Marvel Snapについて

この記事は某鯖Advent Calender向けの記事です。 

こんにちは。皆さんMarvel Snapというカードゲームを知っているだろうか?

何それ?知らん?マーベル興味ない?帰ってエ○メンコやる?

まあ待って欲しい。このゲーム、題材に惹かれないからと一蹴するにはかなり惜しいゲームだと思う。実際、私もプレイ前はマーベルのことなど1ミリも知らなかったがめちゃくちゃハマったし、タイムラインにもスナップ中毒者が散見されるようになった。ちなみにマーベル自体は未だに読んだことがないので、完全に各キャラの印象がゲーム内の効果で決まってしまっている。コスモはカス 

・どんなゲーム?

カードゲーム、の中でも相当シンプルな類。基本的なルールは、

  • 3ヶ所のロケーション(カードをプレイできる場所)にカードを置いて、せーので自分と相手で同時に公開

  • を6ターン繰り返す

  • カードにはそれぞれコストとパワーと能力が設定されている。コストまわりはHSとかシャドバと同じ感じ。

  • ゲーム終了時に3つのロケーションのうち2つ以上で相手よりプレイしたカードのパワーの合計値が大きければ勝ち(1ヶ所引き分けなら総パワー)

これだけ。1戦も5分かからずに終わることが多いお手軽ゲームだ。

なのに何故中毒性が高いのか?思うに、その鍵となっているのは、発生する適度な読み合いとそれを一瞬で無に帰すバカのランダム性、制限あるカードプール、そしてゲームタイトルともなっているスナップシステムである。

・誰のせいでもないランダム性にはキレる気になれない

基本的に、カードゲームというものは運ゲーである。

もちろんデッキビルドの段階でもプレイヤーの腕や経験が出るし、遊戯王やポケモンのようにデッキ全体を使って戦うようなカードゲームも最近はある。

それでも、どんなカードゲーマーだって一度は「事故」というものを経験したことがあるはずだ。遊戯王なら初動や誘発が引けない、ポケモンならキーカードがサイド落ち、MtGなら土地が引けない/土地しか来ない。初心者からトッププロまで、等しくこの事象には悩まされるものだ。

加えて、デジタルカードゲームでは更なる運ゲー要素が加えられているものもある。ハースストーンではヨグサロンに辛酸を舐めさせられたプレイヤーは数知れず、MtGAでは最近デジタル限定環境専用カードで高いランダム性を有するカードが登場しているが……あまり評判は芳しいとは言えない。

カス

こうして運に翻弄されたプレイヤーは顔を真っ赤にしながら台パンしてクソゲーと叫ぶことになるわけである。

さて、ではMarvel Snapではこの点はどうなっているのだろうか?

まずデッキビルディングについて。このゲームのデッキはカード一種類に付き1枚までの12枚で構成される。初手は3枚(マリガンなし)、初ターンからドローが出来るので基本的にはゲーム終了までに9枚を引くことになる。確実にとまではいかないが、まあそれなりの確率でデッキ作成時の思惑に沿った動きが出来る。

そして肝心のカードから生み出されるランダム性であるが、これはぶっちゃけそこまで大きくない。パッと思い浮かぶところでは、

有能1コスト代表

手札にランダムなカードを加えるとか、

ガチャデッキ御用達

デッキからランダムなカードを出すとか、まあそんなところである。前者はコストの踏み倒し効果なんかは起きず、後者はデッキの構築段階から気を使う必要がある。いずれにせよいわゆる「ただ強」なカードではなく、かなり気をつけてカードデザインされていることが伺える。更に、

事故回避三連星

こんなランダム性に真っ向から歯向かうようなカードたちも存在している。どれもコストに求められる最低側のパワーは有しており、決して使い所のないカードではない(特に一番右のカードはよく使われる)。余談だが、一番左のクイックシルバーというカードはこのゲームのテスト時にマリガンを実装してくれという声が多く上がった際にその解決策として作られて初期デッキの一枚となったらしい。

よくカードゲーム(や格闘ゲーム)では相手の嫌がることを積極的に行うのが強い動きであるとされ、時にその様相はクソの投げ合いなどとも称されるが、基本的にこのゲームのカードには特に相手の盤面に対して数の面での大きな影響を及ぼす(破壊やバウンスなど)ものはあまり存在せず、自分のハンドや盤面をわちゃわちゃするものばかりなので、何かが起きたらそれは大抵自分のせいなのである。裏返すと、対戦相手が原因のイライラというものが他のゲームに比べ極めて少ないというわけだ。カードのリードデザイナーはかのハースストーンの大戦犯で有名なベン・ブロードということで、あのDCGで培われた経験や反省が存分に活かされたデザインであると感じる。

あれ?見出しの割になんかランダム性低くね?

そう、カードの面でのランダム性はそう高くない。カードの面では。

このゲームにおけるランダム性の主な犯人は、ロケーションである。すなわち、クソを投げつけてくるのは相手プレイヤーではなくベンブロードその人ゲームシステムなのだ。

先程軽く触れたが、Marvel Snapは3ヶ所のロケーションにカードをプレイするゲームである。具体的には、

ターン1開始前の画面

こんな感じでゲーム開始時には全てのロケーションの正体が伏せられており、ターン1~3の初めに左から1つずつ中身が明かされていく。

このロケーションの効果というものが実に曲者であり、

盤面めちゃくちゃになりがち

効果をニ回発動させたり、

小学生?

百万点くれたり、

6ターンって言ってるだろ

ターン数を変えてきたり、

ロケーションにカードを置くゲームなんですけど

カードを置かせてくれなかったり、

3つのロケーションがどうしたって?

