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砂の道 第8話 見えない実態

恭平は廃人の様に暮らしながらも
その中で生きる目標を模索していた

いつまで、父、勘八や妻、貴子の愚行を
恨んだところで明るい未来は無い

しかし、それには、その想いと決別しなければならない、、、

そこで恭平が思いついたのは、
修行、、、である。

山に入って、滝に打たれたい

そう思った、、、

そして、友人の紹介で、武〇御〇神社に行く事になる

勿論そんな事は過去にした事がない、
不安もあったが、兎に角前に進みたかったのである


まだ薄寒い山中での滝行はキツイ

しかし精神を無にして集中すると、
苦痛から逃れられた、、、

目を閉じると滝の轟音も掻き消され、
静かな山中の景色が心中に広がる

あの件以来、これほど心を空白に出来た瞬間は無かった

清々しかった、、、

宿坊に戻り、夕食の精進料理に舌鼓

シャワーを浴びて部屋に戻って就寝

滝行の一日が終わり、空白の思考を思い出しながら目を閉じる、、、

疲れもあってか、すぅっと眠気がくる

しばらくすると風が吹く草原に立っている、、、夢だろう、、、その草原を歩いて行くと、段々花🌸が多くなる、、、

ふと気づくと花畑の中に立っている

花のいい匂いがする

目を閉じて息を吸うと爽快な気分になる

息を吐いて目を開けると、

遠くに誰か、立っている、、、

誰だろう❓、、、

目を凝らして見ていると段々大きくなってくる

何か仏像のような、、、

「あー、、、か、観音さまだぁ、、、」

なんとも有難いその御姿に平服する

そして次に拝したときには亡き母の姿、

「おっ、おかあちゃん、、、」

母はニッコリ微笑んで、
何か言おうとしているが声が聞こえない

口を読むと、、、こ、れ、を、み、ろ

かなぁ❓

すると、一瞬にして周りは一旦暗黒の
暗闇になり、
ドロドロ、ボコボコと音がする、、、
血の匂いがする、、、

そして眼前に広かった光景は

血の池、、、地獄

真っ赤な液面にボコボコとガスか湧き上がる、、、

白いウジ虫の様なものが無数に湧いている

なんとも異様な光景に
驚きを隠せない恭平、、、

そこへ、ゴボゴボゴボゴボっと

何か湧き上がってくる、、、

バシャーーーッ

そこに現れたのはなんと、、、

貴子である、、、息を粗くして

「ハァハァハァハァぐるじぃ〜ごぅ〜」

また下から泡が湧き上がってくる
ゴボゴボゴボゴボ

バシャーーーッ
ゴボゴボゴボゴボ

なんと貴子は池の中へ入り込み

そこに現れたのは、勘八

「ハァハァハァハァ、ゴホゴホッ」

顔に這い上がるウジ虫を払い落としながら、、、

また下から泡が湧き上がってくる
ゴボゴボゴボゴボ

バシャーーーッ
ゴボゴボゴボゴボ

また、貴子が現れる、、、

恭平「こ、これは、、、」

なんと勘八と貴子が上下反対にちょうど69のような形になって癒着して
血の池に浸っている、、、苦しくて交互に顔を液面に出してくる、、、

恭平「あーっ、何という事だ、、、
もう、忘れさせてくれーーーっ‼️」

そう叫んだ瞬間、、、暗黒になる

そしてまた草原にもどっていた

そこには亡き母がいて

こっちを見ている、、、

そして声ならぬ声が聞こえてきた

「救ってあげなさい」、、、と


そこで目が覚めたのである、、、

驚いて起き上がる恭平

恭平「なんだ、夢かぁ、、、
しかし酷い夢、見ちまったなぁ、、、」

もうそれからは、目が冴えて寝付けなかった

早めに起きて、
受付の部屋にいた
滝行の指導をしてくれた僧侶に
夢の事を話した、、、

僧侶「それは大変な夢を見ましたね
少し待って下さい、上司に話して見ますから」

そう言って別れ、宿坊の部屋に居ると
呼び出された

役職者の部屋へ行ってみると上司の人が話をしてくれた

それは

上司「あたは霊界の有様を見せられたのです。観世音菩薩は母の姿を借りて、貴方にその御両名の霊界での有様を見せられたのです、不義を行った霊が情死をすると、霊が上下反対に密着して存在する事があるといいます、そして、血の池は出産絡みの罪が有るのもが行くところであると言います、そして救いなさいと言われた、、、それはあなたにはお母さんの言葉かも知れませんが、その本意は観音様の御心なのです」

恭平「どうすれば良いんですか

上司「そうですね、、、徳を積む事
ですね、貴方が徳を積むことによって
御両名が救われることになりますよ、
そう簡単ではありませんが、、、
そして、苦しんだあなたが幸せになる事ですよ」

恭平「ふむ、なるほど、、、
徳を積むねぇ、、、具体的にどうすればいいんですぅ❓」

上司「そうですね、世の為人の為に施しをする事ですかね、、、
例えば、恵まれ無い子たちの施設に寄付をするとか、それらは経済的な事ですが、あなたご自身が奉仕する事も良い、または、仏門に入って仏に帰依しても良い
やり方は色々ありますよ、しかし厳しい道です、、、」

恭平「ふむふむ、分かりました、、、
お話し頂きありがとうございました
今後の参考にさせて頂きます」

恭平は滝行を終えて家に帰った

そしてまず、仏壇を設えた

四十九日が終わって位牌を作って
お坊さんに仏壇へ入れてもらった、、、
勘八も貴子も、、、

そして実家を売却した

そのお金を地元の児童養護施設に寄付をした

義両親には余りにも酷い話しなので、
伝えるのは躊躇していたが、
義父には機会を作って伝えた、

すると理解してくれて、寄付金を出してくれた

そのお金は、今回の事が啓示された
武〇御〇神社へ寄贈した


恭平が寄付したとき児童養護施設へ挨拶に行ったらそこに保育士として同級生が勤めていた

則子というその同級生は、この児童養護施設を運営するNPO法人の理事長の娘、

そんな理事長の娘が、一保育士として
勤めていたのである

恭平「いやぁ、則子、久しぶり」

則子「あら、恭平じゃない、今日はどうしたの❓」

恭平「あー、この施設に寄付に来たのさ、オヤジの家、売却したからさ」 

則子「またまた、冗談でしょwww」

恭平「笑笑、あのなぁ、
冗談じゃあないよ、コクコクコク」

則子「それ、古いはぁ、タケシやん」

恭平「ああ、オヤジに教えてもらった」 

則子「オヤジさん、元気❓」

恭平「お前、知らんかったんか❓
あの事件の事、、、」

則子「えっ⁉️、、、し、知らんけど」

恭平「まぁ、ここじゃあ話せんから今度ゆっくり話すよ、、、」

則子「へー、って事は、オヤジさん亡くなったって事なの❓」

恭平「ああ、そう言うことだなぁ」

則子「ごめんねー、不躾な事聞いちゃって、、、ご愁傷様でした、、、
てか、じゃあ今度、お仏壇、お詣りに行っても良いかなぁ

恭平「ああ、ええよ、詣ってやってくれ、きっと、喜ぶよ」

その時連絡先を交換して別れた

夕陽に照らされた施設は
琥珀色に染められて
ふたりはその柔らかな光に包まれていた




…つづく…

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