MtGの色んなデッキを紹介する


0.まえがき

この記事は某鯖アドカレに向けたものです。

突然だが、皆さんカードゲームは好きだろうか?

私は好きだ。リアルのイベントに出るほどではないが、それなりに色んなカードゲームを渡り歩いてきた。


勇気出してイベント行ったら不人気すぎて開催中止になってた
金欠学生の強い味方

で、その色々の末、現在メインで腰を据えているのがマジック・ザ・ギャザリング、通称M:tGだ。おそらくある程度カードゲームをやっている人なら一度は耳にしたことがあるんじゃないだろうか。TCGのさきがけとも言える、カードゲームの元祖だ。最近は迷走気味だが。

1993年に発売が始まり、「世界でもっともよく遊ばれているTCG」としてギネス世界記録にも登録されているだけあって、様々な国で親しまれている。

が。

その一方で、日本でTCG、あるいはカードゲームと聞いて真っ先にMtGをあげる人はおそらくかなり少ないのではないか。大概の方は遊戯王、もしくはポケモンと言うだろう。さらにデュエルマスターズが続いて、MtGが出てくるのはその後、ヴァイスシュヴァルツやウィクロスと並ぶくらいではないだろうか。DCGを含めればシャドウバースにハースストーンも割り込んで順位はもっと落ちるかもしれない。おまけに最近はリアル店舗でも取り扱いをやめる店が続出している有様。経営戦略もうちょいどうにかせーよウィザーズ。

この記事を書くきっかけになったアドカレが公開されている某鯖でもプレイ人数はやはりそう多くない。遊戯王シャドバデュエマハースに続いて5番目くらい?ウィクロスの方が多いか?

日々#カードゲームやり取り用 で喚いている身としてはやはり愚痴が伝わる相手同好の士は多ければ多いほど良いというもの。ではこのゲームに興味をもってもらうにはどうすればよいか?と考えた時、自分がMtGに興味を持つきっかけになったのはデッキの多様性とwikiの圧倒的な情報量にあったなぁ、と思い至ったのでこの記事を書き始めたというところだ。MTG wikiは偉大。

なお、デジタル版であるMtGアリーナが主戦場の人間が書いているので、ほとんどのデッキについての説明はwikiの受け売りになる。初出のカード名や用語などなどには逐次リンクは貼っているので興味を持ったら是非そっちも読んでみてくれよな!

なお、ゲーム自体のルールとかそれぞれのカードが持つ色の役目(カラーパイ)とか話し始めるとこれ以上にとんでもない分量になるので、興味を持っていただけた方は各自で調べてみてほしい。基本的には他のカードゲームにおけるマナが土地というカードにより代替され、1ターンに1枚までしか置くことができないとだけ覚えておけばよいと思う。

0.5 フォーマット

いよいよ紹介、の前に、一応このゲームのデッキを構築する上でのルールであるところのフォーマットについて軽く説明しておこうと思う。シャドバにおけるローテーションとアンリミテッドみたいなもんである。興味がない方はすっ飛ばしても大して問題ないと思われる。

1.スタンダード

もっとも使用可能なカードが少ないフォーマットで、現在のルールでは大体直近3年に出たカードが概ね使用可能。通称スタン。毎年カードプールが変わるのでメタも流動しやすく、新パックの影響も大きい。公式大会で最もよく採用される。制限カードは存在せず、メタを鑑みて禁止カードのみがたまに制定される。というか後述のヴィンテージ以外では制限カードを採用しているフォーマットはない。

2.パイオニア

2019年10月に制定された、もっとも新しいフォーマット。2012年10月に発売されたラヴニカへの回帰というカードパック以降のほぼすべてのカードが概ね使用可能でローテ落ちはない。後述するモダンというフォーマットが、当初の制定理念を逸れて大怪獣バトルじみてきたことから新設された。多分。制定当初は誰がやるねんこれみたいな雰囲気だったが、ウィザーズが頑張ってテコ入れして大会で採用したり構築済みデッキ出したりした結果まあまあ人口が増え、今でも結構活気がある。パイオニア含めローテーションが起きないフォーマットをまとめて下環境と呼ぶことがある。

3.モダン

2011年8月に制定されたフォーマットで、2003年7月発売の第8版以降に発売されたほぼすべてのカードが使用可能。ローテ落ちなし。制定当初の下環境であったレガシー、ヴィンテージ(またまた後述)とスタンダードの間でカードプールの差が広くなりすぎ、「スタンではローテ落ちしたが下環境では力不足なカードをまだ使いたい!」という要望に応えて(要出典)制定された。
そういう経緯でできたので(当初は)結構真面目にメタが監視されて禁止カードが制定されていた、らしい。基準としては「安定して3Tキルできる」「レガシーのデッキとほぼ変わらないのが作れる」その他メタ占めすぎなど。ちなみにMtGのターンの数え方は基本的に先攻1T→後攻1T→先攻2T……なので、つまり後攻の人間がカードを3枚引く前にキルターンが来るようなデッキは不健全と認定されるということ。
ここ以下の環境ではフェッチランドという土地が利用できるため、容易に3色以上の多色デッキが成立する。もちろんそれを狙った土地に干渉する手段を搭載するデッキも多い。

4.レガシー

今までに世に出たカードがほぼ全部使用可能なフォーマット。統率者という多人数戦向けフォーマット用にデザインされたパックのカードすら使用可能。あと他作品とのコラボパックは大体統率者向けなので、タイマンで使おうとすると候補はここ以下になる。最近だとジュラシックパークとかドクター・フーとかね。

えっワイも使えるんですか!?

モダン以上に広いカードプールであることからとんでもないコンボデッキが跋扈していると思いきや、バケモンとバケモンが牽制しあって結果的に割と健全なメタゲームになっているとかなんとか。古来のパワカもほぼ使い放題ということで古参おじの人気は高いが、当然そういうカードは安価では出回りにくいので紙での新規参入障壁は高い。公式大会でも、皆無とはいわないが、ほぼ採用されない。
禁止カードの指定基準は「安定して2Tキル」。その他あまりに強すぎ、対抗手段がなくてつまらん、毎回ゲームの展開が一緒になる、等でも指定されるらしい。

5.ヴィンテージ

深淵の底の底。禁止カードは黎明期に存在した「アンティ(賭け)」カード通常のプレイでは使用されないルール変更カード、昨今の情勢的によろしくない名前やイラストのカード、カードを物理的に放り投げるカード、そしてゲームプレイがあんまりにも長引くカードのみ。その他のカードは全て、最低でも制限カードとして1枚はプレイできる。

ゲームはゲームだろと言いたくなるが、欧米ではそうもいかないのだ

皆さんご存知ブラック・ロータスを始めとするパワー9も投入可能な真のドッカンバトルであり、デッキのお値段も青天井。

車どころか下手すれば家が買えるのでは?
流石にちょっと厳しい?

