背中 第5話 肩に浮かぶ顔
大輔と美波は瑞稀の亡霊に怯えて暮らしていた
こういうものは、一旦心に刷り込まれてしまうとなかなか拭えない
大輔も美波も眠れない日が続く
そして長女、知佳が歩き始める
言葉も覚えはじめた
カタコトの会話も出来る様になって来たある日
知佳がカタコトの会話の中で言った
知佳「パパ、そこ、おんな、、、
おる、おる、、、こわい、こわい」
大輔「えっ⁉️なに⁉️、、、
ち、知佳、、、何か見えるのか⁉️」
知佳が指差して怯えるのは
大輔の背中、、、いや、肩か、、、
大輔「や、止めてくれよ、、、アイツがいるのか❓」
それ以来、知佳はなかなか大輔に近づかなくなってしまった
そしてとうとう、美波が離婚して欲しいと言い出した、、、
結婚して、瑞稀の分まで幸せになろう
などと本気で言っていたふたり、
その片割れが、そんな事を言い始めた
かなりの精神的負担に潰されそうになっている
そして大輔はなかなか行けて無かった義実家の訪問、仏壇への謝罪のお参りを
今更ながら決意して、義実家を訪れる
美波は行かない
その日は瑞稀の命日を避けて、休日にしたのだが、まさかの法事をしており、
親戚一同に顔を晒す事になってしまった
玄関が開いていたので、入ったが、
そこで義両親が出てきてボロカスに言われた
義父「この人殺しがぁ‼️なにしに来た‼️」
大輔は土下座🙇♀️しながら
大輔「すみません、せめてお線香だけでもあげさせてください、、、お願いします、お願いします🙇♀️」
義母「あんたなんかがお線香あげたところで、あの子は喜びませんよ、碌に謝罪もせんと、よう此処に来れましたなぁ、
ほとほと呆れてものも言えませんは」
義父に蹴りを入れられて、玄関から追い出された、そこへ親戚の誰かは知らないが、その人から大量の塩をかけらて
親戚「お前、汚ねーんだよ‼️、
魂が腐ってんだよ、今日は法事なんだ
みんな、あの子の御霊を慰めに来てんだよ、そこにお前なんざ来たって、穢らわしいだけなんだよ‼️帰れ‼️二度と来んな‼️分かったかぁーーーッ‼️」
散々だった、、、
しかし、まぁ、当たり前である
その後も偶に知佳が大輔の肩口を指差して言う事がある
知佳「あ、アレ、アレ、おる、おる」
そして美波の離婚の話も、続いている
美波「もう、別れてください、、、あの人に恨まれて恨まれてどうしようもないんです、このままじゃふたりとも幸せになんてなれない、、、」
大輔「幸せになれないって、お前
オレと離婚したからって、幸せになれるわけじゃないんだぞ‼️、そんな事も分かってないんか⁉️瑞稀の怒り、恨みを鎮めなきゃ幸せになんてなれないんだよ」
美波「だってそれはあなたが離婚したからでしょ‼️わたしは関係ないは‼️わたしはあなたに従っただけ‼️なんでわたしが恨まれなきゃなんないのよ‼️」
大輔は唖然としてしまった、、、
美波は全く自分がした事で瑞稀が自殺に追い込まれたという認識は持っていないのである、、、
しかし、いくら持っていなくともこの手の話、今のハラスメントと同じで、
受け手の捉え方によるものなのだから
美波が瑞稀から恨みを受けていることは
どう見ても明らかなのに、、、
その、自覚さえ無いのである
それでは何も解決しない
そして大輔は決意する
美波との離婚、、、そして、なにより
瑞稀の供養を真剣に考えて行うこと
そうすることが大輔のライフワークになった、、、
美波との離婚はすぐに出来た、、、美波本人が望んでいたのだから当然である
そして知佳の親権は当然のように美波が取った、養育費が欲しかったのだろうが、どこまでも姑息な女である
大輔は、仏壇へは参れないが、墓なら参れると思い、叱られながらも友人に土下座して墓の所在地を教えてもらった
そして、時間を作っては墓に参り花を上げ、蝋燭、線香を焚いて手を合わせて、成仏を祈った、
墓の掃除もした、、、ピカピカに磨いた
雑草が1本も生えていない程、徹底的に美化に努めた
相変わらず義実家は大輔に冷たかったが、墓参りについては黙認してくれていた
どうやら墓のあるお寺の住職が、大輔の墓前で祈ったり清掃する姿を見て、義実家の義両親に「罪を犯した者の改心と懺悔が一番の供養になるから、やらせてやりなさい」と言ってくれたようである。
ここで大輔と美波の生き方に、大きな違い、隔たりが生まれてくる
まぁ、別に離婚したのだから隔たりがあっても問題無いんだが、、、
しかし、その違いは長い時間をかけて、
大きな違いとなって現れるのである
…つづく…
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