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中洲のガールズバーで友人が暴れて大悲劇

福岡県といえば何を想像するだろう。博多、豚骨ラーメン、明太子、太宰府天満宮、色々ありますね。とりわけ男性陣は中洲を思い浮かべる人も多いのではないか。北海道のすすきの、東京の歌舞伎町、それらに並ぶと言われている福岡の中洲。日本有数の大歓楽街だ。今回の福岡旅行は男3人での旅ということもあり、当然のごとく行き先候補に中洲の名もあがる。そして旅の3日目、つまり最終日の前日に僕たちは中洲へ行くことになった。

では、一緒に旅行に行った2人を仮にAさんBさんとしておこう。僕たち3人は夕食に水炊きを喫食し、お酒も入ってそこそこナイスな状態に。店を出たところで、Aさんはガールズバーに行きたいと言う。僕は”夜の店”はたまに行きますが、その中でもガルバはあまり好きではない。Aさんは、ガルバはもとより夜の店全般が未経験だそう。そして、肉体的な行為がある店よりも、酒や喋りが中心のガールズバーに興味があるとのことだ。僕がガルバに行きたくない理由は2つ。先に言った通り、自分があまり好きな業種ではないこと。そして、Aさんがお酒を飲んだ時の酔い方に不安があった。というのも、彼は酔えば酔うほど声が大きくなり口数も増える。そして、普段はむっつり気味だが女性への興味関心も人並み以上とお見受けする。そんな人間が初めてガールズバーに行ったらどうなるか、予想するのはあまりに容易い。

Aさんと僕が埒の明かない「行きたい vs 行きたくない」論争を繰り広げていると、Bさんの堪忍袋の尾が切れた。ウダウダ言ってねーでとりあえず行ってみればいいじゃん的な雰囲気になり、僕としては渋々のガルバへGo。この手の店の予約に1番慣れているのが僕だったので、不本意ながら店舗のリサーチは僕が行うことに。60分1セット2000円の爆安店を見つけたので、深くは考えず早さ優先で行き先を決める。2人はセット料金というシステムすらよく分かっていなかったようなので、店に向かう道中にその辺りの基礎知識を解説しておいた。

店に到着。店内のキャパは10人ほどといったところか、カウンターがL字型に配置されていて、先客が数人いた。着席すると、僕ら3人に対してキャストが3人つく。互いに軽く自己紹介を済ませ、乾杯でスタート。ちなみに、僕はこういう場面では鳴瓢(なりひさご)という偽名を使います。苗字としては実在せず、音もかっこいい。あと単純に『ID:INVADED』が好きだから。そんなことはさておき、僕はガルバに行きたくない勢だったので、へそを曲げた子どものように沈黙を貫く。AさんBさんがキャスト陣と談笑するのを横目に、一人物思いに耽る。しまいにはスマホをポチポチし始め、完全にムードクラッシャーだ。しかし、ものの30分もしないうちにAさんは仕上がってしまった。キャストへのドリンクだけでなく、調子に乗ってウイスキーのショットを何杯も入れる。あれよあれよという間に先客の盛り上がりを追い越し、いよいよ危なげな状況に。Aさんは1人のキャストをいたく気に入ったようで、猛アプローチを始める。顔がタイプです→めっちゃ好きです→店外で会いたいです→セックスさせてほしい、と、短時間でものすごい距離の詰め方をする。挙句、カウンターから乗り出しキャストに抱きつこうとしたりキスをしようとしたりするので、僕が何度も強引に引き離す。その後、Aさんはカウンターに並んだドリンクを床にぶち撒けたり、酔いを覚ますために水を飲ませてもすぐ吐き出したりするので、僕による介護&床掃除ふきふきパートが始まった。僕は「すみません…」と謝りながら床を拭き、ちょっと目を離した隙にキャストに接近するAさんを食い止める。

