終わらない夢

昨日夜、ジャニー喜多川さんの逝去がジャニーズ事務所から発表されました。

この出来事が、どれくらい僕の人生に影響を与えるのか?

未だかつて経験したことがないぐらい?
家族が亡くなったぐらい?
根本から僕が変わってしまうぐらい?
青春がすべて消え去るぐらい?

単純な言葉で言い表せるものではありません。

何十分も声を上げて泣き続けるなんてことは人生の中でなかなかないので、僕自身この先何がどうなってしまうのか、全く分かりません。それでも、今の感情を、僕の持てるすべての力をぶつけて言葉にしていきたいと、そう思っています。「全力で表現すること」が大事だと教えてくれた人こそ、紛れもなくジャニーさんだったので。

とはいえ、正直「誰かに理解されよう」とか、「誰に慰めてもらおう」とか、そういう感情はさほどありません。オタクの独り言だと、そう思ってもらえれば。

幕の下ろし方

ジャニーさんは、東京オリンピックへの想いをずっと表現し続け、「世界中の若者が東京に憧れる場」として東京オリンピックを位置付けてきました。

「Twenty・Twenty」というユニットの構想を発表することもありました。東宝と松竹というライバル社による合同会見の実現に尽力し、2020年に銀座エリアの劇場で公演を行うことを目標に掲げることもありました。舞台では、キャッチコピーに入れるのみならず、「2020」という数字そのものをタイトルにつけることすらありました。

「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ。」というキャッチコピーを見て以来、東京オリンピックをずっと楽しみにしてきた僕にとって、そんなジャニーさんは、「夢の力」を信じてくれる、数少ない、貴重な大人でした。

そのように見てきた僕にとって、このタイミングでのジャニーさんの死は「無念」でしかありませんでした。

しかし、そんな僕の感情とは裏腹に、ジャニーズ事務所は、ジャニーさんの最期をこう表現しました。

新旧、様々な楽曲の流れる病室におきまして、年長のタレントからJr.までが同じ空間でジャニーとの思い出を語り合う、微笑ましく、和やかな時間が流れていきました。片時もジャニーが寂しい思いをしないよう、仕事の合間を縫ってタレント達は入れ替わり立ち替わり病室を訪れました。ジャニーの好物を皆で賑やかに食べることが日課となり、その光景と匂いからまるで稽古場にいるかのような感覚を覚え、皆、懐かしい記憶がよみがえりました。ときに危険な状態に陥ることもございましたが、タレント達が呼びかけ、体を摩るたびに危機を脱することができました。タレント達と過ごすことでジャニーの容体が一時的に回復するという奇跡的な出来事を繰り返し目の当たりにし、改めまして、ジャニーのタレントに対する育ての親としての深い愛情と子供達との絆の強さを感じました。そして、最愛の子供達の愛に包まれながら、2019年7月9日午後4時47分、ジャニー喜多川は、人生の幕を下ろしました。(事務所の発表より

倒れてから亡くなるまでの3週間を「微笑ましく、和やかな時間」と表現する………。これを見て、僕はジャニーさんのインタビューを思い出しました。

世界には悲しみもあるけれど
僕たちのショーはハッピーエンドで終わります
世界もハッピーエンドであってほしい
ショービジネスに携わる者としての 一つの願いです
(昨年 1 月 26 日放送「ニュースウォッチ 9」より)

ジャニーさんは、ハッピーエンドにこだわる人でした。タイタニック号の沈没や戦争の内容を取り扱ったとしても、最後には明るい未来を描いて終わるのがジャニーさんの舞台でした。

「悲しみ」以外の何物でもないジャニーさんの死を、いかにして未来へとつなげていくか。無駄にせずに生きていくか。ハッピーエンドへと結び付けていくか。それを探し続けることこそ、残されたものの使命だ、と。

そんな思いを、僕はこのコメントから強く感じました。

僕にとって、あまりにもジャニーさんは偉大な存在だったため、その喪失感から、「エンタメで人を救う」という自分の描いた未来を見失いそうになることが、これから何度もあると思います。
でも、絶対に前に進み続けなければいけないと、歩み続けないければいけないと、そしてそれこそがジャニーさんが数々の舞台で描いてきた「Show must go on」なのかもしれないと、そんなことが脳内をよぎりました。

そして、ここで振り返ってみると、この3週間にジャニーズ事務所のタレントの発してきた言葉には、“Show must go on”の精神を強く感じることが多くありました。

Show must go on

この話で暗い会見になるのはジャニーさんも望んでいないと思いますので、明るく楽しくやりたいと思います(ニュース記事
くも膜下出血で倒れたと言うことですけれども、これはジャニーさんの教育のひとつじゃないかなと思って。こういう状況下にだれがどんなことを言うのかとか、どういう臆測がでるのか。その場合、ぼくらはどういう態度をとるのべきなのか、どうするべきなのかというのが、教育だと思っているので、この状況をしっかりと見ていきたい。エンターテイメントはジャニーさんに教わったので、全うしていくのが僕らの役目かなと思っています。(ニュース記事より