「ベンツは移動にしか使えないがロータスは3マナ出せる/アンリコは3枚引ける」
「デュアランは固定資産税がかからない土地」
「これは消費ではなく投資」
などの迷言も枚挙に暇がない。もっとも投資というのはあながち間違いでもないが。前述のパワー9に含まれるMoxシリーズを筆頭とするマナ加速手段のおかげでワンターンキルが可能なデッキもそこかしこに存在する。このような節操のないカードプールで戦いが繰り広げられているため、制限カードのリストもレガシーの禁止リストとはやや趣が異なっており、メタゲームにはだいぶ差がある。公式大会での(メインイベントとしての)採用歴はほとんど……というかない。一応半公式のような大会は毎年行われていたが、コロナ禍を期にここ数年は開催されていないようだ。

1.コントロールデッキ

1.The Deck

Serra Angel / セラの天使 (3)(白)(白)
クリーチャー — 天使(Angel)
飛行、警戒
4/4

MTG wikiより

1995年あたりに存在した、当時のヴィンテージ相当のフォーマットのデッキ。まず名前がいいよね。The Deckて。

デッキの中身を一言で表せば「グッドスタッフ」となるだろう。パワー9はもちろんのこと、剣を鍬に対抗呪文のような現在でも大活躍のカードや、当時の基準では十分に強力だったセラの天使等のパワカを総動員して相手をコントロールする。

今では完全な上位互換もある(しかもそれでも使われなかった)

当時では貴重なリソース源だったジェイムデー秘本や、逆に相手のリソースを継続して削ることができる破裂の王笏など、"アド"という概念を形にした初のデッキと言える。

2.ドロー・ゴー

Counterspell / 対抗呪文 (青)(青)
インスタント
呪文1つを対象とし、それを打ち消す。

MTG wikiより

1999年あたりのスタンダードで特に隆盛した、青単色のコントロールデッキ。転じて、それと似た動きをするデッキタイプの総称。名前の由来は、ターン開始時にカードを引き(ドロー)、土地を置いてターンを渡す(ゴー)という動きから。すなわち基本的に自分のターンには土地を置く以外の一切の行動をしないデッキなのである。ではどうやって戦うのかといえば相手ターンに動くのだ。

テキストが短いカードは強い

対抗呪文の効果は「呪文の打ち消し」。このゲームではクリーチャーを含めた土地以外のあらゆるカードは呪文と呼ばれるので、つまり基本的には全てのアクションを青の2マナでなかったことにすることができてしまう。カードアドバンテージの面では1対1交換が確約され、マナアドバンテージの面では基本的にゲームが長引けば長引くほど多くのマナを費やす呪文が唱えられやすいので得をする。
こうして打ち消しと隙を見たドロー、そして当時は色を問わず行えた全体除去でゲームをコントロールし続け、十分な土地が並んだら打ち消し用のマナを構えつつフィニッシャーを出して殴り切る。なんとも性格の悪いデッキである。

現代のこれの亜種はもっと必要なマナも多いし、
色マナが要求されることもある

とはいえ、何は通してよくて何は通してはいけないかを考えながらカウンターを主体にゲームの進行を完全に手の内に収めて勝利した時の脳内麻薬の分泌具合は筆舌に尽くしがたく、この形のデッキ構築を好む青使いは多い(要出典)。当然ながら相手からしたらたまったもんではないので、年を重ねるごとにこの手の戦略は弱体化し続けているのだが。
参考に、現在のスタンダードにおける汎用的な打ち消しの相場は基本的に青青1で、都合1マナ要求量が増えていることになる。たかが1マナ、と思うかもしれないが、体感してみるとこの差はかなり大きい。

カウンターに限らず、全体の傾向としてクリーチャーは強く、それ以外の呪文は弱くなっている……といわれている。しかし呪文の弱体化については少し前に底を叩いたのか、最近はまた少しずつ過去の上位互換のような呪文が増えつつある。そして調整を見誤ったものがしばしば禁止リストにブチこまれている。

3.ミルストーリー

どのカードゲームでも基本的な戦略といえばひたすら対戦相手を殴ることだろう。しかしながらMtGでは、それなりの頻度でそれ以外の方法での勝利を目指すデッキが成立する。その代表的なものがライブラリーアウトだ。

Millstone / 石臼 (2)
アーティファクト
(2),(T):プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを2枚切削する。

MTG wikiより

このデッキは2001年あたりのスタンダードで隆盛し、主に青と白の2色で構成された。デッキ名は石臼(Millstone)物語の円(Story Circle)から。石臼の効果から、山札を削る行為そのものをミル(Mill; 正式名称は切削)とも呼ぶ。

燦然と輝くクリーチャー(0)

こちらがデッキリストである。ご覧の通りクリーチャーが1枚も入っていない、即ち殴る気が全くない。このようなデッキはノンクリーチャーデッキと呼ばれ、しばしばメタに登場する。先述のドロー・ゴーのように青でドローとカウンターを行うのに加え、白で場に出ることを許してしまったパーマネント(唱えた後場に残った呪文。クリーチャーなど)に対処することができる。加えて物語の円の効果により撃ち漏らしのクリーチャーからのダメージも防ぎ、場をコントロールしていく。

Story Circle / 物語の円 (1)(白)(白)
エンチャント
物語の円が戦場に出るに際し、色を1色選ぶ。
(白):このターン、あなたが選んだ、選ばれた色の発生源1つが次にあなたに与えるすべてのダメージを軽減する。

MTG wikiより

その傍ら、相手のターン終了時に余ったマナで石臼の効果を起動し、ちまちまと相手のライブラリーを削る。一回一回の効果は微々たるものだが、結局相手は有効打を与えられずにターンが経過していき、最終的には自分のライフよりも相手のライブラリーが先に尽きるというわけだ。

流石に令和のMtGでは元祖石臼でのミルは遅すぎるが、ペインター・グラインドストーンのようなミルで相手のライブラリーアウトを狙うデッキは現在も数々存在する。

4.相殺コントロール

Counterbalance / 相殺 (青)(青)
エンチャント
対戦相手が呪文を1つ唱えるたび、あなたは自分のライブラリーの一番上のカードを公開してもよい。そうした場合、その呪文のマナ総量が公開されたカードのマナ総量と等しいならば、その呪文を打ち消す。

MTG wikiより

こちらのカードを見ていただきたい。ずいぶんと変則的なカウンター効果を有する置物だ。ハマれば相手の唱えた呪文を手札消費なしで打ち消すことができる、といえば聞こえはよいが、相手の唱えたカードと自分のデッキトップのマナコストが一緒なんて保証は全くない。外れたら単に相手に自分の次のドローを教えただけで終わってしまう。というかそもそも相手の唱えたカードと同じマナコストのカードデッキにないこともありえる、と、なかなか扱いが難しそうだ。

まあ、それはこれ単体ではの話だが。

Sensei's Divining Top / 師範の占い独楽 (1)
アーティファクト
(1):あなたのライブラリーのカードを上から3枚見る。その後それらを望む順番で戻す。
(T):カードを1枚引き、その後師範の占い独楽をオーナーのライブラリーの一番上に置く。

MTG wikiより

相殺コントロールは、相殺とデッキ操作効果を有する師範の占い独楽によるロック・コントロールデッキだ。かつてキーカードがともに利用可能だった時期のスタンダード、レガシーに存在した。

本来なら運に多分に左右される相殺の効果を、占い独楽によるデッキトップ操作効果で最大限に活用する。必要なパーツはその2種類だけであるので、様々なバリエーションが存在した。

相手が何らかの通したくないカードを唱えたら対応して独楽を起動し、デッキの上3枚から同じマナコストのカードを一番上に持ってくる。3枚の中にそのようなカードがなければ、ドロー呪文を唱えたりフェッチを起動してライブラリーをシャッフルしてデッキの上3枚を更新してまた独楽を起動……という動きを行うことで、かなりの確率で相手の動きを妨害することができる。
特に遊戯王プレイヤーはそんなこと出来んの?と思うかもしれない。MtGにおける遊戯王でのチェーンに相当するものはスタックと呼ばれるのだが、簡単に言うとチェーンの解決中にも割り込んで途中からチェーンを積み直すことができるのだ。実際の挙動を下に示す。

相手が通したくないカードを唱え、スタックに乗る(チェーン1)
相殺の効果が誘発(チェーン2)
対応して独楽を起動(チェーン3)、ライブラリーを見るが欲しいコストのカードがない(チェーン3解決)
……のでフェッチランドを起動し(チェーン3')、土地を出すついでにライブラリーをシャッフル(チェーン3'解決)
また独楽を起動し(チェーン3'')、ライブラリーを操作(チェーン3''解決)
相殺の効果で先ほど操作した自分の山札の一番上を公開(チェーン2解決)。公開されたのはチェーン1の呪文と同じマナコストのカードだったので、チェーン1の呪文は打ち消される(チェーン全解決)

