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【BBG】BBGセッション9月レポート|りきや

2023年9月10日 曇り
BBG(Blue Berry Garden)黒岩の破戒劇場にて振付家・ダンサーの鈴木ユキオさんによるコンテンポラリーダンスワークショップを開催しました。この日は、カメラ撮影係を詩人で朗読家のGOKUさんにお願いしました。佐久市在住GOKUさんには、わかち座の活動を様々な局面でサポートしていただいております。いわば「となりのGOKUさん」です。

写真を撮るGOKUさん(黒岩 撮影)
いつものストレッチでカラダと気持ちをほぐします

BBGセッションも残す所あと3回となり、11月26日のショーイングに向けて更に深めていく濃密な時間は、いつものストレッチで始まります。カラダの各部位の存在を確認する様な鈴木ユキオさんのストレッチで、セッションメンバーのクリエーションへの集中が自然に高まっていきます。会場の破戒劇場は、半野外の環境です。ブルーベリー直売所の建物から庭に突き出すような形になっていて、土の上にシートを敷いた床は凸凹しています。子供が遊べるスペースをその一角に設けてあるので、お子様連れの参加もできる環境です。子供達の楽し気に遊ぶ声が、集中したクリエーションの空気をほっこり緩めてくれます。

破戒劇場で遊ぶ子供
庭へシームレスに繋がる環境
小松順子さん 神津利恵子さん

ストレッチの後に行った、ティッシュペーパーを使ったワークでは、ティッシュペーパーの予期せぬ動きによる「遊び」をトレースする事で、自分の動きから別の物になってみる面白さを共有しました。

ティッシュペーパーのワーク 自分の動きとは違う面白さ
稲井咲紀さん

さて、前回のBBGセッションに続きメンバーの何名かに対して、キザムさんにインタビューしていただきました。月に一回ここに集まり、鈴木ユキオさんや仲間たちとカラダやダンスに向き合う時間を、どの様に受け止めているのでしょうか?

左から 渡邉諭さん(さっとん)森田芳文さん 前田斜めさん

【質問・1】
このセッション出る様になって、普段の自分の生活とか、考えている事とかで、特に変わった事ってありますか?

【渡邉諭さん(さっとん)・1】 
そうですねぇ。なんだろうなぁ、日常とかで変わった事は、うーん。なんだろう。割と、僕は結構、ダンスの事を中心に、考えてしまっている と言うか、日頃からダンスの事を割と今、考えるようになっていて。 だから、日々のカラダの使い方とか、これはダンスに応用できるかなぁとか、そういう感覚で過ごしている時間が多いので、なんか日常に役に立った みたいな感じよりは、ダンスが日常に、なんだろう?侵食して来たみたいな と言うか、それが強いなぁという感じがしますかねぇ。なんか物理的に調子が 良いみたいなのは、ありますけどね。えへへ。カラダとか。 カラダの感じとか、体力ついたとか、ありますね。普通にね。そうですねぇ。

写真手前 渡邉諭さん(さっとん)

【質問・2】
あと、なんか例えば、ちゃんとした劇場とかホールとかと比べて、この場所でやる事について、なんだろう。えーと、そこの価値みたいな。ここでやる事の可能性みたいな事があるとしたら、どんな事ですかね?

【渡邉諭さん(さっとん)・2】
そうですねぇ。なんかホールとかでやるのとか、そういう、なんだろうなぁ。都会的な建物の中でやるのとかも、それはそれで多分違う感じになっていいんじゃないかなと思うんですけど、スタジオとかでやるのも。それはそれで特有の何かが生まれると思うのですが、そういう意味でこの場所は、ちょっと 開放的って言うのが、そういう建物の中とは違う所ですよね。開放的だったり自然を感じられる、雨降っていれば濡れるし、風が強ければ風を感じながら出来るし、日差しが強ければジリジリと暑い。そういう熱気を感じるとか。まあ後は、今日は無いですけど、カエルの声とか虫の声とか鳥の声とか、そういう物の、情報量は多いのかなぁという感じがしますね。 インプット量と言うか、五感で感じる情報が多いので、それから受けるインスピレーションみたいな物は、まあ、ふくよかな物と言うか豊かな物になるんじゃないかな。なんか体育館みたいな所で、やるよりは。アート的な物を生み出す上において、たぶんそういう感性みたいな事は大事だと思うんで。そういう五感を感じながら、インプットしつつアウトプットするって言う事が出来るのは、けっこう良い事なんじゃないのかな。この場所ならではの事なのかなぁと、なんとなく思いました。 

ティッシュペーパーのワーク 手前が大村麻弥さん

【質問・1】
このセッション参加する様になって、普段の生活とか考え方とか、なにか変化はありましたか?

