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【BBG】BBGセッション11月「カラダCOLORS」ショーイングレポート(後編)|りきや

2023年11月26日 晴れ

BBG(Blue Berry Garden)黒岩にて振付家・ダンサーの鈴木ユキオさん振付演出によるコンテンポラリーダンスショーイング「カラダCOLORS」を開催しました。今年度の集大成となったショーイングのレポート後編をお届けします。因みにレポート後編の写真は、藤澤智徳さん(信州アーツカウンシル/コーディネーター)の撮影です。藤澤さん、ありがとうございました!

破戒劇場(外観)

ブルーベリー直売所の庭に、使わなくなった農業資材を再利用して作られたのが「破戒劇場」です。2023年の春から月に一回、この場に15名のメンバーが定期的に集い、鈴木ユキオさんのワークを共有してきました。午前中にワークショップやリハーサルを済ませ、お昼ご飯休憩の後、ほどなくして開場時間になります。BBG黒岩の駐車場に次々と車がやってきます。直売所の色んな場所で、ソロダンスが始まりました。

鈴木ユキオさん
前田斜めさん
山﨑到子さん

ブルーベリーガーデン黒岩のあちこちで、ソロダンスを踊るBBGセッションのメンバーたちを、お客さんは回遊式に自由に観て回ります。野外で観るダンサーたちの踊りは、風・木・葉っぱ・土など、自然と調和するパフォーマンスです。

大村麻弥さん
つくだあずささん

自分が決めた場所で、自分が決めたモノやイメージに「動かされる」ソロダンスは、それぞれの伸び伸びとしたカラダを感じる事が出来る時間となりました。ブルーベリー直売所の建物の中でソロダンスを踊るダンサー達も、それぞれにダンスを楽しんでいます。日常生活の中にダンスがある風景が、直売所のあちこちで立ち上がります。

司白身さん(手前) 小松順子さん(奥)
戸谷ひかりさん(手前)  水野安実さん(奥)
なみさん(手前) さっとん(奥)

そして、ソロダンスをしているダンサーの一人一人に鈴木ユキオさんと菜緒さんが重なりに行き、個々にパフォーマンスしていたダンサーたちが破戒劇場に集まってきます。その流れに合わせて、回遊して観ていたお客さんたちも、破戒劇場へと集まり客席に座って行きます。

小松順子さん(手前) 鈴木ユキオさん(奥)
破戒劇場の客席
鈴木ユキオさん(中央) 安次嶺菜緒さん(手前)

鈴木ユキオさん菜緒さんのペアによるダンスから始まり、ダンサーたちそれぞれが躍動感あるダンスを展開していきます。ダンサーたちの生き生きとした表情が印象的です。

稲井咲紀さん
森田芳文さん
つくだあずささん

野外からの穏やかな日差しが差し込む中で、生命のエネルギーが躍動する瞬間を素早く捉えるダンスは、カラダがそこに「在る」と言う事をシンプルに表現しています。プロセスを大切にする鈴木ユキオさんのワークの積み重ねが、個々のダンスに活かされる素晴らしいパフォーマンスでした。

伊東昌恒さん
神津利恵子さん(中央)
司白身さん(中央)

モノとカラダのダンスでは、ティッシュペーパー・葉っぱ・アルコールスプレー・椅子・ほうきと塵取りなどを使います。モノに「動かされる」カラダの状態が、バリエーション豊かなダンス表現に繋がっていきました。

小松順子さん(左)  神津利恵子さん(右)
イスとカラダのダンス
山﨑到子さん(中央)  伊東昌恒さん(右)
大村麻弥さん(左)  なみさん(右)
ほうきと塵取りを使いダンスするダンサーたち

それぞれのダンスを、観ている時のダンサーたちの表情も、とても印象的でした。ダンサーたちがコンテンポラリーダンスを楽しむ雰囲気は、客席で観ているお客さんにも伝わっていたと思います。舞台袖などが無い破戒劇場は、ステージや客席がシームレスに繋がっている為、様々な場面や表情をわかち合う事が出来る場所になっています。

夕陽が差し込む破戒劇場

ショーイングの最後は、空間と人との関係を表現したダンスがステージに展開されました。ダンサーたちは無音の中、空間に自分のカラダを置いていきます。直前の空間を見て、自分のカラダをどこにどんな風に置く事で、新しい空間を生み出せるか、というダンスです。様々に展開するダンスに、変化の激しい世相を想起しました。

色とりどりのカラダ
新たな空間と関係性が次々に展開するダンス

新型コロナ禍の中で、さまざまに翻弄された「暮らし」が新たな関係性や、繋がりによって結びなおされて行くかの様なダンスが、様々な質感や色彩を破戒劇場に広げて行きます。「カラダCOLORS」の締めくくりに相応しいダンスでした。

素晴らしいダンスパフォーマンスをありがとうございました!