このデッキは、その強烈なロック性能によりスタンダードはもとよりレガシー(相当のフォーマット)でもずっとメタを牽引してきた。12年に相殺を破壊でき、無理なくメインから搭載できる突然の衰微が現れてからはデッキの主軸とするのは難しくなったが、それからも様々なコントロールデッキのサブプランとして使われた。

Abrupt Decay / 突然の衰微 (黒)(緑)
インスタント
この呪文は打ち消されない。
マナ総量が3以下の土地でないパーマネント1つを対象とし、それを破壊する。

MTG wikiより
緑、青、赤のカードにはしばしば打ち消されないものが存在する

だが、このデッキには、1つある問題が存在した。

プレイに時間がかかりすぎるのである。

基本的にMtGの大会はBO3で行われ(決勝のみBO5)、大体1マッチの制限時間は50分だ。もちろん全員が全員コントロールを使っているわけではないので、この時間をすべて食いつぶすまで試合が伸びる卓は多くない。全参加者のゲームが終わらないと次のマッチには進めないので、多くのプレイヤーがことあるごとに3枚見てシャッフルを繰り返すようなデッキには待たされることになる。おまけに50分使い切っても勝敗が決さない試合は引き分けとして扱われてしまいきちんとした勝敗がつかないのだが、一応意味があってやっているアクションなので遅延行為とも判ずることができない。
そういうわけで師範の占い独楽は17年4月に禁止指定を受け、あえなくレガシーを退場することとなった。

なお、ヴィンテージでは相殺も独楽も利用できるので現在もこのコンボは再現可能なはずだが、ざっとメタに目を通してみてもこれを採用するデッキはなかった。これでもヴィンテージレベルでは力不足なようだ。

2.アグロデッキ

ミッドレンジはどこ行った?と言われそうだが、ミッドレンジ系のデッキは性質上フォーマットの有用なカードを詰め込むようなグッドスタッフデッキが多く、特徴がつかみにくいのだ。ご容赦頂きたい。

1.Zoo

Savannah Lions / サバンナ・ライオン (白)
クリーチャー — 猫(Cat)
2/1

MTG wikiより

MtGにおけるアグロデッキにはいくつかの型が存在する。その中で最もいわゆる"アグロ"っぽい動き(ステラ調べ)で戦うのがZooである。様々な時期のスタンダードからレガシー相当のフォーマットにまで存在する。ハースストーンにも名前と概念が輸出された。名前の由来は、採用されるクリーチャーに動物モチーフのものが多く、さながら動物園のようなリストになるため。

基本戦術としてはウィニー(小粒な)クリーチャーの色である白、緑を攻撃性の色である赤でバックアップしながら速やかに相手を殴り倒す。

60枚中16枚と実にデッキの1/4を動物が占める

伝説である(横並びができない)ことと引き換えに、白の1マナで2/2という現代でも通用する素晴らしいマナレシオを誇る勇丸や、森をコントロールしていれば赤1マナで2/3になる密林の猿人などの優秀な小型クリーチャーをひたすらに並べて攻めたてる。相手の態勢が整ってきたら火力呪文で相手の出したクリーチャーを焼いて無理やり攻撃を通したり、あるいはそのまま相手に直接火力を撃って残ったライフを消し飛ばす。単純明快ながら強力な動きだ。

これがもう少しゲームレンジを後ろに倒すとステロイドとなる。白の中型以降のクリーチャーの質は小型に比べて劣るため、こちらは赤緑2色の構成をとることが多い。

2.バーン

Lightning Bolt / 稲妻 (赤)
インスタント
クリーチャーやプレインズウォーカーやプレイヤーのうち1つを対象とする。稲妻はそれに3点のダメージを与える。

MTG wikiより

Zooがクリーチャーを主体としたアグロなら、こちらは火力呪文を主体としたアグロだ。他のカードゲームと比べて、対戦相手のライフを直接削る(いわゆる"顔を焼く")ことのできる火力呪文が数多く存在するのもMtGの特徴の1つ。そしてそのようなカードは常に需要があるためスタンダードのローテーションの度に刷られて数を増やす。すなわち、下環境には過去の火力呪文が勢揃いしている。そのようなカード達をかき集めて組まれるのがバーンデッキである。もちろん、優秀なクリーチャーや火力があるローテーション期間中ならスタンダードでも組まれる。勝つにしろ負けるにしろ速やかにゲームが終わる爽快感があり、紙で組んでも大抵のカードがかなり安めに揃うことから初心者にも人気がある。

スタンダードでは基本的に赤単色、下環境では優秀な火力呪文であるボロスの魔除け稲妻のらせんタッチするために赤白で組まれる。基本戦略はとにかく火力を相手の顔面にブチ込むこと。1マナで3点のダメージを与えられる稲妻溶岩の撃ち込み裂け目の稲妻の3種12枚を筆頭に、あらゆる火力を叩き込む。

これは適当な構築イベントの全勝リストだが、Spells(インスタントソーサリーの総称)30枚は全てが火力呪文、エンチャントの2枚はライフ回復封じ兼火力、クリーチャーはデメリット(?)つきの1マナ2/2非クリーチャー呪文を唱えるたびターン終了時まで一回りずつ大きくなる1マナ1/2のみという前のめり具合だ。2ターンでライフが20点中10点やそこらしか残っていないような事態もまま発生する。

無論相手からのアクションを全無視で火力を撃ち込んでいればいいというわけではなく(それでいい場合もあるが)、どのクリーチャーは優先して焼くべきでどこまでなら見逃してもよいかなども考えながらプレイする必要がある。そのあたりの習熟もこのデッキの楽しい点のひとつだ。

3.Death&Taxes

Thalia, Guardian of Thraben / スレイベンの守護者、サリア (1)(白)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
先制攻撃
クリーチャーでない呪文を唱えるためのコストは(1)多くなる。
2/1

MTG wikiより

クリーチャー主体、火力主体ときて、次に紹介するのは搦め手が中心の2種類。分類の上では「撹乱的アグロ」と呼ばれるデッキタイプ。序盤からクリーチャーを立てていく動きをするが、プレイの進め方はむしろコントロールに近い。
Death&Taxes(デスアンドタックス、デスタク)は主にレガシーで活躍するデッキ。主に白単色(+無色のアーティファクト)で組まれる。デッキ名は英語の慣用句で「逃れることのできないもの」を意味する。ネーミングセンス◎。

Wasteland / 不毛の大地
土地
(T):(◇)を加える。
(T),不毛の大地を生け贄に捧げる:基本でない土地1つを対象とし、それを破壊する。

MTG wikiより

サリアのような妨害効果、あるいは石鍛冶のような放っておいてはとんでもないアドを稼がれる小型クリーチャーを並べる傍ら、不毛の大地などで相手の利用できるマナを徹底的に縛る。土地を妨害に使っては自分が展開できないが、そこは霊気の薬瓶でカバーする。アーティファクトの起動型効果によって直接場に出しているので通常の打ち消しが効かず、また相手のエンドステップにクリーチャーを展開できるので隙を見せにくいという利点もある。そうして相手がまごついている間に挽回不能なアド差をつけて殴りきるのがベースプランである。

デッキを構成するクリーチャーのタフネスが全て2以下であることからアド源として護衛募集員をフル活用し、シルバーバレット戦略も採用している。

Recruiter of the Guard / 護衛募集員 (2)(白)
クリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
護衛募集員が戦場に出たとき、あなたは「あなたのライブラリーからタフネスが2以下のクリーチャー・カード1枚を探し、それを公開し、あなたの手札に加え、その後ライブラリーを切り直す。」を選んでもよい。
1/1

