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失恋の傷は癒えぬまま

たいへん情けない話ですが、三十路にもなって過去の恋愛を引きずっております。失恋後、1ヶ月もすればあっけらかんとしている人を羨ましいと思う反面、そんな薄情な人間にもなりたくないなぁ、なんて自分を無理くり正当化するなどしております。

1年前、約9年間付き合っていた彼女にフラれました。それから1〜2ヶ月は文字通り地獄の苦しみで、僕の半生史上もっともつらかった期間と言えます。それに比べれば今はずいぶんと気持ちも楽になりましたが、あくまで最悪な期間と比べての話。実際のところ、毎日うっすらと暗い気持ちが続いています。過去に執着していたって仕方がない。今を楽しみ、そして未来に向かって進んでいくべきだと、頭では理解しています。けれど、楽しみ方がわからない。何をしても、何を食べても、どこに行っても、心の底からしあわせな気持ちになることがない。こんなに豪勢なランチを食べに来たんだから、美味しいに決まっている。前々から気になっていた観光地に来たんだから、楽しいに決まっている。なんとか自分に言い聞かせているだけで、正面には死んだ目をした自分が無表情で立っている。その冷めた自分と向き合わないために、僕はいつもそっぽを向いているんだ。

どうすれば過去を振り切って今を楽しめるんだろう。無理に振り切ろうとする必要もないんだろうか。こうして方法論にこだわりすぎるのも僕の悪い癖だ。何をしたところで彼女と過ごしていた過去がチラついてしまい、すべての体験はその劣化版に成り下がる。当時、僕はぜんぜんお金がなかった。ほぼ働いていなかったからだ。それでも、彼女と一緒にいられるだけで本当に幸せだったんだ。まあそれは僕の一方的な意見で、彼女はそうでなかったのでしょう。その幸せな時間を守るために社会へ踏み出せなかった僕が100%悪い。そして、今の僕は当時より格段に経済的余裕がある。働いていますからね。だから、あの時よりも高額なディナーを食べられるし、好きなグッズも服もだいたい買える。でも、いまはそうした俗物に興味がない。そんなことにお金を使ったって、一時的な購買欲が満たされるだけで虚しくなる。

なんとかバイトで食い繋ぐ生活だけど笑顔の絶えない日々を送っている売れない芸人もいるし、一方で超売れっ子だけど人生に満足していないタレントだっている。富や名声で幸せは買えないのだ。僕は人と一緒に幸せになる方法しか知らないのだろう。その価値基準で考えるから、独りの今を楽しめないんだ。だから、一人で人生を豊かなものにしていく方法を模索しなければならない。もう恋愛はこりごりだ。一人で強く生きていくしかないのだ。

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