他のロケーションを破壊したり、

ポンコツ

急にオートプレイになったりするのである。

このようなロケーションが実に50種類以上存在し、アプデのたびに更に増えていく。これらのロケーションは公開されてから初めて効果を発揮するため、未公開ロケーションにカードをプレイすることが得になるか裏目に出るかはその時になるまで誰も分からない。カード一枚から出るランダム性なんて鼻で笑うような要素がバカバカお出しされるのである。しかも自分も相手もこれに対してどうすることもできず、その利益も不利益も等しく被ることになる。そういうわけで、それが原因で負けてもまあ運が悪かったなと流すことが出来るというかそうでもしないとやっていられないし、逆にロケーション効果をうまく使って勝利したときには俺このゲームうめえとドヤ顔できるわけだ。

加えて、当然ながら特定のロケーションに相性のいいアーキタイプ、悪いアーキタイプももちろん存在するので、メタが非常に固まりにくい(たまにピックアップロケーションといって特定のロケーションが高確率で出現する期間が設けられる)。勝ったら実力、負けたら運ゲーと合法的に叫ぶことが出来るゲーム、それがMarvel Snapである。

・カードプール

このゲームでは、デッキを組むためのカードを集める仕組みは少々特殊になっている。

ゲームをプレイすると、「ブースター」という素材が手に入る。これは所持しているカードの枠を変えることのできるもので、これとクレジット(ミッションなどから手に入るゲーム内通貨)を消費することで枠レベルを上昇させられる(あくまでも見た目が変わるだけで性能は一切変わらない)。すると消費したクレジット量に応じてコレクションレベルというものが上昇し、これが一定レベルに達するごとに新たなカードがランダムで獲得できる、といった感じである。

加えて入手できるカードプールもコレクションレベルでいくつかに分かれているのだが、その一番うしろのプールではその全てのカードを手に入れるには相当長いプレイ時間が必要である。すなわち、「このデッキにはあのカードが欲しいけど持ってないからこれで代用できないかな……」みたいな、ガキの頃にカードゲームを楽しんでいたときのような感覚が味わえる。

これは果たしていい点なのかという評価は人によって分かれると思うのだが、私個人としてはこのゲームの対戦に飽きさせず、また疲れにくくさせる良い要素だと思う。他のカードゲームのラダーを回していて、当たる相手がどいつもこいつもメタデッキやどこぞの大会の優勝デッキのコピーばかりで辟易した経験はないだろうか?このゲームでは自分も相手も(大体は)不完全なデッキを回しているので、そのような疲れは非常に感じにくいのである。加えて新カードを入手してちまちまとデッキをアップデートする楽しさもあり、また全カードにアクセスできるプレイヤーは極端に少ないためこれもメタの研究の低速化に一役買っている。かつてはLegends of Runeterra(LoR)が似たような試みを行っていたが、あれよりもプレイヤーから上がっている不満の数はかなり少ないと感じる。

ちなみに、このゲームの課金効率はバトルパス等一部を除きすこぶる悪く、裏を返すと無・微課金プレイヤーにめちゃくちゃに優しい。そういう意味でもおすすめできる。

・スナップシステム

そしてこのゲームのラダーの根幹をなすシステム、それがスナップシステムである。

一般的なDCGのラダーでのポイント増減を考えてみて欲しい。大体のゲームでは勝って+2点、負けて-1点、あるいは高ランク帯になると勝ち負けどちらでも1ポイントずつ増減といった感じではないだろうか?

一方このゲームでは増減するポイント(キューブと呼ばれる)にかなり幅がある。キューブ10個でランクが1つ上がるのだが、一戦でのキューブ増減は最大で驚きの±8個だ。そのシステムはどちらかというとDCGよりもポーカーに近い。

まず、基本の増減はキューブ1個。プレイヤーが二人とも撤退(いわゆる降参)せずにゲームが終了すると×2。そしてプレイヤーがスナップすると×2、お互いにスナップした場合はさらに×2。合計で最大8個、という形だ。そう、このゲームのラダーでは勝ち負けで変動するランクポイントを「賭ける」ことができるのである。これがこのゲームの駆け引きの奥深さに一役買っている。

プレイヤーはゲーム中任意のタイミングでスナップを行うことができ、これにより試合結果で変動するキューブが倍になる。スナップを仕掛けられた側はその通知を見てこの勝負に伸るか反るかを考え、付き合えないと判断したなら「撤退」する。スナップによる賭けキューブの増加は次ターンから反映されるので、スナップ通知が来たタイミングで退くことを選べば失うキューブは一つで済む。故に撤退したプレイヤーに対し、このゲームは他のゲームのようにお前は負けたのだということを突きつけてくるのではなく、ただ「撤退!」の三文字を表示する。

このシステムが何を意味するかというと、プレイヤーはラダーを安定したデッキだけではなく大博打デッキでも楽しむことが出来るということである。極論、(こちら側がスナップしたゲームに相手が毎回付き合ってくれるなら)8戦に1回勝てればランクは上がっていくのだ。このため、このゲームのラダーの対戦環境の多様性はかなり幅広い。また、勝ち目がないと判断して撤退する際のハードルも、失うキューブ数の面でも撤退か敗北かという表現の面でも低くなっている。このあたりが高速でラダーを周回していても疲労感を感じにくい理由だと思う。

以上が私の考えるMarvel Snapの長所である。この記事を読んで少しでも興味を持っていただけたなら幸いだ。是非とも実際に一度プレイして、そして対戦相手もろともベンブロードにクソを投げつけられてみて欲しい。


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