MTG wikiより

無論タフネスが2以下のクリーチャーばかりというのは手放しにメリットとして受け入れられるわけではない。レン6オークの弓使いといった手軽に1点ダメージを飛ばせる強力なカードが登場したことで、このデッキは勢力を大きく落とした(レン6は後に禁止指定されたが)。

4.Delver-Go

Delver of Secrets / 秘密を掘り下げる者 (青)
クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)
あなたのアップキープの開始時に、あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を見る。あなたはそのカードを公開してもよい。これによりインスタントやソーサリーであるカードが公開されたなら、秘密を掘り下げる者を変身させる。
1/1
Insectile Aberration / 昆虫の逸脱者
〔青〕 クリーチャー — 人間(Human) 昆虫(Insect)
飛行
3/2

MTG wikiより

こちらがもう一種類。撹乱的アグロのうち、「クロック・パーミッション(クロパ)」と呼ばれるタイプのデッキの代表例。さきほどのデスタクがマナを縛るなどして呪文を唱えたくても唱えられない状況を作りながら戦うのに対し、こちらは相手の唱えた呪文のうち通されたくないものをカウンターで弾きながら戦う。文字通り、相手は「これ通りますか?」と許可("パーミッション")を求めながらのプレイングを強いられる。元々クロック・パーミッションの形を取るデッキは存在していたが、この型は最速で2ターン目から回避能力つきの3点クロックとなる秘密を掘り下げるものが2012年に登場したことで成立した。スタンダードはもちろんのこと、マナの軽さが正義であるモダン以下の環境でも活躍している。デッキ名はドロー・ゴー+秘密を掘り下げるもの(Delver of the Secrets/デルバー)から。

もともとクロック・パーミッション戦略では少数のクロックを大量のインスタントでバックアップしながら戦うようにデッキが作られているので、インスタント/ソーサリーが多ければ多いほど変身条件が満たしやすいデルバーは相性がよい。またデッキの核となるのがデルバーと強いて言えば瞬唱の魔道士ぐらいしかいないため極めて拡張性が高く、フェッチランドの存在により多色化が容易なモダン以下の環境では多種多様なバリエーションが構築され、メタに出入りしている。火力の赤を足したイゼットデルバー、加えて緑からタルモゴイフを足したCanadian Threshold(カナスレ)や黒から除去呪文やグルマグのアンコウを足したグリクシスデルバーなど。

twitterで地味に流行っている1次創作TCGマンガの作者はカナスレ乗りだ

3.コンボデッキ

1.Super Crazy Zoo

Death's Shadow / 死の影 (黒)
クリーチャー — アバター(Avatar)
死の影は-X/-Xの修整を受ける。Xはあなたのライフの総量である。
13/13

MTG wikiより

Super Crazy Zooは、死の影を代表とする軽量かつ大型になりうるクリーチャーをΦマナ呪文や通りの悪霊で高速に自らのライフを削りつつ墓地を肥やすことで展開し、更にそれをティムールの激闘強大化パンプアップして対戦相手を瞬殺する、スーサイド系アグロ・コンボデッキ。デッキ名の由来は、「Zooを超えた(Super)、Zooではありえない(Crazy)、Zoo」。

元はデッキ制作者の伊藤敦氏がコラムで考案したネタデッキであったが、実際に使ってみると意外にも実戦に耐える完成度であったことから真面目に研究され、一時はモダンのメタの一角にまでのし上がった。

後にデッキの中隔を担う「手札を減らさず」「自分の体力を削りつつ」「タダで撃てる」呪文であるところのギタクシア派の調査が禁止指定されたことで瓦解したが、それまではあまり日の目を見なかった死の影を用いたデッキ群の誕生に繋がった。

2.続唱(死せる生/カスケードクラッシュ)

Violent Outburst / 暴力的な突発 (1)(赤)(緑)
インスタント
続唱(あなたがこの呪文を唱えたとき、あなたのライブラリーの一番上のカードを、コストがより低い土地でないカードが追放されるまで追放する。あなたはそれをそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。追放されたカードをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。)
ターン終了時まで、あなたがコントロールするクリーチャーは+1/+0の修整を受ける。

MTG wikiより

続いては続唱というキーワードをキーとしたデッキ。主にモダンで活躍している。
続唱とは、例えば上の暴力的な突発ならば、これを唱えたあと山札を2マナ以下の呪文がめくられるまで見ていき、それをタダで唱えていいよ、という効果である。
もちろん何も考えずに使っても強力な効果であることは確かだが、これはすなわち「デッキ内に2マナ以下の呪文が一種類しかなければ絶対にそれを唱えられる」ということでもある。これを利用したデッキがこれらの続唱デッキだ。
とはいえ、普通2マナ以下の呪文が1枚めくれたところでそこまで大きな効果は見込めない(続唱を持つカードは基本的に3マナからしかない)し、そもそもそのようなデッキを作るということは2ターン目までは棒立ちになり、都合3マナが無駄になってしまう。モダンの禁止基準は安定した3Tキルだとフォーマットで述べたように、普通はそんなことをしていればボコボコにぶん殴られて負けるのがオチである。さらにそれ以降のターンでも、起こせる行動の選択肢がすべて3マナ以上では動きが大振りすぎてまともに戦えない。これらのデッキは、そこを異なるアプローチからルールの裏をついたデッキ構築でかいくぐっている。

Living End / 死せる生
〔黒〕 ソーサリー
待機3 ― (2)(黒)(黒)
各プレイヤーは自分の墓地にあるすべてのクリーチャー・カードを追放する。その後自分がコントロールするすべてのクリーチャーを生け贄に捧げる。その後自分がこれにより追放したすべてのカードを戦場に出す。

MTG wikiより

Crashing Footfalls / 衝撃の足音
ソーサリー
待機4 ― (緑)(あなたの手札からこのカードを唱えるのではなく、あなたは(緑)を支払い、時間(time)カウンターを4個置いた状態でこれを追放してもよい。あなたのアップキープの開始時に、時間カウンターを1個取り除く。最後の1個を取り除いたとき、これをこれのマナ・コストを支払うことなく唱える。)
トランプルを持つ緑の4/4のサイ(Rhino)・クリーチャー・トークンを2体生成する。

MTG wikiより

待機nというキーワード能力がある。簡単に言えば、要求されたマナを支払ってnターン待てば払ったマナ相当よりも強力な効果を使えますよ、みたいなものだ。その分素撃ちでの要求マナは基準より多かったり、または上の死せる生のようにそもそもマナコストが書かれていない=素撃ちができないようになっている。

ところで、この死せる生のマナ総量はいくつだろうか? 待機で唱えるには2黒黒で4マナかかるので4? いや、それはあくまで待機のコストであって、このカードのマナコストではない。このカードのマナコストは「存在しない」。そして、「マナコストの存在しないカードのマナ総量は0とする」というルールが存在する。つまり、続唱によりこのカードがめくれると、本来待機しないと唱えられない呪文が即座に撃ててしまうのである。

MtGにおいてはマナコストを持たないのは0マナなのだ(厳密には違うが)

これで第一関門の「めくれる呪文が弱い」については解決した。次は大振りな呪文しかない問題だ。

波起こし

こちらのカードの効果欄を見てみてほしい。1青, 波起こしを捨てる、がコストの効果がある。すなわち、この効果はこのカードが手札にあるときに使うのである。もちろんマナコストは5青青の7であるため、続唱には引っかからない。死せる生ではこのような起動型効果を持つクリーチャーばかりをかき集めることで、デッキの潤滑剤となる小刻みな動きと死せる生自体の効果によって墓地から持ってくるタネの準備を同時にこなしている。