ジャニーさんの想いは、確かにタレントに受け継がれています。

この3週間に放送された数々の音楽特番でも、ジャニーズ事務所所属タレントは明るく振舞い、“Show must go on”を体現していました。各種報道に気を病みそうになっていた自分自身も、こういった姿を見て、かなり勇気づけられました。タレントの皆さんには心から感謝しています。

大人は子供には帰れない

この言葉は、近年ジャニーさんが色々な作品で取り上げてきたものです。

正直なところ、このメッセージを見るたびに、僕はこれが「遺言」になってしまうのではないか…という恐怖をもち、目を背け続けてきました。

中でも、ジャニーさんが製作総指揮を務めた映画「少年たち」の最後に流れた「子どもは大人になれるけど、大人は子供には帰れない。だからこの想いを、時計を止めて…」というメッセージは、心にくるものがありました。

また、音楽特番でジャニーズミュージカルメドレーを披露した時は、「これからの歴史は未来の宝である子供たちに託そう。そして作られる世界はきっと素晴らしいものになるはずだ。」というジャニーさんの考案したセリフが挿入されることもありました。

これらは、流れ行く時の流れの残酷さを表しているだけでなく、「子どもたちが作り上げる未来を信じ切っている」というジャニーさんの特徴も表しています。

そして、僕はこういったジャニーさんの純粋さやポジティブさを心から信じてきました。世間では叩かれがちなモラトリアムが許容されるような、そんなジャニーズ事務所が大好きでした。

「見つけてくれた」

僕が尊敬しているKing & Princeの永瀬廉くんは、以前、感謝の気持ちを伝えたい人としてジャニーさんを挙げ、「見つけてくれてありがとう」と述べています。

ジャニーさんは、直接的に僕の人生を変えてくれただけでなく、永瀬廉くんを通じて、間接的にも僕の人生を変えてくれました。

学校に行くのがつらい時期にはMr.KINGの曲に励まされ、自分の立場に迷ったときは雑誌で永瀬廉くんが答えたことが参考になったり…。

ジャニーさんは何より人間性を重視し、タレントを育ててきました。

昨年1月に放送された「ニュースウォッチ9」のインタビューにおいて、ジャニーさんは、アイドルにとって大切なことはやるべきことに真剣に向き合う姿勢だと答えています。また、ジャニーさんの「人間性を重視する」方針は、この度の事務所のコメントでも触れられています。

ジャニーのエンターテイメントに欠かすことができないのはタレントです。これまで多くのタレント達を生み育ててまいりましたが、一貫しておりましたことは、タレントとしてだけでなく、一人の人間として成長することを強く願っておりました。(事務所の発表より

このような教育方針のもとで育てられてきたからこそ、永瀬廉くんは僕が真っ直ぐ尊敬できるようなアイドルになったんだと、そう思っています。

平和で希望に満ちた未来であり続けること

ジャニーズ事務所によるコメントには、こういう文章も見られました。

ジャニーが私達に最後まで言い続けていたことは、自身の意思を受け継いでくれるタレントを絶え間なく育成し、そのタレントと社員が、エンターテイメントを通じて世界中の皆様に幸せをお届けすることこそが、ジャニーズグループとして決して変わることのない思いであるということです。そして、世の中がいつまでもエンターテイメントを楽しむことができる平和で希望に満ちた未来であり続けることを心から願っておりました。これからタレントと社員がその意思を受け継ぎ、一人一人が役割を果たすことで世界中にジャニーの願いが届きますよう、タレントとスタッフ一丸となり、精進してまいりますので、何卒ご指導賜れますと幸甚に存じます。

ジャニーさんは、太平洋戦争時に空襲を経験したことをもとに、舞台で「平和・反戦」をずっと描き続けてきました。特に近年はその傾向が強く、「戦争は若者の未来を奪う」というメッセージを色濃く打ち出していました。

SMAPの「Triangle」が好きで、平和への想いを伝え続けることの意義を感じている僕としては、こういったジャニーさんの想いに強く共鳴し、筑駒メッセの展示の最後に「争いのない明るい未来の実現」について言及するなど、できる限り反戦の意思を表現してきました。

どうか、ジャニーさんの平和への想いをジャニーズ事務所の社員とタレントが全面的に受け継いでほしいと、そう願っています。

ジャニーさんのShowを未来へ

ジャニーさんは、これまで数多くの舞台を手掛けてきました。そして、僕はそんなジャニーさんの意向が強く感じられる舞台を、コンサートより好んできました。

ジャニーさんは、世界的なミュージカル作品「ウエストサイドストーリー」の映画版をきっかけにして芸能界に進出しました。そして、ジャニーズ事務所は今でもその流れを受け継ぎ、文化面では舞台を中心とした形をとっています。
その証拠に、舞台でよく披露されてきた曲をジャニーズ全体のカウントダウンコンサートで毎年のように披露したり、グループでの舞台を続けてきた少年隊を文化面のトップに据えてその楽曲を多く披露したり…といったように、他事務所の男性アイドルとは大きく違う体制がとられてきました。

