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雑感拾遺:“ただあること”を聴く

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Ecrits divers : 日々の生活の折ふしに聞こえてくる“ただあることども”に耳を傾ける
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#太平洋戦争

【新刊案内】台本集『赤ずきんと死神』

筆者の作曲した歌劇(オペラ)等の台本について、このたび電子書籍の形で公開することと致しました。 ※なお本電子書籍は Kindle Unlimited に対応しております。 一人の少女の旅を描いたモノローグ・オペラ《赤ずきん》(2007) のほか、古典落語に題材を仰いだモノドラマ《死神》(2009) と《一眼国》(2013)、同じく古典落語を題材としたオペラ作品(〝ラクゴ・オペラティック〟と銘打たれておりますが)《なりひら・こぉど》(2013) と《鰍沢綺譚》(2013)

大戦末期の翳:矢代秋雄《ソナチネ》

矢代秋雄《ピアノのためのソナチネ》(1945) 「ラヴェルの《ソナチネ》に主題が似ている」事ばかりが取沙汰されがちな矢代秋雄 (1929-76) の〝処女作〟だが、「左手のオスティナートの上で自由な曲線を描く右手の旋律」という発想は、リズムの工夫を好んだ作曲者の嗜好がすでに顕れているといえる。また第1楽章第2主題や第3楽章には、作曲時の先端であったヒンデミットの音楽の趣も感じられたりもする(本作に続く《24の前奏曲》には《ルドゥス・トナリス》を思わせるような実験性もみられる