火+氷。この向きで正常である

カスケードクラッシュでは2つ目の関門の解決方法が異なる。この分割カードという種類のカードを採用しているのだ。
ご覧のように、こちらのカードは1赤で唱えることができる「火」という呪文と1青で唱えることが出来る「氷」という呪文がくっついている。これを実際に唱える際にはこのどちらかを選択し、両方を一度に唱えることはできない。唱えた後のスタック(簡単に言えば遊戯王のチェーンのようなもの)上でもこれは「火」あるいは「氷」として扱われる。しかし手札にある段階ではこれはあくまで「火+氷」であり、そのマナ総量は1赤+1青=2赤青で4マナなのだ。もちろん手札以外の領域である山札や墓地でもこれはそのように扱われる、すなわち3マナの続唱呪文に引っかからない。この火+氷と死亡+退場(赤+2赤の分割カード)の2種8枚で序盤を支えるのがカスケードクラッシュだ。

見ればわかる強力な効果を持つ死せる生はともかく、たかだか中型のトークン2体を出すだけの衝撃の足音のためだけにこれだけのデッキを組む価値はあるのか?と考えるかもしれないが、3ターン目のターンエンドに合わせて暴力的突発から降ってくる8点クロック、あるいは断片無き工作員でメインに用意される11点クロックは悶絶モノであり、事実現在もモダンのメタの上位に位置している。

3.アド・ストーム/ANT

Ad Nauseam / むかつき (3)(黒)(黒)
インスタント
あなたのライブラリーの一番上のカードを公開し、そのカードをあなたの手札に加える。あなたはそれのマナ総量に等しい点数のライフを失う。あなたはこの手順を望む回数繰り返してもよい。

MTG wikiより

Tendrils of Agony / 苦悶の触手 (2)(黒)(黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは2点のライフを失い、あなたは2点のライフを得る。
ストーム(あなたがこの呪文を唱えたとき、このターンにそれより前に唱えた呪文1つにつきそれを1回コピーする。あなたはそのコピーの新たな対象を選んでもよい。)

MTG wikiより

アド・ストーム/ANTはレガシー以下の環境に存在する瞬殺コンボデッキ。デッキ名はキーカードのむかつき(Ad Nauseam)と苦悶の触手(Tendrils of Agony)から。キーカード2種、および一時的なマナ加速手段を擁する黒とサーチのための赤をベースに組まれる事が多い。また、苦悶の触手を用いないタイプが少数モダンにも存在する。

やることは至極単純。マナ加速からむかつきを唱え、大量の軽量カードを手札に加え、それを唱えまくり、最後に苦悶の触手でゲームエンド。むかつきのデメリットで死なないためにデッキの大半は0~2マナのマナ加速、ドロー、サーチ手段で構成されている。とはいえむかつきで失うライフの量はそれを手札に加えるまでわからないので、引き次第ではギリギリを攻めすぎてライフが尽きる可能性もある。2010年に行われたレガシーの世界大会であるグランプリマドリードの決勝では、よりによって最終戦でこれが発生したらしい。

このデッキもその1つだが、ストームという能力をキーにしたデッキは総称してストームデッキと呼ばれる。また、ストーム能力があるカードを使わなくても、大量にカードを唱えまくることで得たアドを勝利につなげるタイプのデッキもストームと称されることがある。次に紹介するのもそんなデッキだ。

4.逆説ストーム

Paradoxical Outcome / 逆説的な結果 (3)(青)
インスタント
望む数のあなたがコントロールする土地でもトークンでもないパーマネントを対象とし、それらをオーナーの手札に戻す。これによりあなたの手札に戻されたカード1枚につき、カードを1枚引く。

MTG wikiより

逆説ストームは、逆説的な結果をキーカードとするコンボデッキ。現在ではヴィンテージで組まれる他、逆説的な結果が利用可能だった2018年ごろにはスタンダードでも組まれた。マナが出せるアーティファクトを大量に並べてタップしてマナを出し、それらを逆説的な結果で手札に戻しつつ大量ドローし、またアーティファクトを並べてマナを出し……を繰り返してフィニッシャーにつなげる。

Inspiring Statuary / 鼓舞する彫像 (3)
アーティファクト
あなたが唱えるアーティファクトでない呪文は即席を持つ。(あなたのアーティファクトが、それらの呪文を唱える助けとなる。あなたはあなたのアーティファクトをタップして、1個あたり(1)の支払いに代えてもよい。)

MTG wikiより

Aetherflux Reservoir / 霊気貯蔵器 (4)
アーティファクト
あなたが呪文を1つ唱えるたび、このターンにあなたが唱えた呪文1つにつき1点のライフを得る。
50点のライフを支払う:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。霊気貯蔵器はそれに50点のダメージを与える。

MTG wikiより

スタンダードでは、全てのアーティファクトがマナを生み出せるような挙動を出来るようになる鼓舞する彫像、そしてフィニッシャーとなる霊気貯蔵器がキーカード。これらと0、1マナのアーティファクトを利用することでぐるぐると展開し、霊気貯蔵器の効果で50点を叩き込み勝負を決める。ライフを利用するのでストームと異なりターンをまたいでも(ライフを稼げる量が1からになるが)一応問題ない。開発された当初はそこまで大きなパワーはなかったが、のちにチャンプブロッカー兼一応のフィニッシャーともなる飛行機械をこのデッキでは大量に生産できる練達飛行機械職人、サイを獲得したことで、大型大会でも上位入賞できるようなパワーを手にした。

Mox Sapphire (0)
アーティファクト
(T):(青)を加える。

MTG wikiより

当然ながら、Moxシリーズ始めイカれた軽量マナアーティファクトがごまんと利用できるヴィンテージではより爆発的なパワーを発揮でき、現在もトップメタの一角である。初手次第では先攻1Tキルも可能だ。以下にwikiに乗っているサンプルリストでの1キル例を示す。

Underground SeaからMox Sapphire、Mox Jetを含むMox3つをプレイし、4マナから逆説的な結果を唱えてMoxを手札に戻す。Moxをプレイしなおす。(ストーム7、手札5枚)
Mox Jet以外のMoxから1マナを出し、魔力の櫃(または太陽の指輪)をプレイする。睡蓮の花びら(またはブラック・ロータス)をプレイする。(ストーム9、手札3枚)
Mox Jetと睡蓮の花びらから黒黒、その他から2マナ出して苦悶の触手をプレイする。(2+2×9=20)

なお、現在はウルザの物語により構築物で殴ることが可能になったからか、ストームによる勝利を目指すのではなく、純粋に逆説的な結果をアド源として利用した青単色での構築が基本のようである。(参考)

4.土地デッキ

正確にはこれはデッキタイプのくくりではないが、便宜上このようにまとめる。土地システムは他のカードゲームにはない特徴的なものであり、ここを最大限有効活用するデッキを複数ピックアップした。

1.トロン

Urza's Mine / ウルザの鉱山
土地 — (Urza’s) 鉱山(Mine)
(T):(◇)を加える。あなたがウルザの(Urza's)・魔力炉(Power-Plant)とウルザの・塔(Tower)をコントロールしているなら、代わりに(◇)(◇)を加える。

MTG wikiより

冒頭に説明したように、このゲームは基本的に毎ターン1枚土地をプレイすることで、使うことができるマナを増やしていく。

このデッキもご多分に漏れず、1ターン目には土地を1枚置いて1マナ出し、2ターン目にはもう1枚置いて2マナ出し、3ターン目にはもう1枚置いて7マナ出す。あれ?