そして、今年秋に帝国劇場と日生劇場で上演される「DREAM BOYS」と「少年たち」は、ジャニーさんが演出・脚本を務めている作品です。

この記事を書いているタイミングでは、これらの作品においてジャニーさんの後任を誰が務めるのか、そしてどんな作品に仕上がるかは分かりません。

僕自身、あまり収益にならない舞台をこれからのジャニーズ事務所がどの程度大事にしてくれるのか、少しばかり心配です。

でも、舞台をやらなくなったら、もうそれはジャニーズではなくなってしまいます。文化的バックボーンがなくなってしまいます。
きっと、そのことを分かっている人があの事務所にはたくさんいると信じています。

それに、ジャニーズには大きな希望があります。滝沢秀明さんです。

文化の継承

昨年芸能界を引退した滝沢秀明さんは、現在ジャニーズJr.のプロデュースを行っています。(ジャニーズJr.というと、一般的には研究生的なニュアンスで理解されることが多いですが、どちらかというとジャニーズの文化の基礎であり中心を担う存在です)

これまで、ジャニーさんは経営に関わらず、ジャニーズJr.のプロデュースに専念してきたことを考えると、この役割を滝沢秀明さんが担うということは、すなわち「文化の継承」を意味します。

めまぐるしく進化する芸能の世界で、ジャニーズ事務所が変わらず皆様により良いエンターテイメントをお届け出来るよう経営面では藤島ジュリーが日々精進しておりますので、私は一途にプロデューサーとしての位置をKeepし、数多くの創作活動を続けることが出来ております。(社長メッセージより

そして、滝沢さんの功績もあって、今年に入ってからジャニーズJr.はドラマ出演やCM出演が相次いでいます。そして、5月には念願のジャニーズJr.単独東京ドーム公演が決定したばかりでした。

僕は、そんな滝沢さんの力があれば、きっとジャニーズ事務所の文化は保たれ、発展していくと思っています。

終わらない夢

そして、ジャニーさんは、生涯プロデューサーであり続けました。

ジャニーは病に倒れる直前まで、劇場やスタジオに赴く日々を過ごしておりました。特に公演を目前に控えたJr.達に、連日、熱心に指導する姿はジャニーのプロデューサー人生そのものであり、まさに生涯プロデューサーとしての人生を全ういたしました。(事務所の発表より

この文章における「公演」とは、今月18日から始まる「パパママ一番 裸の少年 夏祭り!」を指すと考えられます。この公演は、ジャニーズJr.の“美 少年”や“HiHi Jets”が中心となるものです。

これらのユニットは、高校生世代、つまり今一番若いデビュー済グループである“King & Prince”の1つ下の世代にあたります。そして、この世代が「非ジャニーさん体制でデビューするであろう最初の世代」となります。

そういった彼らが、どのようにジャニーさんの夢を受け継ぎ、どんなエンタメを生み出し、どれだけの人々を幸せにしていくのか………。

僕自身、ジャニーさんの持つ審美眼が失われることや、現副社長による新体制が築かれることへの不安はあります。しかし、「小さなジャニーさん」と言われてきた滝沢さん、そしてジャニーさんが信じ続けた「次世代の力」を信じたい、信じなくては始まらないと思っています。

そして実際、ジャニーズ事務所は通夜・告別式についてこうコメントしています。

通夜・告別式につきましては、ジャニーの子供でございますタレント達とJr.のみで執り行う家族葬とさせていただきますので、何卒ご理解賜りたく存じます。(事務所の発表より

ジャニーさんが「子ども」として大切にしてきたタレントこそ、ジャニーさんを継ぐ真の存在です。今、このことをきちんと理解しているコメントが出ている以上、ジャニーズ事務所は道を誤らないと思っています。きっと大丈夫だと思っています。

We'll Be Together

今年公開され、ジャニーさんが製作総指揮を務めた映画「少年たち」のラストシーンでは、ジャニーズの象徴ともいえる「ショー」が描かれました。

偶然、僕は昨年6月、その場面のエキストラに参加し、撮影現場でジャニーさんらしき方を見かけていました。そして、そこで息をのむほどに豪華絢爛なショーの世界を目の当たりにしました。ちょうどその日が初めてのジャニーズの現場だったこともあり、今でもその景色は鮮明に覚えています。

そして、僕はそんな「努力に裏打ちされた美しさ」が何よりも好きです。儚さと力強さ、そして荘厳さと親しみやすさを併せ持ったショーは我々に大きな夢と希望を与えてくれます。

だからこそ、僕は、そんな美しさを持つショービジネスの世界の中で生きてきたジャニーさんの夢がこれからも描かれ続け、「終わらない夢」になることを願っています。

そして、ジャニーさんが安らかな眠りにつかれますよう、心からお祈り申し上げるとともに、これまでのご尽力に心から感謝申し上げます。

2019年7月10日

We'll Be Together/少年隊
作詞:ジャニー喜多川・小倉めぐみ/作曲:Joey Carbone

季節と季節はめぐりめぐって
君とまた出逢うでしょう
別れたその時より
素晴らしい場面
僕のこの目の前に
やって来ます
いつかきっと…

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