを紛らわすためコンカフェに行くも失敗した話

喋りたがりな性格ゆえにこうして息をするように日々文字を綴っているわけですが、それでお喋り欲が完全に満たされるかというと、そういうわけにもいかず。文字と声という違いもありますが、なにより日記は言葉のキャッチボールではなく、独り言に近いですからね。たまにコメントをいただくこともありますが、基本的には一人で淡々と壁打ちをしている状態です。しかし、本当にまったく話し相手がいないわけではない。そもそも親と同居しているし、たまに会う知人もいる。贅沢な話ですが、とはいえ趣味に寄った話をする相手がいないことが不満なのだ。親と話すのは献立の内容や風呂に入る時間など、主に生活面にまつわること。知人は同い年ですが、世間話が大半。もっとくだらない話、中身のない非建設的な話をしようよ、誰か!そんな僕の欲求が大爆発した。

フラストレーションが限界値を迎えた時、人は血迷った行動にでます。気づくと僕はスマホで最寄りのコンカフェを調べていた。行ったことはないけど、要はカウンター越しに駄弁ることができるお店でしょう。お酒を飲みたくないので(というか車移動なので)、ガールズバーやキャバクラは除外。いくつかの店のホームページを巡っていると、派手髪のキャストばかりが在籍するナースをコンセプトとした店舗を発見。直感的に、僕の趣味フィールドで会話ができそうな雰囲気を察知したので、この店に決定。1つ断っておくと、これはとても恥ずかしいことなのだ。人脈オバケのような人であれば話し相手など吐いて捨てるほどいるわけで、そうでない僕はお金を払わないと他人と会話する権利すら与えられない。僕はすっかり「お金を払うことで若い子に話し相手になってもらい、おだてられ、自分もまだまだ捨てたものじゃないとつけ上がるおじさん」になってしまったんだ。

車を1時間ほど走らせ、目的の店に到着したのは17時半。入店すると、カウンター内で2人のキャストがスマホを触りながら雑談していた。こちらに気づき「い、いらっしゃいませ?」と不思議そうな様子。いわく、平日のこの時間に来店する客などめったにおらず、関係者か何かと勘違いをしたらしい。この時点ですでにちょっと気まずい。上級陽キャであれば、この状況を逆手にとって笑いに換えたりできるのだろうなあ。料金システムなどについて軽く説明を受け、カウンター席に座る。本来は客にキャストが1人ついて、一定時間が経過したら別のキャストと入れ替わるという流れらしいが、他に客がいないため、キャストA、キャストB(以下A、B)と僕の3人での会話がスタートする。さっそく2人が高校生であることを聞き驚いてしまったが、コンカフェは飲食店扱いのため高校生でも働けるらしい。なるほど勉強になる。

必死に話題を探して喋る必要もないかと思い、ドリンクを飲みながらぼーっとしていた。すると、「趣味はなんですか」と、土産物店に売っている「根性」と刻印されたキーホルダーばりにド定番の質問。僕があまりに喋らないものだから、気を遣ってくれたようだ。こういうところに”接客サービス”を感じてしまって少し哀しい。しかも、そんなありふれた質問にすら回答につまる僕。ちょうど店内BGMが「えれくとりっく・えんじぇぅ」だったので、それとなく上の方を指差して「こういう音楽好きですよ」と言ってみた。「ボカロ好きなんですか!」と、僕の答えはひとまず間違いではなかったらしい反応が返ってきた。事前に僕の趣味フィールドで会話できそうと踏んでいましたが、読みは当たっていたようだ。その後も質問→回答→質問→回答という、会話というより問答に近い何かが繰り広げられ、自分の会話スキルの低さに萎えてしまった僕は戦線離脱することにした。「とりあえずこの輪の中にいられれば満足なので、2人で適当に喋っててもらっていいですよ」と、無理にこちらに話を振る必要はない旨を伝える。もしかしてこれダル客ムーブ・・・?

しかし、2人の会話テンポがとにかく速い。
A「この人の動画昔めっちゃ観てたけど今更バズってた〜最近観てなかったしまた観よっかな」
B「てかめっちゃおでん食べたい!退勤後に行こ」
いやこれ会話なのか、お互い独り言を言っているだけなのか。まあいいや。続いてTVの話題へ。

A「最近マジでTV観なくなったわ。『笑っていいとも!』好きだったのになー」
B「なにそれ、ドーンみたいなやつ?」
一瞬会話が止まったので「それ『笑ゥせぇるすまん』では・・・」と僕が横槍を入れると、Bは「それ!『笑』って文字は合ってたでしょ!」と得意げだった。こうして部分的に切り取ると、いかにもBがおバカさんぽく見えてしまう。すまない、悪気はないのだ。

2時間ほど滞在し、店をあとにする。満足したか、欲求不満は解消されたかと聞かれ「Yes」と答えたら嘘になる。もちろん彼女らは悪くない。コンカフェのキャストとして、ただいつも通り業務をまっとうしただけ。結局のところ、不満の原因も解消できない原因も僕自身にあるのだ。へただなあ、へたっぴさ・・・欲望の解放のさせ方がへた・・・!

モヤモヤした気分で帰路へ。ところで、石川県には「8番らーめん」というソウルフードがあります。県内に複数店舗があり、いまなお増え続けている大人気店。かといって、県外から遊びに来る人に「ぜひ行ってみて!」と勧めることはない、そんな不思議なラーメン店なのだ。いうなれば、県民共通の「おふくろの味」という感じだろうか。コンカフェ大作戦の失敗で傷心していたこともあり、久々に8番らーめんの味が恋しくなる。ということで、帰る途中で晩飯がてら寄って行きました。

実はこの店は炒飯が格別なのだ。ラーメン店なのに恐縮ですが、炒飯と餃子を注文。着丼後、犬のように炒飯をかっ喰らう。しばらくすると、注文品はすべて届いているはずなのに、1枚の小皿がテーブルに置かれる。一体なんだ・・・?炒飯を口に運ぶ手をいったん止めて、ふと斜め上を向く。すると、店長らしき男性がにっこりと笑っているではないか。すぐさま小皿のほうに目を落とすと、そこには紅しょうが!そう、僕は炒飯の紅しょうがが大好きで、今回もいち早く紅しょうがを消費していた。その様子を見ていたのか、追加の紅しょうがをサービスしてくれるという粋な計らい。あったけぇ・・・あったけぇよぉ・・・。これはマニュアル化された”接客サービス”ではなく、間違いなく彼からの厚意だ。これが僕の求めていたヌクモリティなのではないか。言葉がなくとも、気持ちが通じ合えば良いんだ。食事を終え、心穏やかに帰宅することができたのでした。

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