トロンは、ウルザランドと呼ばれる「ウルザの〇〇」という名前の土地を3種類場に揃えることで大量のマナを捻出し、これを利用して大振りなアクションを行うデッキの総称。利用可能だった時期はスタンダードでも組まれたが、主にモダンで活躍する。というか私がその時期のスタンを知らないのでモダンの方しか触れられない。ウルザランドから出るマナは無色であるためフィニッシャーを務めるカードは無色であることがほとんどだが、土地のサーチを行うために緑をタッチした形が現在は主流である。一時は2色以上をタッチしたものも存在したようだが、土地対策にあまりにも弱いということで衰退したらしい。

序盤数ターンは探検の地図森の占術などの土地サーチカードでウルザランドを揃え、ウルザランドが揃ってからは序盤に失ったアドを取り戻す勢いでビッグアクションを叩きつけ続ける。フィニッシャーとしては絶え間なき飢餓、ウラモグワームとぐろエンジンなどの大型無色クリーチャーが起用されるほか、大いなる創造者、カーンによるウィッシュボード(サイドボード版シルバーバレット)戦略がとられる。四肢切断はこのデッキでも序盤から使える貴重な除去である。また、23年の指輪物語エキスパンションにより一つの指輪を獲得したことで大躍進し、直後のモダンの公式大会ではトップメタとなった。

The One Ring / 一つの指輪 (4)
伝説のアーティファクト
破壊不能
一つの指輪が戦場に出たとき、あなたがこれを唱えていた場合、次のあなたのターンまで、あなたはプロテクション(すべて)を得る。
あなたのアップキープの開始時に、一つの指輪の上にある重荷(burden)カウンター1個につき1点のライフを失う。
(T):一つの指輪の上に重荷カウンター1個を置く。その後、一つの指輪の上にある重荷カウンター1個につき1枚のカードを引く。

MTG wikiより

余談だが、マナ加速のメインパーツがメインデッキからは干渉しにくい土地主体であることからか、いわゆるアンフェアデッキの代表格としてよくプレイヤーのヘイトを集めている。禁止改訂の告知がある度に「(全く関係ないメタゲーム上の有力カードの長所)。よってウルザの塔は禁止されます」とか言われたり。

「禁止」ってワード入れてないのにこの有様

似た構成を取るものとして、雲上の座をメインに据えた8post(12post)と呼ばれるデッキも存在する。トロンと比較するとより採用できる土地の自由度が高いことが特徴で、加えてトロンが土地3枚から7マナ出すのに対し8postは土地3枚から9マナを出せる爆発力もある……せいで、こちらは本当にモダンでは禁止されてしまった。現在ではレガシー環境で活躍しているようだ。

Cloudpost / 雲上の座
土地 — 神座(Locus)
雲上の座はタップ状態で戦場に出る。
(T):戦場に出ている神座(Locus)1つにつき(◇)を加える。

MTG wikiより

2.ポンザ

土地から大量のマナを出すデッキの次は相手の土地をいじめぬくデッキをご紹介する。

Stone Rain / 石の雨 (2)(赤)
ソーサリー
土地1つを対象とし、それを破壊する。

MTG wikiより

ポンザは、赤単色からなる土地破壊デッキ。かつて上記石の雨をはじめとする土地破壊カードがリーガルだった時期のスタンダードで構築されていたほか、レガシー相当のフォーマットでも一時使われていたようだ。土地破壊は主に赤と緑の役割であるため、赤緑で組まれるデッキもあるが、そのようなものはポンザとは呼ばない(らしい)。正直この記事作るまで普通に赤緑ポンザとか言ってた

今現在でも土地破壊カードは各スタンダードの時期で1枚は存在するが、もっぱら5マナ、あるいは6マナを要する。それだけのマナを費やして土地1枚を割っても、相手が6ターン目に使えるマナが6マナから5マナになったところでコストに見合う効果は見込めない。加えて土地破壊が可能なカードの種類もそう多くはないので、大概は1種4枚しかデッキに積むことができない。そういうわけで現代のスタンダードではまずこの手のデッキをお目にかかることはないのだが、かつてはより軽く、より多くの土地破壊カードを利用することができる時期があったのだ。

こちらはその一例である。3マナの土地破壊が2種8枚、4マナのものが1種3枚の計11枚搭載されている。これらの土地破壊(と煮えたぎる歌のような一時マナ加速手段)で序盤から相手のマナ基盤をボコボコにしつつ、撃ち漏らしの土地からでも出せる小型クリーチャーたちは紅蓮地獄で除去、相手が後続の土地も引けずまともに展開できなくなったらフィニッシャーで殴り倒す、というようなコンセプトだろう。

なお、現在でも廃墟の地のような、土地の総量は変わらないものの破壊すること自体は可能なカードは継続して刷られている。

Field of Ruin/廃墟の地
土地
(T):(◇)を加える。
(2),(T),廃墟の地を生け贄に捧げる:対戦相手がコントロールしていて基本でない土地1つを対象とする。それを破壊する。各プレイヤーはそれぞれ、自分のライブラリーから基本土地カード1枚を探し、戦場に出す。その後、ライブラリーを切り直す。

MTG wikiより

一見マナだけ使って実質的には何の効果もないように見えるが、これは相手が(3色以上の)多色デッキである場合、または特殊な効果を有する土地を使うデッキである場合に真価を発揮する。

Search for Azcanta / アズカンタの探索 (1)(青)
伝説のエンチャント
あなたのアップキープの開始時に、諜報1を行う。その後、あなたの墓地にカードが7枚以上あるなら、あなたはアズカンタの探索を変身させてもよい。(あなたのライブラリーの一番上からカードを1枚見る。あなたはそのカードをあなたの墓地に置いてもよい。)
Azcanta, the Sunken Ruin / 水没遺跡、アズカンタ
伝説の土地
(《アズカンタの探索/Search for Azcanta》から変身する。)
(T):(青)を加える。
(2)(青),(T):あなたのライブラリーの一番上からカードを4枚見る。あなたはその中からクリーチャーでも土地でもないカード1枚を公開してあなたの手札に加えてもよい。残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。

MTG wikiより

さきほど述べたウルザランドや上記のアズカンタの探索などの特殊な効果を有する土地が破壊できれば、相手の使える土地の枚数自体は変わらなくとも今後の展開を有利に運ぶ(というか相手がアドを稼ぐことを防ぐ)ことができる。
また、特にカードプールが狭いスタンダードやパイオニアでは、3色以上を使用するデッキは土地の構成でかなり無理をしていることが多く、デッキに基本土地が1枚しか入っていないだとか1枚も入っていないというようなこともままあり、そのような場合なら廃墟の地は実質的な土地破壊として働く。
更に、例えば相手が「赤と青が出る土地」「赤と白が出る土地」「平地」をコントロールしているときに1つ目を破壊すれば、相手は廃墟の地の効果でを持ってこないかぎり青い呪文を唱えることができなくなる。強力な呪文は往々にして色拘束が強く設定されている(例えば昨今のスタンダードで猛威を振るい禁止指定を受けた絶望招来はマナコストが1黒黒黒黒である)ため、相手の強力なアクションを封じることができる可能性が上がるのだ。
土地配分と色拘束の問題は当然使う側にもつきまとう問題であるので、基本的には単色、せいぜい2色デッキでしかこのようなカードは採用できない(レガシー以下を除く)。メリットが多そうなデッキの多色化にもこのような落とし穴があり、逆に単色デッキにはそういうメリットもあるのだ。

3.ブルームーン

Blood Moon / 血染めの月 (2)(赤)
エンチャント
基本でない土地は山(Mountain)である。

MTG wikiより

お次は異なる方向から土地を縛ってくるこちらのデッキ。ブルームーンは、モダンに存在する血染めの月をキーカードとする青赤のコントロールデッキ。デッキ名は、青を使いつつも血染めの月がキーカードであることから。

