『豊中智樹はしたり顔 第一話甲子園が泣いている!反則野球部と恐怖のコルクバット!の巻』後編

<部室>

放課後。
グラウンドの東側、運動部用の部室棟一階に野球部の部室がある。
野球部部長ガメラ梅井はバットの調整をしていた。

「あんな素人にバレるとはな、もっと上手く調整しなければ」

梅井はバットにドリルを当てる。
ここにあるバットは全て部長ガメラ梅井によって改造されたコルクバットだ。

「まあ、奴も今頃焼却炉の中さ。この秘密を知るものは俺一人だけでいい」

カシャ

「そうだな、俺たち二人だけの秘密だ」
「何者!?」

バァン!
部室のロッカーが勢いよく開く!中から出てきたのはご存じ我らがヒーロー豊中智樹!

「馬鹿な!貴様は死んだはず!」
「へへ、誰もいない部室で一人でシコシコと。とてもお茶の間に流せない画が撮れちまったなぁ」
豊中は不敵に笑いながらカメラを見せつける。
「てめぇ・・・見られたからには生かしちゃおけねぇな。この120%コルクバットの錆にしちゃる!」
ガメラ梅井は部長専用特製120%コルクバットを取り出し、えいやと降りぬく!
上体をそらし避けた豊中・・・次の瞬間!

Z
 B 
  A
   A
    N!!!!!!


後ろのロッカーがなんと真っ二つに切れているではありませんか。
一般的な高校生のフルスイングは時速300キロ前後と言われているが、通常のバットよりも軽い120%コルクバットを持ったガメラ梅井のスイングは音速を超える。
音速の切れ味が豊中を襲う!さすがの豊中もまともに喰らえばひとたまりもないぞ!

「ええいちょこまかと!」

豊中の動きが止まる。

「往生せぇやぁあ!」

豊中の脳天目掛けて120%コルクバットを振り下ろすガメラ梅井!

だが豊中は冷静に!

ゆるりと両手を掲げ真剣白刃取り!

「なにぃ!?」

そのままベキっとコルクバットをへし折るではありませんか。
そして部長の顔を蹴り飛ばす。
「ぐへぇ」
「へへん、もしこのバットが野球協会純正のバットなら俺でもへし折れなかっただろうよ」
「ぐぬぬ貴様ぁ!!!ええい!野郎ども!であえであえぇい!!」

窓から扉から、野球部員が出てくる。
「パーティーにやぁちぃと狭いな」
120%コルクバットに切られ脆くなったドアに部員をぶつけ外に出る豊中と部員たち。

<グラウンド>

グラウンドの中央。部員たちは次々に豊中に襲い掛かるが、部室で拾ったバット二刀流の豊中に軽々払いのけられる。
消耗する部員たちに部長の号令がかかる。
「オマエたち!バラバラにいくんじゃぁない!今こそ我らのチームワークを見せる時だ!!」
右手を上げハンドサイン、しかし先ほどとは違う。右手の先立てた親指が下を向く!
処刑のサインだ!
部員8人が豊中を取り囲み、北・南・西・東の4人が天高く飛び上がる。
そして助走をつけ部長が豊中の真上を目掛けて大ジャンプ!
「逃げ場はないぞ!これぞ由北高校野球部秘奥義!!」

「「「「「「「「「万華鏡剛速球」」」」」」」」」

9人が一斉にボールを投げつける!全投球が豊中に直撃!大!爆!発!!

スタッと着地する部長ガメラ梅井。

「「「「「「「「やったか!?」」」」」」」」

徐々に煙が晴れる、人影が見える、豊中は健在だ。

「馬鹿な・・・直撃だぞ・・・」
「ふっふっふ、見事だよ野球部諸君。見事なスローボールだぜ。球に止まった蠅に見惚れてつい避けるのを忘れちまった」

口から血を垂らしながら強がる豊中。

「おまえら狼狽えるなよ、奴は虫の息だ。もう一撃!」
 「「「「「「「「応!!!」」」」」」」」
ガメラ梅井は再び走る。

「「「「「「「「「万華鏡剛速球」」」」」」」」」

豊中は気が付いていた。この万華鏡剛速球の弱点に。
9つの球がほぼ同時に投げられているように見えるが実は同時ではない。そう、それこそが弱小野球部の限界なのだ。
全ての球は0.03秒ほどずれて投げられていたのだ。豊中にはその時間があれば十分。
持っていたバットを構え・・・全ての球をそれぞれ部員の顔面目掛けて打ち返す!!
「それそれそれそれそれそれそれそれそれぇぇい!!!」

「「「「「「「「なんとぉ!!!!!」」」」」」」」

「ばっばかな・・・」

ズシャリ、鈍い音を立て部長ガメラ梅井が降ってくる。

「おいおい野球部さんよぉ、ピッチャー返しぐらい捕れなきゃ甲子園なんか夢のまた夢だぜ」


<<<<由北高校野球部 部長 ガメラ梅井>>>>
 
<<<<  完  全   撃  破 >>>>

「さぁて部長さん、俺の取材受けてもらうぜ」
倒れた部長をたたき起こす豊中
「ひっひぃぃいいいいいやめてくれぇぇえええええ」

「問答無用!!!ファーーーーーッ!!!」

部長の悲鳴は夕暮れまで響き渡った。

<校舎>

翌朝
学校中が騒がしい。
生徒たちはまっすぐ教室には行かず何かを読んでいる。
学校中に号外がばらまかれていたのだ。

『甲子園が泣いている!反則野球部と恐怖のコルクバット!』

野球部部長ガメラ梅井がコルクバットを作る決定的瞬間と部長の証言と謝罪が載っている。
だが騒ぎの原因はそれだけではない。
校舎前の学園創立者の像に部長ガメラ梅井が磔にされていたのだ!

「ほう、野球部が不正・・・」
眼鏡を輝かせる生徒会長は無表情で磔にされた部長を見る。

野球部の不正は部長の単独犯ということもあり。部長以外の部員は全員無罪放免。
部長のみ3か月の停学、そして新聞部部長豊中智樹は暴力行為により1週間の停学処分となった。

次回
 
『鋼の戦士か彷徨う骸か!ゾンビラグビー部特製ヒロポンプロテイン』

豊中の真似は危険なので絶対にしないでくださいね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?