「なんてダル客だ…これはある程度絞らないと割に合わぬ」と感じたのか、キャストがシャンパンを提案してくる。店を汚してしまったので”お掃除代”も兼ねているのかもしれない。上機嫌なAさんはこの申し出を受け入れ、皆で乾杯することに。僕のグラスにはノンアルの飲み物を入れてもらうよう頼んだ。Aさんはその後も飲みに飲み続け、さすがに手に負えない状況になった。ここまで全く話に出てこなかったが、BさんはBさんで場内指名したキャストと楽しげに話していた。店を出ようと提案するも「先に出ていてくれ」と言うので、Aさんと僕2人分の会計をお願いする。キャストにクレジットカードを渡すと「あの、まだ届いてないんですけど、さっき頼まれていた出前の料金も含めて大丈夫ですか?」と驚きの一言。僕が気付かぬうちに出前など頼んでいたのか…。いったい何を頼んだのか知りませんが、そんなものを食べている暇はないので「全部込み込みで大丈夫です」と答える。して、約2時間滞在したお会計額はなんと15万円。僕はセット料金のみなので、おそらく5000円前後。とすると、Aさんが1人で14万円以上使ったことになる。しかし、お会計額に驚いている場合ではない。さっさとこの酔っぱらいをどうにかしなければならない。店の外へ出そうにも、これも一筋縄ではいかない。僕の胸ぐらを掴み「おい、俺はまだ帰らない、エッチをさせろ、どうすればエッチできるんだ」とダル絡みが止まらない。エレベーターまでお見送りをするキャストにも抱きつこうとしたので、僕が最後のブロック。店を出ると、雑居ビルの前で豪快にリバースするAさん。店内でなくてよかった…いやだめだ、路上でも嘔吐はご法度。しかし、喝を入れても聞き入れる余裕はなさそうだった。

しばらくするとBさんも店から出てきたので、どうにか一緒にAさんを介抱してもらうよう頼んだ。が、どうも様子がおかしい。目の前にあるうどん店を指出し「うどんを食べよう!」と突然提案しだした。彼の顔をよく観察してみると、肌は赤らんでこそいないが黒目が据わっているし、焦点も合っていない。「ああ、こっちもか…」僕は頭を抱えた。知らぬ土地の歓楽街で2人の大人を介抱しなければならない。移動途中にAさんが何度か嘔吐するものの、なんとか2人を人気の少ない場所まで連行することに成功。「水を買ってきてくれ」と頼まれたので「絶対ここから離れるなよ」と念を押してコンビニへ駆け込む。いつ暴れ出すか分からない酔っぱらいをコンビニ店内には連れて行けない。が、酔った者に人間の言葉が通じるはずもなく…水を買って戻ってくるも2人の姿はない。辺りを見渡しても、目の届く範囲では捕捉できなかった。

まずい、歓楽街に酔っぱらいなどいくらでも存在するが、この時の2人ほど出来上がった人はそう多くない。傍目から見てそれくらい危険な状態だったのだ。放っておくわけにはいかない。通話をかけても出ないので、ひとまず「正気に戻ったら連絡しろ」とだけLINEを残し、中洲の街を1時間以上探し回った。キャッチの兄ちゃんに千鳥足の2人を見かけなかったか尋ねるも手がかりはなし。困った...僕もさすがに疲れたので、一旦ファミレスにでも入って休もうかと思ったところ、AさんからLINEが送られてきた。「大丈夫か?」彼から届いたこの一言に、僕は安心しなければいけなかったのでしょう。けれど、僕はそんな出来た人間ではない。何が「大丈夫か?」だ!!こっちがどれだけ探し回ったと思っているんだ!そう思ってしまった。急いで通話をかけても出る様子はない。「宿に戻っていてくれ」という旨のメッセージも添えられていたので、呆れた僕はさすがに探索を諦めて宿に向かうことにした。

大通りでタクシーを拾い、運転手に宿の住所を伝える。後部座席で一息つくと、なんだかドッと疲れが押し寄せてきた。10分もしないうちに宿へと辿り着き、部屋の扉を開けて僕は絶句した。なんと、2人の靴があるではないか。僕の必死の探索も虚しく、2人はとっくに宿に戻って眠っていたのだ。しかも、酔っ払っていたせいで2人の荷物が僕のベッドの上に散乱している。怒る気力も起きなかった。淡々と服を脱ぎ、サッとシャワーを浴びて僕もベッドイン。Aさんが耳を劈く程の大いびきをかいていたので入眠に苦労しましたが、疲労のおかげでなんとか眠れました。

大学生なら「若気の至り」で許されるかもしれませんが、30にもなるいい大人がこの始末。幼馴染のそんな姿を目の当たりにし、僕はとても悲しかったよ。さて、またAさんBさんの2人と会う機会はあるのか…。それは誰にもわからない。ひとまず、福岡自体はとてもよい街でした。今度は1人でも訪れてみたいです。

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