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恐喝事件から考えるベンチャー企業のレピュテーションリスク(2) 狙われた新興フィットネス企業

 電話で相談してきた相手はそのフィットネス企業の総務担当者でした。私と警部補・Iのチームは、まずはフィットネス企業の関係者から、具体的にどういった脅しを受けているのかについて聞くことにしました。こういったケースの場合、当該事情について知っている可能性がある関係者としては、直接的に脅された人、そのやりとりを見ていた人、間接的に話を聞いた上司や部下、脅迫者から電話やメール等を受けた人(電話・メールの交換者やカスタマーサポート・センターの担当者など)、状況の報告を受けた役員などが想定されるので、そういった人たちがまずは事情聴取の対象となります。

 一通り関係者の聴取が終わり、明らかとなった脅迫の内容は次のようなものでした。

・脅迫してきた被疑者らの友人である女性客が、そのフィットネス企業の提供する減量を目的としたパーソナルトレーニングを契約していた。
・しかし、ある程度の期間継続していたものの、なかなか思うように効果が現れない状況にあった。
・そんな中、パーソナルトレーナーがその女性客に対し、会話の中で「もう痩せ薬を飲むしかない」と言ってしまった。
・その女性客が上記のやり取りについて被疑者らに話したことから、被疑者らがフィットネス企業に対して、パーソナルトレーナーの言動に対するクレームを入れてきた。
・被疑者らは、パーソナルトレーナーの言動を録音していること、場合によってはマスコミに公表するといった脅しをしてきている。

 これらの状況を受け、私と警部補・Iは、その女性が実際に契約している事実があるかを確認し、さらには当該パーソナルトレーナーから実際にそういった内容のやり取りがあったかについて直接聞くことにしました。すると、当該パーソナルトレーナーはその女性客とそのような話はしたものの、相手から話を誘導されるような流れの中で言ってしまったということでした。なお、被疑者らが当時のやり取りを録音しているとは言ってるものの、録音内容をフィットネス企業側に提示していない状況から、実際にテープが存在しているかどうかについては不明のままでした。

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