ショーイング終演後、佐久市在住のGOKUさん(詩人/朗読家)司会によるアフタートークが行われました。アットホームでリラックスした雰囲気のアフタートークは、これまでのBBGセッションを象徴する様なとても良い空気感でした。

GOKUさん(左)  鈴木ユキオさん(右)
稲井咲紀さん
大村麻弥さん
黒岩力也(中央)
観客で来ていた松﨑晃さん(中央)にもトークにご参加していただきました

アフタートークも終わり、総てのお客さんが帰った後に出演者やスタッフで集合写真を撮りました。この時の皆さんの笑顔と、コンテンポラリーダンスを通じた繋がりが、BBGセッション最大の収穫だと感じました。2023年の春からの長い期間に渡るBBGセッションでしたが、ご協力いただいた鈴木ユキオさんと安次嶺菜緒さんに感謝申し上げます。
本当に、ありがとうございました!

最高の笑顔で今年度を締めくくりました!

それではショーイングレポートの最後に、ショーイングの写真撮影をしていただいた藤澤智徳さんと、観客としてショーイングを見届けていただいた津村卓さんのインタビューをお届けしたいと思います。インタビュアーは、なみさんです。


藤澤智徳さん(信州アーツカウンシル/コーディネーター)
インタビュー
【質問1】今日、ご覧いただいてどうでしたか?

【藤澤さん・1】そうですね。僕、めっちゃカメラ撮ってたんで、カメラ撮ってる時って、ダンスとして観れないって感じなんですけど。なんか場として良い場だなって、作品としてって言うよりも皆、お客さんもいて、ずっとやってきたダンサーの方たちもいて、なんか場が素敵だなって思いました。写真撮ってると動くので、ピントもズレるのでピントも直したりしていると正直あんまりこう、ダンスとしては…。被写体っていう感じになるので、そうなんですよね。だからいつも、悩ましいって思います。ダンス撮るのが難しいですね。演劇は「決め」があるんですけど、ダンスは決めがないから。凄い難しいですね。

【質問2】この場であるって言う事で、考える事とか感じる事はありますか?

【藤澤さん・2】まあ。黒岩さん達とのお付き合いが、3年目で最初の時はここがなかったんで。それで「NAGANO ORGANIC AIR」をきっかけにここを活用しようみたいな感じだったので、その時に結構いろいろ制作のやり方とかお伝えしたりとか、割と何か、一番最初をちゃんと支援したって自負があって、だからここの場は結構思い入れがあるんですよね。なんかどういう風に成長して行ってるのか、とか。そういうのが何か凄い気にかかる。だから、そう。最初の時もお客さん集めるのも、凄い大変で。でもね、今日もお客さんだけじゃなくダンサーの人も沢山集まって、なんかこういう繋がりが出来てるって言うのが、単純に凄い。
「NAGANO ORGANIC AIR」

【質問3】この場所が育っていく事に対して、何か思う事とかありますか?

【藤澤さん・3】まあ「NAGANO ORGANIC AIR」って、うちの主催事業を一緒にやって、こっちがノウハウをお伝えして、それで今度自分たちでやるぞってなって、助成金をとるって、流れとしてストーリーが綺麗じゃないですか。凄い色んな人にお伝えしやすいパターンなんですよね。ここって。そうそうそう。それでブルーベリー農場なのに劇場がある所もあるし、だからそういう意味だと、こっちとしても色々こう何か、モデルケースとして良い扱い方って言うとあれですけど、紹介をさせて貰いやすいなって、けっこう研修プログラムとかでも何回か来て、大村麻弥さんとかも最初それで知った筈だし。今後に関しては、そうですね。なんかあんまりこう無茶をしない、無理しない方が。ほどほどに。楽しく無理しないでやって欲しいなって、他の何かね。後は、なんかうちの助成事業だけじゃない活動、それこそ、わかち座さんの本公演とか、そういうのなんか観たいです。近所なんで割と行きやすいんで。ご近所さんとか、「NAGANO ORGANIC AIR」の時からずっと話していた事なんですけど、どうやったらご近所の人に広げられていくか、いろいろ凄い試されていて、難しいと思うんですけど。なんかね、ちょっとでもキッカケがあればね。凄い頑張ってやってると思いますよ。いろいろ、掲示板作ったりとか、ブルーベリー買いに来た人が興味持てるように。凄い努力されてるなって思うんで、それはなんか支援って言うより応援ですよね。個人的に応援していきたいと思ってます。今後ともよろしくお願いします。


津村卓さん(信州アーツカウンシル/アーツカウンシル長)インタビュー

【質問1】今日のショーイングの感想とか何かありますか?