こちらの血染めの月の効果はパッと見分かりにくい。なんだ基本でない土地は山であるって。

MtG最強のカード

基本(である)土地とは、ざっくり言うとそのままタイプ欄に「基本土地(Basic Land)」と書かれている5種類の土地のことだ。これはつまり、通常は平地(白)、島(青)、沼(黒)、山(赤)、森(緑)という名前の5枚を指す。厳密にはもう6種類あるのだが今回は割愛する。これら5種類の名前と同名のタイプを持つ土地は、タップすることで対応する色のマナを生み出すことができる能力をもつ。以上を踏まえて血染めの月のテキストを再翻訳すると……

Blood Moon / 血染めの月 (2)(赤)
エンチャント
このエンチャントが場に存在する限り、平地か、島か、沼か、山か、森でない土地は、山として扱う。(それは(T):赤を加える。を持ち、それ以外の能力を全て失う。)

こうなる。複数色デッキが卒倒する効果である。当然赤を使わないデッキが赤マナを出せたところで不特定マナの支払いにしか充てられず、赤を使うデッキであってもそれ以外の色を含む呪文がほぼ唱えられなくなってしまう。このエンチャントをどうにかしてどかそうにも、エンチャントを除去することができるのは大体白か緑であるのでそのためのマナすら出せない。まさしく八方塞がりだ。
一方で自分はデッキを構築する段階で島を多く採用することで、カウンターを構えながら動けるくらいの青マナを捻出できる態勢をキープしながら立ち回ることができる。

……と、こう書くとすこぶる強そうに見えるデッキだが、当然弱点も存在する。
まずひとつ目は単色デッキにはほとんど血染めの月が効かないこと。そもそもがほぼ基本土地のデッキばかりなので、3マナ払って何もしないのとほぼ同義になってしまう。2色以上のデッキであっても、元から赤を濃く採用しているものには効果がない、とまでは言わないが薄い。バーンなんかは天敵といえる。
ふたつ目は2枚目以降の血染めの月が無駄になってしまうこと。これで仮に場に出た時にドローする効果でもあれば最低限手札を回すことが出来るのだが、これでは1枚目が除去されないかぎり完全な無駄札と化してしまう。
ということで、血染めの月に頼り切った戦い方では不安定な部分が多いところを補うべく、ブルームーンはメタゲームが進むにつれて「血染めの月を4投したロックデッキ」から「血染めの月を2枚程度メインに搭載した青赤コントロールデッキ」へと姿を変えてゆくこととなった。

現在では大抵のデッキで血染めの月はサイドボードに2枚程度仕込むカードとなったが、大会の成績優秀デッキを眺めているとたまに古き良きブルームーンを踏襲したようなデッキリストが入賞しているのも見かける。それだけ根強いファンが一定数存在するデッキなのだろう。

4.土地単

これまで様々なデッキを紹介してきたが、そういえばそもそも「デッキに入れるべき土地の枚数」の話をしていなかった。
スタンにおいては、標準的な60枚デッキでは24枚前後の土地を入れるとちょうどよいとされる。これを基準に、コントロールデッキでは26枚、アグロデッキでは22枚くらいまで採用枚数が変動する。
下環境ではフェッチランドや効率的なマナ加速手段が存在するため、アグロ系のデッキでは更に枚数を切り詰めて18枚前後とすることも多い。

ところでこのリストを見てくれ。こいつをどう思う?

すごく……土地ばっかりです……

土地単(Lands)は、大量の土地を主軸としてゲームを展開するデッキ。レガシー以下の環境に存在する。土地をサーチする手段、およびキーカードである壌土からの生命のある緑を主軸として組まれる。

Life from the Loam / 壌土からの生命 (1)(緑)
ソーサリー
あなたの墓地にある土地カードを最大3枚まで対象とし、それをあなたの手札に戻す。
発掘3(あなたがカードを1枚引くなら、代わりにあなたはカードを3枚切削してもよい。そうしたなら、あなたの墓地にあるこのカードをあなたの手札に戻す。)

MTG wikiより

Exploration / 踏査 (緑)
エンチャント
あなたは、あなたのターンにさらに1つの土地をプレイしてもよい。

MTG wikiより

The Tabernacle at Pendrell Vale
伝説の土地
すべてのクリーチャーは「あなたのアップキープの開始時に、あなたが(1)を支払わないかぎり、このクリーチャーを破壊する。」を持つ。

MTG wikiより。
通称タバナクル、あるいは「名前の長い土地」

MtGでは、新しいパックの収録カードには毎回何かしら特殊な効果を有する土地が含まれる。単に2色(以上)を出せる土地をはじめとして、置物対策になったり防御手段を兼ねたりクリーチャーになって殴れたり何でも出来すぎてさっさと禁止にされろと言われたり。色が出せる土地である場合は大抵サイクルを形成しているので一挙5種類がカードプールに増える。その他無色マナしか出せない(あるいはマナ能力を持たない)単発の土地もちょいちょい増え、今では膨大な数の特殊な土地が存在する。それこそ、それらをデッキの主軸にすることができるほどに。そしてこれらはあくまでも土地が効果を有している形なので、通常の妨害手段では対応できないのだ。

113.9 スタックにある起動型能力や誘発型能力は呪文ではないので、呪文を打ち消すものには打ち消されない。スタックにある起動型能力や誘発型能力は、能力を打ち消すと書かれている効果によって打ち消される。常在型能力はスタックを用いないので、打ち消されることはない。

総合ルール1.113「能力」より抜粋

大会の成績優秀デッキリストを眺めてみたところ、現在では35枚程度の土地で構築するのが基本のようだ。防御は爆発域罰する火+燃え柳の木立名前の長い土地タバナクルGlacial Chasm、フィニッシャーは死者の原野のゾンビトークンやウルザの物語の構築物トークン、または暗黒の深部+演劇の舞台コンボにより一撃必殺のマリット・レイジを呼び出すなどか。無論不毛の大地は4投される。こうして列挙するだけでも、土地だけとは思えないほどの対応力を有するカードばかりだ。これらの土地はしばしば起動コストとして自身を生贄に捧げる(あるいは手札から捨てる)ことを要求するので、回収手段として壌土からの生命や世界のるつぼを採用している。

これらのギミックのうち、暗黒の深部を利用したものはコンボ達成までのハードルが極めて低く、それでいて人を殺せるだけの威力があることから、単体でもデッキが成立する。そちらを次に紹介しようと思う。

5.ヘックスメイジ・デプス

Dark Depths / 暗黒の深部
伝説の氷雪土地
暗黒の深部はその上に氷(ice)カウンターが10個置かれた状態で戦場に出る。
(3):暗黒の深部から氷カウンターを1個取り除く。
暗黒の深部の上に氷カウンターが1個も置かれていないとき、それを生け贄に捧げる。そうしたなら、飛行と破壊不能を持つ、伝説の黒の20/20のアバター(Avatar)・クリーチャー・トークンの《マリット・レイジ/Marit Lage》を1体生成する。

MTG wikiより

ヘックスメイジ・デプスはレガシーに存在するコンボデッキ。こちらの暗黒の深部という土地をキーとしている。
暗黒の深部は条件さえ満たせば一撃で初期ライフ20点を消し飛ばせる超巨大トークンを場に出すことが可能だ。しかしながらその条件を馬鹿正直に満たそうとすると、分割して支払えるとはいえ都合30マナも要する。ここをどうにかして踏み倒し、爆速でトークンを降臨させるデッキである。

Vampire Hexmage / 吸血鬼の呪詛術士 (黒)(黒)
クリーチャー — 吸血鬼(Vampire) シャーマン(Shaman)
先制攻撃
吸血鬼の呪詛術士を生け贄に捧げる:パーマネント1つを対象とする。それの上に置かれているすべてのカウンターを取り除く。
2/1