【大村麻弥さん・1】 
変化ですか?普段の生活で。うーん。でも、なんだろうなぁこれを始めて、すぐの時は、なんか自分のカラダって、こんな風にも動くんだ、みたいなことを、この場では凄く良く感じて、動かしていなかった所を、凄く意識して。背骨からこういう風に、繋がっているのかなぁ、とか。自分のカラダの中の動き方、みたいなモノを凄く感じていて。ユキオさんが最初、地面からエネルギーを取って来てとか、こう手が伸びた感じとか、私の今までの踊りではなかった様なラインと言うか、考え方を教えてくれるので、なんかそれは、生活の動きの時でも、なんとなく繋がっているかもとか感じるかな。

大村麻弥さん(左) なみさん(右)

【質問・2】
ありがとうございます。あと、例えば普通のステージって言うか、劇場とかちゃんとした設備の所ではなくて、この場所であるって事の価値みたいな。或いは、可能性。もっとこんな事出来るんじゃないかみたいな。なにかありますか?

【大村麻弥さん・2】 
ああ。なんか、もうユキオさんのワークショップって言ったら、もうここ。ここが定位置って感じがしているから、凄く土の感じが先ずしっかり、自分の足の裏で感じられるって言うのが、凄くやっぱり大きな違いって思うんですよね。劇場でやるよりも、外で感じるような感覚を自分のカラダの中に入れ込めるって言うのは、凄く自分のカラダが、自然の中で動いている様な感じは凄くやりやすい。自分の動きが出やすい感じはしますね。景色もそうだけど。私の場合は、この足のちょっとゴツゴツしている場所を選んだら、逆に安定するかなぁみたいな所とかも、片足で立つ様な時とか凄く大地を踏みしめられるって言うか。まあ、感覚的にもなんて言うかな。あんまりやりにくいって感じは無いですね。まあ、なんかね。冬とかになったら違うかも知れないですけど。今の季節だから、なんかいい感じはしますね。

写真中央 森田芳文さん

【質問・1】 
このセッション受ける様になって、なにか普段の生活とか考え方とか変化した事ってありますか?

【森田芳文さん・1】 
変化した事かぁ。えっと、単純にそのカポエラしかやってなかったじゃないですか。だから、その物理的な物かも知れないですけど、その。単純に自分の動きが変わってきた、と言うのもあるし、カポエラのクラスもしているんだけど、それの中でもこういうの、取り入れられたりとか。あと、カポエラのクラスの部分をミックスして、全然ダンスとかやってない人とかと、共有できると言うか、そういう面がある気がして、まあそういう意味で凄く変わった感じが。ああ。なんだろう。運転する時とか料理している時とかに、踊ったりもするし日常に出てくる、ふとした動き。びっくりした時とか、なにか取る時とか、これもうダンスだなみたいな。そういう気づきはありますね。みんなで踊る楽しさもありますけど。

【質問・2】
あと劇場とかちゃんとしたステージみたいな所じゃなくて、この場所であるって事の価値みたいな物とか可能性みたいな事とか何か感じる事ありますか?

【森田芳文さん・2】
ああ。価値ね、価値はやっぱり。劇場ほど硬くもないし、何て言ったらいいんですか?なかなかこういう所ないじゃないですか他に。でもねえ。言い方は悪いけど、小諸の田舎でこういう事やって、でもこれだけの人が集まるって凄いですよね。で、それぞれがなんか、良い事も悪い事もシェア出来たり、それを持ち帰って日々の生活に活かせたり。味噌じゃないけどね。色んな味の味噌が混じっていて、それで地域がまた精神的に豊かになって行くんでしょうね。劇場じゃない良さって劇場だとなかなかね。前も話したけど、ずっとリハーサルして来てその現場が終わったら、たぶん会わないってなっちゃうじゃないですか?でもここは定期的に集まれるし、なんだろうな。新しいですよね。農とダンス。

ティッシュペーパーのワーク 写真手前が前田斜めさん

【質問・1】 
セッションに参加する様になって、何か普段の生活とか自分の考え方とか色々何でもいいんですけど。なんかこう今までと、なんか変わったなぁと言うか変化したなって思う事ってありますか?

