R・I・S・K③

目を覚ました時、竜次と洋次は、公園のベンチで横になっていた。
「やれやれ、やっと目を覚ましたか…」
2人は、暗闇に浮かぶ青い特攻服の男を見て、ハッ!と我に返った。
「安心しな、あんた達に話があって、ここに運んで来たんだ…」
男の顔をよく見ると、やはり、好美にそっくりだった。
「お前、まさか…、あの植村っていう女の、兄弟か…?」
洋次がそう訊くと、男は洋次の頭を思い切り叩いた。
「アホッ! よく見ろっ!」
男の顔をもう一度よく見ると…、
それは、紛れもなく好美だった…。
そして、2人の女の顔も、よくよく見てみると…、
1人は、忍…、
もう1人は…、
竜次の、よく知っている顔だった…。
「お前…、まさか、文人なのかっ…?」
普段、文人は学校で眼鏡をかけていたので、竜次以外、文人の素顔を知らなかったが(竜次は、文人をよく保健室に運んでいたので、ベッドに寝かせる時、眼鏡を外して素顔を見ていたのである)、文人も忍と同様、『美少女顔』なのである。
「えっ…! お前、あの眼鏡チビッ…?」
洋次は、文人の素顔を知らなかったので、かなり驚いた。
「竜次君、お願いだから、あの連中と手を切って…!」
文人は、目に涙を浮かべてそう言った。だが、竜次は首を縦に振らなかった。
「文人、悪いけど、俺と洋次は風間さん達に恩がある…。それを、仇で返すような事は…」
「…あいつらが、どんな連中なのか、もうわかってるんでしょう?」
好美がそう言うと、竜次は反論出来なかった。
「風間は、あんた達が恩義を感じるような、そんなヤツじゃないっ…。あんた達だって、風間がどんな事をするヤツか、知っているはずでしょうっ…?」
「…だったら、何なんだよっ…! お前らに関係ないだろっ…!」
竜次が怒鳴り声を上げてそう言うと、忍は思わず竜次の頬を殴った。
「って…、忍っ、何すんだよっ…!」
「竜次、フーちゃんが何で危険を冒してまでオレ達と一緒に行動しているか、まだわかんないのっ? フーちゃんは、竜次に元のように戻ってほしくて、強くなって説得しようと、いつもこの公園で、自主トレしてたんだよっ…!」
「えっ…?」
竜次は、思わず文人の方を見た。文人の手を見ると、傷だらけになっていた。
「フーちゃん、小学生の時、ちゃんと説得出来なかったからって、ずっと1人で悩んで、後悔してたんだよっ! 元に戻ってもらう為には、自分も、少しでも強くならなくちゃって…」
「…本当なのかっ…?」
竜次が文人を見ると、文人の目に、更に涙が溢れてきた。
「竜次君、お願いだから、あいつらから手を引いてっ…!」
文人は、強い眼差しで竜次を見つめながら、懇願した。
「文人…」
一緒、竜次の心は揺れ動いたが…、
洋次はそれを見て、文人を突き飛ばし、グイッ!と竜次の襟首を掴んだ。
「竜次、お前、風間さんの事、裏切るのかっ?」
その瞬間、竜次の迷いが吹っ切れてしまった。
「俺はっ…、裏切り者になりたくないっ…!」
竜次は、苦渋の表情で文人にそう言うと、洋次の手を引いた。
「…お前達の正体、風間さん達には適当にごまかして黙っていてやるよ。けど、もう俺達の事は、放っておいてくれっ…!」
竜次は、すれ違い際、好美にそう言い残し、公園を後にした…。


2学期に入ってからも、3人組の噂は絶えなかった…。
竜次と洋次は口裏を合わせ、司や他の仲間達には顔を見なかったと言ってごまかし、好美達の事を黙っていた。

そんな中…、
司は何人かの仲間と街にくり出した際、司と敵対している他校の不良達と出くわしてしまった。
「おーやおや、誰かと思ったら…♪ オイ、お前ら、見てみろよ。風間の腰抜け野郎だぜっ…♪」
リーダーの少年は、司の顔を見るなり、罵って笑い飛ばした。
「てめぇらっ…!」
司は思わず、リーダーの顔を殴った。すると、そばにいた仲間達が反撃してきて、街中で乱闘騒ぎになった。
1時間近くに及ぶ乱闘の末、司達が勝った。
だが…、
司の腹は煮えくり返っていた。
ーーこれも、あの3人組のせいでっ…!ーー
司は、3人組に恨みを抱くようになっていた。

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