MTG wikiより

Thespian's Stage / 演劇の舞台
土地
(T):(◇)を加える。
(2),(T):土地1つを対象とする。演劇の舞台は、それがこの能力を持つことを除き、それのコピーとなる。

MTG wikiより

主な手段は2種類。吸血鬼の呪詛術師の効果で暗黒の深部上のカウンターをすべて取り去ってしまうのが1つ。もう1つは演劇の舞台を利用したコンボだ。
上記の演劇の舞台という土地は、2マナと自身のタップの実質3マナで他の好きな土地になれる。暗黒の深部はあくまで「カウンターが乗った状態で場に出る」ので、最初から場に出ているこのカードが暗黒の深部に変身してもそこにはカウンターは乗らない。すなわち変身した演劇の舞台はカウンターの乗っていない暗黒の深部となり、効果によって即座に生贄に捧げられてクソデカトークンが爆誕する。

言ってしまえばこれだけのコンボであり、必要なカードも上記の3種12枚(と暗黒の深部からマナを出せるようにするアーボーグなど)のみ。そのため拡張性が高く、様々なコンボパッケージを取り込んだ型が生まれている。

現在のレガシーでは、優秀なクリーチャーでありながら土地サーチ手段を兼ねる聖遺の騎士エルフの開墾者をメインに据え、暗黒の深部や演劇の舞台はサーチ前提でピン刺しに留めるセレズニア(白緑)・デプスと呼ばれる型、あるいはそれに黒や赤を足したものが主流のようだ。(参考)
前述の8postのギミックを採用している型も確認できる。(参考)

6.チャーベルチャー

ここまで様々な土地を活用するコンボデッキを紹介してきたが、こちらは少々趣が異なる。具体的に言うと、これは土地をほぼ採用しないことをコンボの条件とするデッキだ。
ほぼ採用しない、って結局何枚?下環境のアグロデッキは18枚とか言ってたし、15枚とか?もっと切り詰めて10枚?

Lands(1)(迫真)

1枚である。なんならモダン版はスペルランドを採用することで0なこともある。

Goblin Charbelcher / ゴブリンの放火砲 (4)
アーティファクト
(3),(T):クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。あなたのライブラリーを、土地カードが公開されるまで上から1枚ずつ公開する。ゴブリンの放火砲はこれにより公開された土地でないカードの数に等しい点数のダメージをそれに与える。もし公開されたカードが山(Mountain)であるなら、ゴブリンの放火砲は代わりに2倍のダメージを与える。公開されたカードを、望む順番であなたのライブラリーの一番下に置く。

MTG wikiより

チャーベルチャー、またはベルチャーは、レガシーに存在する地雷系瞬殺コンボデッキ。その名の通り、ゴブリンの放火砲を勝ち手段としている。また、ゼンディカーの夜明け参入後のモダンにも少数存在する。

動きは至極単純。土地譲渡によりデッキ唯一の土地を手札に加えてセット、指導霊2種8枚や睡蓮の花びら、炎の儀式等の一時マナ加速手段からゴブリンの放火砲を場に出し、起動するだけ。デッキには土地が残っていないので残ったデッキが全て公開され、40点以上のダメージが対戦相手の顔面にぶっ放される。

一時マナ加速手段(と超軽量ドロー)をバカスカ撃つ関係上ストームが溜まりやすいので、追加のフィニッシャーとして巣穴からの総出が採用される。

Empty the Warrens / 巣穴からの総出 (3)(赤)
ソーサリー
赤の1/1のゴブリン(Goblin)・クリーチャー・トークンを2体生成する。
ストーム(あなたがこの呪文を唱えたとき、このターンにそれより前に唱えた呪文1つにつきそれを1回コピーする。)

MTG wikiより

魅力的な爆発力を誇る反面、ベルチャー(か巣穴からの総出)に全力を注ぎ込むデッキであるので妨害には極めて弱いため、トーナメントレベルでは中々活躍が難しいデッキだ。しかしながら、同じ設計思想の上で構築されるOops! All Spells!とベルチャーの相性は抜群で、よくサイドボードにその名前を見ることができる。

こちらもデッキ内の土地は0。色々やってデッキを空にしてタッサの神託者で特殊勝利する。
成績も申し分ない(アジア大会予選全勝)

5.あとがき

以上、ざっくりタイプを分けて18のデッキを紹介させていただいた。引用部分も多くあるとはいえ2.5万字も書くことになるとは全く思っていなかった。ここまでお読み頂いた方々には感謝を述べたい。

MtGの歴史は長く、これら以外にも山のようなデッキが存在していて、解説を眺めているだけでも面白い。こちらがMTG wikiのデッキ集のリンクなので、興味を持たれた方は是非。デッキ集に限らずMTG wiki自体読み物として非常に面白いので、リンクを辿っていろいろなカードやデッキを探してみてほしい。

現在、MtGには主に2種類のオンラインゲームが存在する。いずれも紙よりは参入ハードルが低く、特にアリーナは無料でも楽しめるので、プレイしてみてくれたら記事を書いた甲斐がある。

Magic Online(MO)
PCのみ対応・英語のみ。プレイヤーからはよく自虐的に村とかファミコンとか呼ばれる。
MtGのほぼ全てのカードが実装されており、あらゆるフォーマットで遊ぶことができる。起動するだけなら無料だが、あらゆるカードはtixという課金通貨で取引されており、つまり基本何をするにもリアルマネーがかかる(もちろん紙で遊ぶよりは安上がりなことが多いが)。その分競技志向のプレイヤーが多く、日夜開催されているイベントではレベルの高い戦いが繰り広げられ、優秀な成績をなしとげると公式サイトにデッキリストが掲載される
トップレアは現実以上にお値段が張ることもあるが、一方でその他多くの構築で使われにくいカードは文字通り二束三文で購入できる。取引価格が0.02tix(≒2¢≒2~3円)以下のカード限定で遊ぶPenny Dreadfulなんてフォーマットもあり、独特のメタゲームが展開されていて面白い。弱いカードしか使えないかと思いきや、むしろ強すぎて禁止になった結果使われなくなったりしたようなカードが利用可能になったりする。
なお、最近は公式が新弾発売直後に一定期間全カードを制限なく使えるサブスクリプションを販売している。多分25ドルぐらいだったと思う。参入にはうってつけだと思うので、下環境に興味のある方はそちらから始めてみてはどうだろうか。決済が全部ドルベースなので近年の円安は本当に苦しい。

Magic: the Gathering Arena(MTG Arena、アリーナ)
PC、Android、iOS対応。日本語あり。マスターデュエルに勝るとも劣らない完成度を誇る、現行のデジタルMtGの主流。
基本無料プレイで、普通にやっていても1日1パック程度は剥くことができる。スタンダードの全カードおよびパイオニアのほとんどのカードと、一部下環境のカードが利用可能。デジタルでしかできないギミックを採用した特殊なカードも存在する。現在進行形でカードプール拡充中。スタンダードは変わりなく遊ぶことができる他、パイオニア相当のエクスプローラーというフォーマットを始めとする限定フォーマットがいくつかある。
フリープレイではデッキのパワーレベルにあわせたマッチングが(概ね)されるので遊びやすい。DCG流行りのランクマッチももちろん存在する。カジュアルにプレイができることが大事だと考えられているからか、BO1が主に遊ばれている印象がある。もちろんBO3でのゲームも可能。また、時々リアルマネーのかかったイベントも開催される。
長所であり短所なところは、カードの生成システムが完全にレアリティ依存なので、トップレアもカスレアも等価であるところ。トップメタデッキも安上がりだがおもちゃデッキは相対的に高く感じてしまう。もっともこれはマスターデュエルやデュエプレなんかでも同じだが……


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