【津村さん・1】鈴木さんも言ってましたけど、作品をねシビアに作って行くって事じゃなくて、皆がどういう風な形で繋がって行ってるかは、僕も凄くわかったんですけど。ただ、それを観る側が、観させていただいて一つの作品に凄く繋がって行ってる感じに思ったんですね。それは観る側のそれぞれの解釈なんで、皆がバラバラにやるところから始まって、僕は何かね、凄くそれが惑星が広がって、それが鈴木さんに吸引される様にバァっと集まってきて、ある一つの世界が生れて。例えば地球誕生みたいな感じからそれぞれの島とか国が生れて来て、それが一つずつ表現されてきて最後まで、そこがずっと一つの星が成長していくシーンみたいに捉えながら観ていたんで、凄く面白かった。身体的に皆が、出来上がっていくって言うと変だけど、ダンスをするカラダにちょっとずつちょっとずつされて行くと思うんですけども。なんかそれ以上に自分の身体を通じて何かを表現したいって言う気持ちが凄く表に現れてきた、1年間、2年間、3年間の。まあ、時間はそれぞれだけど。一番長い人は3年ですから、徐々に徐々にやっぱり、そこが蓄積されて行くって言うのかな。みたいな感じで受け止めさせて貰いました。だから、もの凄く今日の一時間は、観ている側にとってはもの凄い想像力を喚起して楽しめた世界になったかなと思う。

【質問2】直売所の、こういう場所でやっている事に対して何か感じる事がありますか?

【津村さん・2】ああ。この場は、なんて言うのかなぁ。やっぱり黒岩さんの想いみたいなものが、いっぱい詰まっていると思うんですね。凄い不自由ですよ。やる側も皆が不自由だと思うんですよ。普通のホールに比べれば、寒いし暑いし、だけどそこに色んな人が集まってきて、色んな人がそこでわいわい言って、あーでもないこーでもないと言いながら、ここはこうした方がいいんじゃないの?なんて言いながら、わいわいしていく事が、本当は劇場なんですよ。本当の劇場はそういう事なんです。色んな多様なね。真面目な言い方すると多様な人たちが集まって、年齢も職業も何もかも全部含めた、子供もね。多様な人たちが集まって、皆の想いをそこに出していく所が、僕は劇場だと思っているので、そういう意味でここは劇場だという風に思っているんです。うん。だから、そこで今日みたいな公演があるって言うのは、凄い素晴らしい事だなって言う風に思う。昔のなんて言うかな、人が集まってお祭りみたいなモノじゃないですか。だから、かしこまってここは、そういう事はやってはいけないとかそういう事じゃなくて、まあ、もちろんものにもよりますよ。ものによるんだけど、そういう空間ってものが町の中に、地域の中にある。ルールに縛られないって言う事はその地域の人達が何か表現していく為に、凄く良いひとつの刺激になる気がしますね。将来的ひょっとするとブルーベリーガーデン黒岩でお祭りが行われるかも知れない。お祭りが、おっきなお祭りになるかもわからない。でもね。ここでね普通に直売だけでやっているだけだったらそんなイメージないんですよ。この空間。テントとも言えないこの空間の中にいわゆる人間の「業」とか、人の喜びであったりとか、悲しみであったりとか、そういう物がね、1年1年積もって行く。それがね、本当の劇場だと思うんで。劇場だし何か表現空間の様な気が、僕はするので、ここは素晴らしいと思う。なんでもありなんですよ。本当はそうなんです。特にね、僕はちょっと芝居系の人間なので、芝居ってなんでもありなんです。もちろんね、ベースになる型はあるんだけど、だからね。役者は皆、型って言うのはあるんだけど、型を破って行く「型破りな奴」ばっかりでいいんです。そういうもんだと思います。すいません。こんな事しか言えないですけど、ありがとうございました。


ありがとうございました!

写真:藤澤智徳

わかち座 BBG事業

農作物とアート作品を収穫するプロジェクト
企画・制作
わかち座


支援
信州アーツカウンシル
(一般財団法人長野県文化振興事業団)

令和5年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業


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