R・I・S・K⑪

好美は、怪我をしている竜次を心配しつつ、次々と連中を倒していった。ナイフなど武器を持って襲いかかるやつらでも、好美は寸前のところでかわし、倒していった。
ーーホント、何て女だっ…!ーー
洋次は、好美の強さに圧倒されていた。
「危ないっ…!」
洋次の後ろから、鉄パイプを持った少年が襲いかかろうとしていたので、それを見て忍がとっさに少年を殴打した。
「何ボヤッとしてんだよっ!」
忍は洋次を一喝しながら、襲ってくる連中を倒していった。
「あの女、普通じゃないぞっ! 何て女だよっ…!」
洋次が半ば呆れてそう言うと、忍はニヤッと笑った。
「好美ちゃんは、誰よりも強いんだよっ…♪」
そう言って忍が離れた後、洋次はまた、連中を倒しながら、何度も好美の方を見た。
好美の強さは、半端じゃなかった。
元々、好美は柔道や空手、剣道などを習っていて、小学生時代から大会で優勝するなど、かなりの実力がある。
だが、洋次は、好美は力が強いだけでなく、内側からこみ上げてくる強さを持っていると、そう感じていた。
ーー俺は、今のままじゃ、この女には勝てない…ーー
洋次は、力だけ強くなろうとしていた自分を恥じていた…。

数時間後、竜次と洋次が多少反撃されたものの、たった5人で数百人いた連中を倒した。
残るは、司だけとなった…。
司は、学ランを脱ぐと、好美の前に立ちはだかった。
好美は、忍達に黙って見てるよう、目で合図した。
「なあに? 女相手に、武器を使わないと勝てないの?」
好美が挑発すると、司は、手に持っていた金属バットを放り投げた。
「この俺と、タイマン勝負たぁ、いい度胸じゃねぇかっ…!」
司の額の血管が、更に浮き上がってきていた。
「冗談っ? アンタみたいな腰抜けと勝負するのに、度胸も何も必要ないと思うけど〜…?」
好美は、司の顔を見て、一笑した。
「こ・の・ア・マ・〜ッ…!」
司は、これ以上ないというくらい、怒りを顕わにし、殴りかかってきた。
だが…、
好美は、何度も軽くかわしていった。
ーーすごいっ…。あの女、一切ムダな動きがないっ…ーー
竜次は、好美の無駄のない身のこなしと、半端じゃない強さを目の当たりにし、驚愕した。
「何、もうバテたの?」
好美を見ると、全く疲れた様子をしていない。司は、一撃も出来ないまま、次第に体力が消耗してきていた。
ーーくそっ…! こうなったらっ…!ーー
司は、ズボンのポケットに手を入れると、ナイフを取り出し、握りしめた。
「この、卑怯者っ…!」
洋次は、司の様子を見て、思わずそう叫んでしまった。
「うるさいっ、お前こそ、裏切り者じゃないかっ…!」
司は逆上し、洋次に向けてナイフを投げつけた。そのナイフは、洋次の左頬をかすめて、洋次の頬からツーッと血が流れた。
「…何してんのよっ…!」
それを見た好美は、完全にブチ切れ、司の顔に思い切りカウンターパンチを食らわせた…。
司は、その一撃で気を失い、その場に倒れた。
その様子を、周りにいた連中が一部始終見ていた。1人ずつ好美のもとへ歩いてくると、何を思ったのか、副番長の少年が、好美の前でひざまずいた。
「…今日から、アンタが番長だっ…」
「えっ…?」
好美が唖然としていると、他の連中も副番長に同意し、歓声を上げた。
「ちょっ、ちょっと、待ってよっ! そんな事勝手にっ…」
好美が慌てふためいていると、洋次がいつの間にか駆け寄ってきていて、勢いよく好美を肩車した。洋次の思わぬ行動に、忍達も驚いてしまった。
「コラッ、バカッ! 洋次、降ろせ〜っ!」
事態は収集つかなくなってしまい、結局、全員一致で、好美は新しい番長にされてしまった…。

翌日、文人は竜次を、父親の勤める大学病院へ連れて行った。
検査を受けた結果、竜次の肋骨と脚の骨に、広範囲でヒビが入っていた為、数ヶ月ぐらい入院する事になった。
その間、文人は毎日病院に顔を出し、授業のノートを見せていた。

好美はというと…、
放課後、副番長を屋上に呼び出し、番長になるのを断ろうとしたが、
「頼みますよ〜っ! 植村のアネゴが仕切ってくれないと、また風間にメチャクチャにされてしまうっ…!」
そう泣き付かれてしまい、正体を明かさない等といった条件付きで、好美は渋々、番長を引き受ける事になってしまった。

洋次は、好美が番長になったので、不良グループに留まる事にした。そして、今のままでは、好美の強さには到底敵わないと思い、今まで以上に自主トレに励むようになった…。

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