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今年出会った”G” 1匹

ついこの間まで北陸は灼熱の天然サウナみたいな状態でしたが、急に涼しくなりました。毎年同じことを体験しているはずなのに、やっぱり季節の変わり目は温度変化にビビるものです。しかし、一度涼しくなってもまた猛暑に逆戻りなんてザラ。振り回されて体調を崩さないように気をつけなければいけない。ですが、僕の身体は経験上こう感じている。今年はもう暑くならない。あとは秋一直線だと。とすれば、”アイツ”の話をしてもいいんじゃないか。暑い時期、ちょっと気を許した深夜に突如として現れる憎まれっ子。そう、”G”だ。具体名を表記するとセンシティブワードとして引っかかってしまう恐れがあるので俗称で失礼するが、察しのいい皆様方ならお解りでしょう。これほどまで気温が下がれば、もう今年は彼奴とはオサラバのはず。ということで、まだ年明けまで3ヶ月ほど残っていますが総決算です。

時は遡ること2ヶ月。いよいよ夏も本番という7月の下旬に事は起きた。その日僕は、いつものように寝るための準備をしていた。歯ブラシを口に運び、シャコシャコと磨いていた時のことだ。考え事をしながら歯磨きをしていたので、歯ブラシを持つ手が止まることが何度かあった。当然、その間は歯を磨く音はしない。夜ということもあり、他に雑音もなく静まり返っている。その刹那、僕はかすかに聞こえた微音を聴き逃さなかった。「カサッ」確かに僕の立っている右後ろあたりから聴こえた。高さは・・・僕の頭よりすこし上くらいか。おおよその状況は理解できていたが、気のせいであってくれと僅かな期待を胸に、恐る恐る振り返った。目が合った。

どうしてだろう。毎年夏になれば漏れなく遭遇しているのに、どうして警戒を怠ってしまうのだろう。喉元過ぎれば熱さを忘れるとはまさにこのことだ。しかしよく考えてみると、Gなどという存在は僕たち人間にとって何の脅威でもない。物理的なダメージを与えてくるわけでもなく、畑を食い荒らしたり家を蝕むわけでもない。たとえばクマやヘビと出会ったならば、僕たちは瞬時に臨戦態勢に入る。こいつらはヤバいぞと警戒するように遺伝子にプログラムされているから。これは僕たちの祖先らによる生存のための遺産とも言えるだろうが、ことGに関してはどうだ。僕たちの祖先も皆ひとしくGを恐れてきたのか?そんなはずはなかろう。思うに、彼奴らは人間の生活環境に出現しすぎなのだ。想像してみてほしい。あのサイズの昆虫が自分の生活している空間に現れたら、蝉だろうとカブトムシだろうとぎょっとするのではないか。だが、蝉やカブトムシがキッチンに出現することはまず無い。あればとんだ珍事だ。Gだから、ではない。運が悪かったな、Gよ。お前以外にも同じくらいのサイズで頻繁に現れる侵入者がいれば、お前だけが槍玉にあげられることもなかったろうに。あるいは我々にGを崇拝する文化や風習があれば、状況は変わっていただろう。
というわけで、今年邂逅を果たした”G”は1匹のみでした。はてはて、来年はどうなることやら。

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