【前田斜めさん・1】 
ああ。えっと、やっぱ、うんと。演劇やっているんで、ステージに立つ事はあるんですけど、まあ、その立つ以前にと言うか。演劇的にステージ上がるってなると台詞があったり、他の要素が多いんですけど、まあそもそもの立つ方法みたいなのを、最近は意識しているって言うか、勉強したいなと思いながら、日々も、いるって言う感じなんですけど。日常に変わるって言うよりは、ここに来ると色々意識できるんですけど、そういった事を日常でも意識できる様になりたいな、と言う感じです。

床のシートの下は土です

【質問・2】 
はい。ありがとうございます。あと普通の劇場とかステージみたいな場所じゃなくて、この場所でやるって事のなんか、価値みたいな物と言うか、あるいは可能性みたいな事、もっと色々出来るかな、みたいなそういう事ってありますか?

【前田斜めさん・2】
ここですか?ここは、だからやっぱ可能性は、めっちゃあるんじゃないですか。てか普通の劇場でとか、あと公民館とかでやるよりは、なにせ光と風と土とか近いんで、なんかそこで感覚が磨かれる事も非常に多いと思うので、うーん。でも難しいですよね、その感じを他で他の場所でなんかやるのって難しいと思うので、ここならではの事が凄いありますね。うん。だから同じ、ワークショップもこの同じ内容の事を、例えばサントミューゼでやっていたとしたら、どうなっただろうなぁ、みたいな感じで。なんか違う感じになってただろうと思うんで、とりあえず成立はすると思うんですけど。どっちでも、ただ味が違うだけで、と言う感じですかね。


ティッシュペーパーのワーク 戸谷ひかりさん

ティッシュペーパーのワークから発展して、別の質感の物の動きをチームに分かれてトレースしました。

アルコールスプレーを動かし動きをトレースする
椅子を動かしその動きをトレースする
葉を動かし動きをトレースする
ミニブリキ缶を動かし動きをトレースする

このワークに対する感想を、カメラ撮影係をしていただいたGOKUさんに書いていただきました。詩人で朗読家のGOKUさんが、鈴木ユキオさんのワークを、どの様に感じたのか知りたいと思ったからです。


自由と制約  GOKU 
 BBG(ブルーベリーガーデン)黒岩で開催されている「BBGセッション」に、スタッフとして参加している。主には記録として画像を残すのが私の役割だ。と言っても、クリエイションそのものを近くで見ているのだから常にそれは興味深い。前回は、具体的な物のイメージをもって踊ることで、自分の中に眠っていたダンスを引き出すようなワーク。「自由」に踊るというのは実はとても難しいようだ。自分の体の癖、動きやすい方向、イメージしやすい動き、気持ちよさと、それらの組み合わせには、実はそれほどのパターンはないようで、自分では「自由」に踊っているつもりでいても、他者からみれば、どこかその人の中での画一的なパターンに引っ張られてしまうようだ。それを壊すために、具体的な「物」のイメージを取り入れる。この日は椅子、ほうきと塵取り、羊歯の葉、アルコールスプレー、ミニブリキ缶などを各々のチームが使ってダンスをしていく。
 なるほど、今まで各々が踊っていた体からまるで別な動きが引き出されていく。物を動かす人とその物の動きをトレースする人。そして、物を置いてお互いにイメージを思い出したり、想像したり。最後は、その物をなくして、脳内と体に残るイメージやダンスの記憶を頼りに、参加者たちが踊り出す。それは、まさしく彼らの中になかった、でも彼らの中から新しいダンスが生まれる瞬間だ。
 「物」を与えられることで、不自由になったかと思われたダンスが、物のイメージから眠っていた動きが引き出され、新しいダンスが生まれる。パターンから逸脱した新しい動き、新しいダンス。それは、まさしく新しい自由を身体が発見したことに他ならない。
 制約があるから自由になれない、なんてことはないのだ。17音という制約の中で、無限に俳句が生まれるように、制約を使うことで、体は時に、もっともっと自由になる。


椅子の動きの記憶で踊る
アルコールスプレーの動きの記憶で踊る
ほうきと塵取りの動きの記憶で踊る
鈴木ユキオさんと思考のプロセスを共有
11月のショーイングが楽しみです

鈴木ユキオさんのワークショップを継続的に行って来た今年度のBBGセッションは、ブルーベリー直売所や個々のメンバーの中に根を張り、色とりどりのダンスの花が咲き始めています。個々に咲いた花が互いに受粉し、どの様な果実を実らせるのでしょうか?11月26日のショーイングが楽しみです!

次回BBGセッション
10月15日(日)13:00~16:00
会場 ブルーベリーガーデン黒岩直売所

BBGセッションはどなたでも見学できます
見学を希望される方はお問合せください

写真:GOKU
BBGセッションチラシ裏面

わかち座
BBG事業
 農作物とアート作品を収穫するプロジェクト
企画・制作
わかち座

支援
信州アーツカウンシル
(一般財団法人長野県文化振興事業団)

令和5年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業

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